第19話 誠一の痛み
「あ、あの・・・。」
誠一が申し訳なさそうにしながらも、正の元へと戻ると、
正の姿が見えない。
「あ、あれ、どこにいった。」
もしやと思い、ドアの方を確認するも外から叩く音が
こだまするだけで何の変化もない。
こんな短時間の間に姿を消すことなんてできるわけがない。
(ど、どこへ行ったんだ)
もう一度ベッド周りを見てみる。
やはりいない。
首を傾げる誠一。しかし・・・。
ゴソゴソゴソゴソ
何かが動いているような音が聞こえてくる。
それもベッドの方向から。
おかしいな・・・。
ベッドの周りを見回しても、どこにもいなかった。
「あ、あった」
しかし、声が聞こえてきた。
それも今度は明らかに彼女の声で・・・。
それもベッドのところから聞こえてくる。
(ま、まさかな・・・。)
誠一はベッドの下を覗き込んだ。
(うん?あれはなんだ・・・。)
ベッドの下は外界からの光が拒絶されていて、真っ暗だ。
ぼんやりとなにかがあるのが見えた。
誠一はやや興味本位で“それ”を指でつついた。
「ふにゃぁ」
暗闇から聞こえてきたのは、そんな情けない声。
いったい何なんだ。そう思いながら今度は目を凝らす。
ぼんやりとしていたものがうっすらと形を現していく。
(あ、あれはスジ・・・。あ・・・。)
それが何なのかを瞬時に理解した誠一。
急いで、ベッドの下から顔を出そうとした。
しかし・・・。
「お兄さんの変態!!!」
そんな言葉が聞こえるが早いか、吹き飛ばされるのが早かったか・・・。
勢いよく出された正の足が誠一の顔へと深々と突き刺さり、
彼の顔は強制的にベッドの外へと放り出されたのだ。
(本当にひどい目に遭った)
誠一はまだ痛む頬を抑えながら、後ろで下着を履き終えた正を一瞥した。




