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僕が行った月の話  作者: 坂本啓
往復
9/24

ウサギとの再会

「いい質問だねー」


 ウサギが目を細めて、耳をフルフルと震わす。かわいい。こんなに巨大じゃなくて普通の大きさだったら、きっと、もっとかわいいだろう。


「ちなみに、どうしてそれを聞きたいんだい?」


「だって、もし今日で最後だったら、ぼーっとしてたら何もできないで終わっちゃうじゃん」

 何回来られるのかによって、やりたいことや聞きたいことに優先順位をつけたい。僕はそう思ったんだ。


「なるほど。まず、今日で最後ではないから、安心してね」


 今日、いちばん聞きたかった答えが聞けた。また来られる。僕の様子を少し眺めて、ウサギは続ける。


「だけど、何回、とは答えられない。きみ次第で少し回数が変わるから」


「僕次第?」


「正確に言うと、期間限定なんだ。きみが初めてここに来た時に見た月と、同じ月がまた巡るまで」


 つまり、右上が暗い半月になるまでということらしい。

「じゃあ、だいたい一ヶ月だね」


「そうなるね」


 毎日来れば、少なくても二十回以上は来られる計算だ。

「分かった。ありがとう」

 時間にゆとりがあるのが分かれば、やってみたいことはいろいろある。じゃあ、今日の残り時間は何をしよう。

(やっぱり、アレかな!)

 


 ウサギは頭を軽く左にかたむけ、腹の前に置いていた両前足を「こう?」って感じでパッと開いた。僕はすかさず、ウサギのおなか目がけてダイブする。期待以上にフカフカで弾力があって、僕が知ってるどんなクッションやソファよりも気持ちがいい。もうずっと包まれていたいくらいだ。

 寝返りをうったりモフモフしたりしていると、ウサギが僕の頭をワシャワシャとなでた。僕の体が落ちないように抱きかかえながら動く。


「トモ、見てごらん」


 促されて振り返ると、暗い空に地球が浮かんでいた。月見ならぬ、地球見だ。

「このままで見ててもいい?」


「もちろんさ」


 ウサギのおなかソファに抱かれて、僕は欠けた地球を眺めた。青、緑、茶色など色の違いがあって、白い雲が流れていく。一面同じ色の月から見ると、地球は変わった星なんだな。僕は、ぼんやりそう思った。

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