第一章 その2
僕と祐太は、小学校からの親友だ。祐太とは、小学三年生の時に、一緒に小学校のフットボール部に入った。
僕がフットボールを始めたきっかけは祐太だった。祐太はフットボールが大好きで遊ぶといったらたいがいがフットボールだ。僕もフットボールは嫌いではなかったし、最初は祐太に付き合う形でフットボールで遊んだ。
そして一緒にフットボールをしている内に僕もフットボールがどんどんと好きになり、一緒に小学校のフットボール部に入る事になった。それからどんどんとフットボールにのめり込んでいきいつしかプロになりたいという夢が出来た。最初は祐太と僕のフットボールの技術は月とすっぽんで僕は全く歯が立たなかった。祐太は優越感を得るために僕とフットボールをしていたのではないかと思うくらい実力に差があった。それが悔しくて僕は人一倍練習した。ヨーロッパのフットボール選手のフェイントやドリブルや体の入れ方などをまねて、できなければ毎日何時間も練習してそのテクニックをプロレベルまでとは言わないが何とか習得した。やはりそこまで出来たのはプロになるという夢があったからだ。
それと世間ではフットボールの事をサッカーと言うがその呼び方は好きではない。本場のヨーロッパではサッカーなんて死語だ。
元々サッカーという言葉は若者たちが使っていた造語で、正式名称association fottballのsocにcを加え人を意味するerをつけた物だ。
なぜそうなったかと言われれば、元々ラグビーとフットボールは一つのスポーツであり、手と足両方使っていた。
それから手だけ使うフットボールと(現ラグビー)とアソシエーションフットボールに分かれた。
しかし名前が似ていることから、若者たちがサッカーと造語をつけてサッカーという言葉が生まれた。
だからサッカーという言葉は昔の若者言葉であり、古くさくてださい言葉なのだ。だから僕は恥ずかしくてサッカーなどとはいえない。
遊ぶといったらだいたいがサッカーだったが、 他にもいろいろな遊びもした。
ウルトラマンごっこやらザリガニつりやら相撲だってした。だいたい運動能力は一緒くらいで、勝ったり負けたりだ。いわば親友でもありよきライバルでもありそんな関係だ、今でもそれは変わらない。
性格は僕は少し内気な面があるのに対して、祐太は誰とでも仲良くなれる明るい性格だ。
だから人見知りな僕もすぐに友達になれた。ただ共通する部分もあるそれは、あまり女の子と話すのが得意ではないと言う所だ。僕は分かるが祐太も女の子と話すのが苦手なのだ。女の子の前になるとあんなにおしゃべりな祐太も口数が一気に少なくなる祐太は3人兄弟で兄弟はいずれも男だ。そういう家庭環境もあるのかもしれない。ちなみに僕は一人っ子だ。
ともかく祐太は僕にとっては唯一の親友と呼べる存在だ。
高校もフットボールの強い高校へ行こうと約束し、フットボール推薦でこの優北学園高校に入学した。優北はフットボールが強いと言うことでとても有名な学校だ。優北は設備も整っているが、もっと素晴らしいのはグランドがとても広く全てが天然芝だ。こんな高校は珍しい。フットボールをする僕たちにとってはあこがれる学校である。だからこの高校を選んだのだ。この学校の唯一と言っていい誇れるところである。綺麗な青々とした天然の芝を眺めるだけで日頃のいやなことを忘れさせてくれる。緑にはそう言う力が宿っている、グランドを全て天然芝にすると決めた校長は素晴らしいと思う。
最初は祐太と同じ高校に行けると決まったときはとても嬉しかった。これからもまた一緒に馬鹿が出来るそんなことで頭がいっぱいだった。でも、祐太が朝木さんを好きになってからは、同じ高校ではなかったら良かったのに、何て思う事がある。いや”あったと言う方が正しい。”これは、友達と同じ人を好きになってしまうという良くあるパターンだ。正直、友情を取るか愛情を取るか……実際にこのような状況になってみると簡単にかっこよく友情を取るなんて言えない物なのだ。だから僕の朝木さんへの思いは誰にも言えるはずがない。
だけど僕も祐太もまだ朝木さんとは、一度も話したことがない。朝木さんはあまり男子とは話さないタイプなので僕らみたいな女の子と話すことが苦手なタイプは、特に話すきっかけを見つけることが難しい。だから祐太が朝木さんと手と手が触れ合ったことは、表には出さないが、とてもうらやましい。
祐太は親友なのに、友情を取るか愛情を取るか何て悩んでしまうくらいだ、朝木さんは、生粋の美女で男子からとても人気がある。いや人気があるって物じゃない有名アイドルが自分のクラスにやってきた、そのような感じだ。もう学校中が朝木さんのファンなのだ。白く美しい肌に肩まで伸びたつやめく黒髪、前髪はいつもピンでとめている。まつげは長く薄く赤い唇がより上品に見せる。今時珍しく化粧はしてこない。化粧をしていないことが逆に純粋で清楚なイメージに拍車をかけているように思う。
花畑にはたくさんの花が咲いているが、隅っこの方に一輪だけ控えめだがそれでも目立ってしまう美しくそして気品のある花が咲いている。その花にミツバチ達がよってたかってその蜜を奪おうとしている。学校中が、そのような状況だ。
だがそんなミツバチが一輪の花に群がる期間もほんの二、三ヶ月で終わってしまった。その美しい花にも今は蜂たちは、もうほとんど寄りつかない。
朝木さんには少しなぞめいたところがある。




