思い出の場所
なんとか3話目に到達です…!
まだまだ続きますので、見ていただけたら幸いです!
「じゃあ、遠慮なく」
靴を脱ぎ、上がってくる貴方の顔は、まだ少し苦さが残ってて。“そんな顔しないで”って、抱きしめてあげたくなる。安心した、貴方の笑顔がはやくみたい。
「何か飲む?」
冷蔵庫を開けながら言う。
「んー、今日はサイダー」
「りょーかい」
言われた通り、サイダーのペットボトルと自分用の麦茶のボトルを出して、扉を閉める。
「貸して」
既にグラスを2つ持った貴方が、当然の様に言う。本当に変わらない。
「うん」
小さく応えてボトルを渡す。グラスを右手に、ボトルを左腕に抱えて、私の後ろを着いてくる。
部屋に入ると貴方は、苦いような甘いような顔をした。
「部屋、変わってないね」
「うん、まぁ…ね」
苦笑混じりに応えると、貴方はこちらに振り向いた。想い出に溢れた部屋の中、酷く懐かしむような声音で貴方は言う。
「もう、随分片付けられてると思ってた」
グラスとボトルをテーブルに置き、ゆっくりと部屋を歩く貴方。沢山の写真のひとつを手に取り、じっと眺めて声をあげた。
「ここ、もうすぐ無くなるらしいよ」
それは初デートで行った遊園地の写真だった。
「嘘っ」
思わず側に駆け寄ってしまった私に柔らかく笑いながら貴方は答える。
「ホント。明日で閉園して、来月の頭には工事始まるみたいだよ」
1週間後に、壊されるんだ。
「そっかぁ…。にしても、いつ知ったの、その情報?」
「ん? 2週間くらい前かな」
その言葉に少し固まった。固まった私に気付いてないのか、貴方は言葉を続ける。
「兄さんから聞いたんだ」
ふーん、と明らかに拗ねたような声を出しながら、テーブルの側に戻る。
「あれ? 何か怒ってる?」
写真を戻し、慌てたように追ってくる。
「怒ってはいないけど……もうちょっとはやく教えてほしかった」
言いながらグラスにそれぞれの飲み物を注ぎ手渡した。
読んでいただき、ありがとうございました!