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トランス  作者: アキラ
15/21

第14話 ハルカの混乱

「誠一!!何もしてないわよね!!」


バーンという効果音がついてもおかしくないほどに

大きな音を立てて、ドアを開いたハルカ

こう口では言ってはいるが、

本心では誠一がそんなことをする男性ではないことは分かっている。

ただこれはいつもの癖であり、今更変える必要性も感じていなかった。


ただ、そんな彼への信頼は容易く裏切られてしまった。


ハルカがドアを開けた先にあった誠一の姿は、

いつもの執事服などではなく、パンツ一枚の姿だったのだから。

そして肝心の彼の着ていたはずの服は隣で寝ているマキが

まるで宝物を見つけた子供のように腕の中で抱え込んでいた。


ハルカはあまりにも衝撃的な光景に一旦、開いたドアを閉じた。

「あ、あの誠一が・・・。」


そのまま、考えた。

さっきの光景は何だったのか。

あれではまるで、恋愛漫画のワンシーンじゃない?

好き同士の2人が感情の思うがまま、その色欲に身を任せるあの光景。


いや、でもあの誠一に限ってそんなことをするはずがない。

ましてや、おそらく初対面の女性とそんなことを・・・。


ハルカはあまりにも急展開過ぎて、次の一歩を踏み出せずにいた。


「はぁはぁ。はるかお嬢様、少し飛ばし過ぎじゃありませんか」


ハルカが考え込んでいると、彼女を追いかけていた兼正が少し遅れて到着した

しかし、ハルカの深刻そうな表情を見た途端、彼もまた思考が硬直した。


あ、あのはるかお嬢様がこんなにも考え込んでいるだなんて、何があったんじゃ。

まさか見てはいけないものを見てしまったのではないだろうな。

男女の淫靡な戯れか。はたまた誠一君の身に何か起きたのか。


彼もまたハルカ同様思考を張り巡らせた。

ただ、彼がハルカと違ったところ、それは・・・。


「誠一君、入りますよ」


ドアを何の躊躇いもなく、開けようとしたことだ。


ドアノブを握る手になぜか必要以上に力が入る兼正。

ガチャガチャ・・・。


「あれ?どうして開かないんじゃ。」

兼正がドアノブをいくら回しても、ドアが開くことはなかった。

一刻も早く、何が起きたのかを知ろうとしていた兼正にとっては誤算であった。



「はぁ。間に合ってよかった・・・。」

誠一はドアの前に座り込んだ。

間一髪だった。まさか兼正さんまでもがここに来るとは完全なる想定外だった。

あの声がなければ、この光景を見られていたことに違いない。


ハルカ様だけであれば、まだしも執事の教育係も務めている

兼正さんにまでこんな痴態を見られるわけにはいけない。

執事として雇われている以上、主人を辱めるような行為をしてはいけない。

そんな行為をしようものならば、クビも覚悟しなければならないわけだ。


だからこそ、これ以上の二次災害を避けるためにも、今は

この部屋にもう誰も入ってこられないように、ドアを施錠するしかなかった。


「入ります」の声を聴いた瞬間、誠一はドアへ向かって駆け走り、

なんとかドアの鍵を施錠することが出来た


これほどまでに迅速な動きをしたのはいつぶりだろう。

そう自画自賛してしまうほどに速かった。


ただ、まだ大きな問題が残っていた誠一はその原因に視線を戻す。

そこにはまだ幸せそうに寝ている正の姿があった。


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