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トモダチに…  作者: 紫月
4/8

消えてしまう…

4話目の投稿となりました!

ストーリー自体はもう決まっているのですが、投稿する時間がなく、苦戦しております…。

今回も、皆様に楽しんでいただけたら幸いです。



受け取ったグラスを置くでもなく、飲むでもなく、じっと見つめて動かない貴方。何を思ってるのかは分からないけど、戸惑いと迷いだけが手に取るようにわかる沈黙。考えがまとまれば口にするだろうと、私はベッドの側面に背中を預け、麦茶を飲みながら言葉を待った。

「………」

思ったよりも長い沈黙にテレビでもつけようかと思った時、不意に私を見て口を開いた。

「ホントはさ、もっと前から知ってたんだ、閉園のこと」

少し目を見開く私に、困り顔になった貴方は続ける。

「別れる前から、知ってた」

「別れる前からって…1ヶ月以上も前から…?」

流石に私も、少し非難めいた口調で詰め寄ってしまう。その時に教えてくれていたなら、もう一度行く時間は十分にあったのに、と…。

「分かってたんだよ? お前、行きたがるだろうな、ってのは。わかっては、いたんだ。ただ…っ」

貴方は泣きそうな顔で言葉を詰まらせ、私から目をそらした。

「ただ…?」

泣かないで、と触れたくなるのを我慢して、出来るだけ柔らかな声音で貴方に問う。

「ただ俺が……初めてのデートで行った、俺たちの“始まった”場所を、最後の、“終わった”場所にしたくなくて…笑える思い出がひとつ、無くなる気がして…怖かったんだ」

うつむく貴方の肩が、小さく、微かに震えていた。お互いに納得して決めたこと。そう、頭は簡単に理解した。だけど心はそうは行かない。感情は簡単に騙せない。『好き』は、簡単には消えてくれない。

「バカね…無くなる訳ないじゃない。私たちが覚えていれば、ずっとココにあるでしょう?」

右手を貴方の、左手を自分の胸元に添える。顔を上げた貴方は、あどけない表情で目を見開いて、ゆっくりと、泣き笑いの様な表情を浮かべた。

「は…ははは……そっか…そうだよな、無くなる訳、無いんだよな…そっか…はは…は……っ」

乾いた笑いが嗚咽に変わり、私の手を握り、泣き続けた。



読んでいただき、ありがとうございました!

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