第11話 正の初めて③
「うん?なんか柔らかいものが・・・。」
誠一は突然、何か柔らかいものが自分の唇に触れた。
そんな漠然とした考えが彼の眠っていた思考を急速にたたき起こした。
何が起こったのか。
その答えにたどり着いた瞬間、誠一は飛び上がるように起き上がった。
その表情には恥ずかしさが自然と滲む。
「え、は、え、な、何が起こったんだ?」
まだ自分に起きたことに対する理解が追いついていないのか、
誠一の言葉はしどろもどろになってしまう。
完全に困惑中である。
「ふふふ、お兄さん。どうしたの~??
そんな早く起き上がっちゃったら危ないよぉ?
ねぇ、お兄さ~ん、布団に戻ってきてよぉ。それでイイことしましょ♪」
対して数時間前まで男の子だったはずの
正は盛りの付いた猫のような嬌声を上げながら、
誠一を自分の眠っているベッドへ戻そうといやらしい言葉を投げつける。
(この子、つい数時間前と性格が全く違うくないか・・・。)
誠一は先ほどの口づけよりも目の前にいる少女の
あまりにも突然の変貌に困惑してしまう。
先ほどまでは自分の妹と同じくらいに純真な雰囲気を醸し出していた彼女は今では、
完全に娼婦のようないやらしい雰囲気を放ちまくっているのだ。
誰だって困惑してしまうことだろう。
ただ、この困惑して固まっている瞬間を見逃すほど、今の正は甘くはなかった。
誠一の事をすさまじい勢いで押し倒すと、
そのまま彼のズボンとパンツをずり降ろす。
「え、ちょ、ちょっと、待って」
「待たないよぉ///」
誠一の必死の抵抗はかえって正を燃え上がらせた。
未だ感じたことのない性欲に突き動かされるかのごとく、
正は自身の肢体を獣へと変化させると、誠一を貪っていった。
俺はどうすればいいんだろうか・・・。
俺は今、窮地に立たされていた。
目の前にはこの屋敷の警備員だと思われる強面の黒服が4人。
俺と犬を不審者として扱っているようで、妙に圧を感じる。
というか、先ほどそのうちの一人が電話を
どこかへ掛けて以降、誰も言葉を発さない。
その異様さも却って、俺の心に不安を煽ってくる。
「君たちが侵入者だね。」
そんな不安を加重するかのように黒服たちの間から初老の男性が歩み出た。
その佇まいと、黒服たちの態度を見る限り、
この人がこの黒服たちの上司であることは確かであろう。
男性は俺たちをじろりと見ると、側に控えている黒服たちに声をかける。
「報告ご苦労。彼らのことは私に任せて、君たちは持ち場に戻りなさい」
その言葉を聞いた黒服たちは瞬時にその場から掃ける。
残ったのは、俺と犬、初老の男性だけとなった。
なぜか先ほど黒服に無言で見られていた時よりも不安は大きくなる。
それほどに男性の放つ雰囲気は厳しいものだった。
身構える俺と犬。
(正を見つけて連れて帰るためなら、このじいさんから逃げてやる。)
そんな意気込みを固めながら、次に来るであろう男性のアクションを待つ。
しかし・・・。
「ほほほ、君たち怖がらせてしまって悪かったのぉ。
彼らも悪い人間ではないのじゃが、何分顔が怖くてなぁ、すまなかった。
客人にはもう少し丁寧におもてなしをするよう言うとるんじゃが、
まあお詫びも兼ねてついてきなさい。」
返ってきたのは男性の優し気な笑顔と謝罪の言葉で、俺は言葉を失った。
先ほど感じた威圧的な雰囲気はもう露ほども感じない。
俺と犬は男性に導かれるがまま、後についていくことにした。




