第3話:正の変化
それにしても、おかしい・・・
もしかするとこれは夢なのだろうか。いやそんなはずはない。
だって俺の頬はさっき正に平手打ちされて痛かったのだから
夢ではないとすればこれは現実だが、急に弟が妹に変わるなんて普通ではない
俺がじっと何かを考えていると、
正は心配に思ったのかなにやらぶつくさ独り言を言っている。
「でもなんでこんなことになっているの?
僕が寝ている間にいったい何が起こったの?」
俺はこの時考え事をしていたため、
正の少しした言葉の変化に気づくことができなかった。
そして今起きていることを整理するために、正を連れて下へと降りて行った。
「ねぇ、お兄ちゃん。私どうなっちゃうのかなぁ」
その言葉の変化にはいくら考え事をしているからと言っても気づいてしまった。
「おい、正!!お前、今、俺のことをお兄ちゃんって呼んで、
自分のことも私って言わなかったか?大丈夫か?」
「えっ。私そんなこと言ってないよ。
ってえっ!?今、私のこと、私って言っちゃってる!?
ど、どうして!?うわぁぁぁぁん」
すると雅はようやく自分自身の言葉の変化に気づいてしまったのか、
戸惑いながらまた床に崩れ落ちて、泣き出した。
それを見て、可愛いと思ってしまった俺はその雑念を振り払うように、
ノートを取り出して今起こっていることを書きだした。
「なぁ、正。お前学校からいつ帰ってきたんだ?」
「う~ん、私が帰ってきたのは3時くらいだよ。
そこまでは男だったと思うけど、その後部屋にいたらなぜか
急に眠くなってきて・・・。そこから先は覚えてない。
ってまた私って言ってるし、
う~ん、僕って言おうとしているつもりなのにおかしいなぁ・・・」
どんどん言葉が女の子っぽくなっている正の言葉の通り、ノートに書きだした。
正―
3時から眠っている間に外見が少女に変わってしまい、今は言葉まで変わりだした
書いていると、ふとある疑問が浮かんだ。
正が帰ってきたとき、あの犬はいたのか?
そのことを聞こうとして、正に視線を動かした。
しかしいつの間にかさっきまで涙を浮かべながら
自問を繰り返していた正が視線の先にいない。
ぐるっと視線を動かすと、ソファに正が座ってあの犬を抱きしめていた。
「ふふ、お兄ちゃん、このワンちゃん可愛いね!
よしよ~し。あ、お手とかできるかなぁ・・・。
お手!!」
するとあの犬はよほどしつけがきっちりされているのか、
正の出した手に自分の前足を乗せている。
その行動があまりにも可愛かったのか、
正はまた犬を抱きしめると満面の笑みを浮かべた。
なんて微笑ましい光景なんだ。
可愛い少女と犬が戯れているその光景に俺の顔もにやけてしまう。
しかし、正、完全に中身まで女の子に変わっていないか・・・。
ごく自然に女の子の言葉を扱う弟に、少し焦りを感じていた。
このままでは、兄妹になってしまうのではないか。と
そしてあの犬はいったい!?という疑問がまだ残っているため、
犬と戯れている正に質問を投げかけた。