弟の部屋に見知らぬ女の子が
俺は少し困惑したが、仮説を立ててみた
(たぶん、この子は正の彼女なんじゃないか。それで一緒に帰ってきて、冗談で正の制服でも着たんだろう。で、遊び疲れて彼女は寝たから正はどこかに出たのか。きっとそうに違いない。)
そう、半ば無理やりこじつけて、正の彼女だろう女の子に布団を掛けようとした
その時だった。
いきなりその子は、目を開けたのだ、そしてこっちを見て
「あ、あれ?兄貴、今日は早いんだね。僕は少し前に帰ってきたんだけどね。今まで寝てたみたいだね~」
俺の頭はパンク寸前だった。全然知らない女の子に兄貴と言われて、話しかけられれば、誰だってそうなるだろう。
そして、その女の子は俺が固まっているのを見て、心配したのか
「兄貴、どうかした?なんで固まってるん?」と言いながら
立ち上がろうとした。
そこでその女の子は、何か違和感を感じたのか首をかしげ
「あれ?僕の腕って、こんなにも細かったかなぁ」と言い、
下の方に目線を向けていた。そしていきなり立ち上がったかと思うと
「え、え、え!!な、なに、これ!?なんで、僕の体におっぱいがついてるの!?」と女の子にあるまじきことを言いながら、胸を持ち上げている。
俺は、少し落ち着いたからか、その女の子をじっくり見た。すると
「あ、あ、兄貴!!ね、ねえ、僕の体どうなってる??」
「どうなってるって、いや女の子らしい体してるんじゃないか。というか君もお兄さんがいるのかい?さっきから俺のことを兄貴、兄貴言ってるけど。君のようなかわいい妹がいたらさぞ楽しいだろうけどね。いやあ、それにしても、正のやつどこに行ったのかわからないんだけど、知ってる?彼女を置いてどこかに行くなんてどうかしてるよな」
俺は女の子の質問に対して、今の状況も含めて早口で回答していた。
すると、女の子はなぜか愕然としながら
「え、兄貴何言ってるん?僕、正だよ。顔、忘れた?」
俺は意味が分からなかった。
(というか、この女の子はもしかして俺をおちょくっているのか?正の指示で。だとしたら正は近くにいるのか。もしそうなら度が過ぎてるな)そう思って
「おい!!正~!いるんだろ?もうふざけるのは終わりにしないか?彼女さんにひどいと思わないのか!」と少し怒気を孕みながら叫んでいると
女の子に平手打ちされた。お怒りのようだ
「ちょっと兄貴!!さっきから何の話してんだよ!僕が正だって言ってんだろ?話を聞けよ。僕だってわけわかんないよ!」
あまりの言い様に俺もついに怒ってしまった。そして近くにあった鏡をその女の子に突き付けた
「君、自分の姿を見てから言えよ!完全に女の子だろ!!俺の弟は君みたいに可愛くもないし、何しろ男だ!女の子じゃない。!!」
すると、女の子は鏡を見て、座り込んでしまった
「え。これが僕?体だけじゃなくて、顔も女の子になってる!?ど、どういうこと!?え。なんで、こんな目に」
すごく落ち込んでいる女の子を見て
(もしかして、今までのは演技じゃないのか?俺を驚かすためにここまでの事をするのか。え、でも、もしこれが演技じゃないなら、この女の子が正ということなのか!?)
俺は少し冷静になって考え、意を決して聞いてみた。
「な、なあ、お前ってもしかして本当に正なのか?」
すると、女の子はやっと分かってくれたというような笑顔で
「う、うん。僕、正だよ。兄貴やっと分かってくれたんだね」
俺はその嘘偽りのなさそうな満面の笑みと言葉を信じることにした。