消えてしまう…
4話目の投稿となりました!
ストーリー自体はもう決まっているのですが、投稿する時間がなく、苦戦しております…。
今回も、皆様に楽しんでいただけたら幸いです。
受け取ったグラスを置くでもなく、飲むでもなく、じっと見つめて動かない貴方。何を思ってるのかは分からないけど、戸惑いと迷いだけが手に取るようにわかる沈黙。考えがまとまれば口にするだろうと、私はベッドの側面に背中を預け、麦茶を飲みながら言葉を待った。
「………」
思ったよりも長い沈黙にテレビでもつけようかと思った時、不意に私を見て口を開いた。
「ホントはさ、もっと前から知ってたんだ、閉園のこと」
少し目を見開く私に、困り顔になった貴方は続ける。
「別れる前から、知ってた」
「別れる前からって…1ヶ月以上も前から…?」
流石に私も、少し非難めいた口調で詰め寄ってしまう。その時に教えてくれていたなら、もう一度行く時間は十分にあったのに、と…。
「分かってたんだよ? お前、行きたがるだろうな、ってのは。わかっては、いたんだ。ただ…っ」
貴方は泣きそうな顔で言葉を詰まらせ、私から目をそらした。
「ただ…?」
泣かないで、と触れたくなるのを我慢して、出来るだけ柔らかな声音で貴方に問う。
「ただ俺が……初めてのデートで行った、俺たちの“始まった”場所を、最後の、“終わった”場所にしたくなくて…笑える思い出がひとつ、無くなる気がして…怖かったんだ」
うつむく貴方の肩が、小さく、微かに震えていた。お互いに納得して決めたこと。そう、頭は簡単に理解した。だけど心はそうは行かない。感情は簡単に騙せない。『好き』は、簡単には消えてくれない。
「バカね…無くなる訳ないじゃない。私たちが覚えていれば、ずっとココにあるでしょう?」
右手を貴方の、左手を自分の胸元に添える。顔を上げた貴方は、あどけない表情で目を見開いて、ゆっくりと、泣き笑いの様な表情を浮かべた。
「は…ははは……そっか…そうだよな、無くなる訳、無いんだよな…そっか…はは…は……っ」
乾いた笑いが嗚咽に変わり、私の手を握り、泣き続けた。
読んでいただき、ありがとうございました!