第10話 正の初めて②
正と誠一の二人がハルカの策略にまんまと陥っている頃
玄関の前で俺は困惑していた。
屋敷の外からでも一目瞭然ではあったが、目の前にある屋敷の大きさは異常だった。
俺がてっきり高級住宅街だと思っていたそれは、
いくつかの家の集合体なんかではなく、一つの家だったのだから。
おそらく、高校くらいの敷地はありそうな気がする。
というか、これだけの敷地を所有している人物の場所に正は本当にいるのだろうか。
今更ながら、目の前を優雅に歩く犬を信用して
ついて行くべきではなかったのではと思う。
そもそも誰の犬なのかも分からないのに・・・
ただまあ、もう既に他人の家に不法侵入をしていることもあって、
正の手がかりを少しでも掴むことができれば。その想いから犬を追う。
「キャァァァァァァァ///」
犬を追いかけて、数歩歩いていた時にその声は聞こえてきた。
甲高い女の子の叫び声でどこか恥じらいのようなものを帯びた声色だった。
数時間ほど前の俺であれば、(どこかのお嬢さんの声だろうな)
と見ず知らずの声に対する一般人の反応を浮かべていたことだろう。
だがしかし、俺はこの声を聞いた途端、確証なんて何もないにもかかわらず、
この声の正体が誰なのかを理解した。
(ま、正!?)
俺はその声の聞こえてきた方向へ向かって、走ることにした。
さっきまで前を優雅に歩いていた犬でさえ、
同じ感情を抱いたのか全力で走りだす。
「ふわぁ~」
正はベッドの上で寝返りを打つ。
あまりにも眠そうな表情を浮かべている。
どこかぼんやりとしながら、天井を眺め、そのまま視線を斜め下へと持っていく
「へ?」
正は困惑してしまう。
ここが自分の部屋でないという事実に気が付いたことはもちろんのことながら、
自分の隣にさっきであったばかりの誠一が横たわっていたのだから。
(お、お兄さん!?どうしてここに?というか私ここで何をして・・・)
正は今までのことを思い出そうとする。
けれども起き抜けの頭ではどうも思考が上手くまとまらないのか、
記憶の引き出しを開くのに手間取ってしまう。
(え~と、確かハルカさんに着替えを強要されて、
ドレスを着ていたらお兄さんが部屋に入ってきて・・・。
お兄さんのあまりのかっこよさに悶えながら見つめていて・・・。
そしたらハルカさんガ・・・。あ!)
正は全てを思い出したと同時に顔を赤らめながら、
布団の中の自分の手でスカートを抑えた。
そして頭の中で、誠一が自分のパンツに顔をうずめてしまった時に感じた
彼の息遣いを思い出し、今までに感じたことのない高揚感と
背徳的な興奮を覚えてしまう。
(な、なんだか体が熱い・・・。)
今までに感じたことのないこの妙な火照りに戸惑いを浮かべながらも、
なぜかするべきことはわかっていると言わんばかりに無意識に
自分の手がスカートの上を弄り始める。
変な感覚だったが、もっと触りたいとついつい思ってしまう。
「う、う~ん。」
正の手の動きがその声によってピタッと止まった。
ちらっと視線をそちらへ寄こすと、
まだ眠そうにしながらもこちらを見る誠一の顔があった。
(な、なんだかお兄さん。かわいい)
自分よりも年上、それも男性に対して可愛いという感情は失礼かもしれない。
けれども、起き抜けの誠一はいつものかっこいい時のギャップと相まって、
少年のような印象を内包していた。
そして先ほどまでややいけないことをしそうになっていた正は自制心を失っていた。
これらの要因が重なってしまった結果、正は信じられない行動を取ってしまう。
「ふっ・・・。んん///」
正の瞳が誠一の瞳を映しあったその瞬間、正の唇が誠一の唇と触れ合った。




