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トランス  作者: アキラ
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第13話 誠一とハルカの心配

その頃


誠一はひどく悩んでいた。

頭を抱えながらうんうんと唸っている。

その原因を作ったのは、自分の隣ですやすやと眠っている少女が理由であった。


「あぁ。俺はなんてことをしてしまったんだ。」

流れでしかも強引であったとはいえ、男である自分が本気で抵抗すれば、

こんな愚かなことをしてしまうことはなかったというのに。


自分の妹と年の近い女性を抱いてしまったという事実に誠一は罪悪感を抱く。

どちらかと言えば、彼の方が被害者であることは間違いない。

けれども、彼は止めようと思えば止めることはできたのに、それをしなかった。

この場合、被害者とは必ずしも言い切ることができないのではないか。


「はぁ。ハルカ様にどう説明すればいいんだ。

知り合ったばかりの女性と性交渉をしてしまっただなんて・・・。」

誠一は悩む。

彼は真面目な男だった。

この屋敷で住み込みで働くようになってからは、仕事にだけ専念し、

遊びの類には何一つとして手を出したことがなかった。

それは女遊びもしなかったということを意味し、

ハルカ以外の女性と関わりを持つことさえ、極力避けていた。

だからこそ、こんな急展開が自分に訪れるとは夢にも思っていなかったし、

訪れた時の対処法などは考えたこともなかった。


頭を悩ませる誠一。

しかし、それとは対照的に呑気な顔ですやすやと寝ている正。


「あぁ、本当にどうしたものか。」

ぼそりと誠一は呟いて、深いため息を落とした。



「ハルカお嬢様」

「あら。兼正さん。どうかしたの??」


琢磨を部屋に通した後すぐに、男性はハルカを見つけ、声をかけた。

ハルカとこの男性―兼正は彼女が生まれた頃からこの屋敷に仕えていて、

ハルカの遊びによく付き合っていたことから、

お爺ちゃんと孫のような関係性だった。

今でこそ、お互いの立場を気にしてか、

お嬢様・兼正さんという呼び方になってはいるが、

昔はもっとフランクにハルカちゃん・おじいちゃんと呼び合っていた。

そして、いつの日かまたあの頃の呼び名に戻りたいともお互いに思っていた。


「お嬢様、先ほど誠一君が連れてきていた

お嬢さんはどこへお連れになったのですか?」

兼正は主人にするような丁寧な口調で彼女へ問いかける。


その問いかけを聞いた彼女はほんの少しだけ

寂しげな表情を浮かべたが、気を取り直した。

「マキさんの事ね。マキさんなら誠一と一緒に九蘭の間へ通しましたよ。

どうかなさったのですか?」


「九蘭の間ですか。ありがとうございます。

先ほどそのお嬢さんのお兄様が迎えにいらっしゃいましたので。」


「そ、そうでしたのね。

あ、でも誠一とマキさん二人して気絶しちゃって、

寝かせているのだけれど、大丈夫かしら・・・。」

ハルカはあの時はそんなことを考えもしなかったことだが、

今になってあることに気付いてしまい、少々焦っていた。


誠一も執事である前に立派な男であるということ。

もちろん自分に対してそんなやましいことを誠一がしたことはなかった。

けれども、健全な男であるならば、

そういうことをしたいと思わないわけがない。



もしも誠一がマキさんに手を出していれば・・・。



そんな普段は想像もしないような仮説がついつい頭を過る。


「こうしちゃいられないわ。兼正さん、付いてきてちょうだい。」

ハルカはそう言うと早足で兼正と共に九蘭の間へと向かい始めた。


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