懐かしい…
だいぶん遅くなってしまいましたが、ようやく2話目です!
亀並みのペースですが、楽しんでいただけたらと思います。
あれから一時間がたった。電話越しに聴いた懐かしい声は少しぎこちなかったけど、前と変わらない、優しい声音をしてて、私が『会いたい』と言うと、『わかった。迎えに行くから、ちょっと待ってて』と言った。相変わらず文句ひとつ言わず、私のワガママに付き合ってくれる、優しい人。思い出して笑みを零したちょうどその時、ピンポーンと軽やかな呼び出し音が響いた。用意しておいた鞄を手に玄関へ。ドアを開ければ……
「ごめん、待たせた?」
輝くような、貴方の笑顔。懐かしすぎて、眩みそう。
「? どうかした?」
不思議そうに問われて我に返る。見惚れてる場合じゃなかった。
「ううん、何でもない。…あれ? 身長伸びた?」
そんな言葉で誤魔化しながら、家に鍵をかけた。いつもならしなくていいんだけど。ふと思い至ったのか、貴方が問う。
「ん? 今日おばさん居ないの?」
「うん。中学の時の同窓会なんだって」
「ふーん」
私の言葉に、考えるような仕草をして、じっと私を見つめる。じっと相手を見るのは何か言いたいことがある時で、何も言わないのは言っていいのか迷ってる時。私の家の前でそうする時は、
「入る?」
“部屋に入れて”の意思表示。
「…いいの?」
躊躇いがちな言葉に思わず笑ってしまう。
「入りたいんでしょ?」
そう言って、鍵を開け招き入れる。まだ少し躊躇っていたけど、笑顔を向けると安心したように入ってきた。
「お邪魔します。…ほんとに入って良かったの?」
心配そうに問う貴方に、何でもないような笑顔で答える。
「昔から良く来てたじゃない。“入っていいのか”なんて今更よ」
「いや、そうじゃなくてさっ! 俺…もうお前の彼氏じゃないし……」
わかってることだけど、改めて聞くと、やっぱり辛い。沈む気持ちを見せないように、明るく響くように言う。
「友達の頃から来てたでしょう?」
少し苦い顔をして笑う貴方に胸が痛んだ。
読んでいただき、ありがとうございました!