ウサギとの再会
「いい質問だねー」
ウサギが目を細めて、耳をフルフルと震わす。かわいい。こんなに巨大じゃなくて普通の大きさだったら、きっと、もっとかわいいだろう。
「ちなみに、どうしてそれを聞きたいんだい?」
「だって、もし今日で最後だったら、ぼーっとしてたら何もできないで終わっちゃうじゃん」
何回来られるのかによって、やりたいことや聞きたいことに優先順位をつけたい。僕はそう思ったんだ。
「なるほど。まず、今日で最後ではないから、安心してね」
今日、いちばん聞きたかった答えが聞けた。また来られる。僕の様子を少し眺めて、ウサギは続ける。
「だけど、何回、とは答えられない。きみ次第で少し回数が変わるから」
「僕次第?」
「正確に言うと、期間限定なんだ。きみが初めてここに来た時に見た月と、同じ月がまた巡るまで」
つまり、右上が暗い半月になるまでということらしい。
「じゃあ、だいたい一ヶ月だね」
「そうなるね」
毎日来れば、少なくても二十回以上は来られる計算だ。
「分かった。ありがとう」
時間にゆとりがあるのが分かれば、やってみたいことはいろいろある。じゃあ、今日の残り時間は何をしよう。
(やっぱり、アレかな!)
ウサギは頭を軽く左にかたむけ、腹の前に置いていた両前足を「こう?」って感じでパッと開いた。僕はすかさず、ウサギのおなか目がけてダイブする。期待以上にフカフカで弾力があって、僕が知ってるどんなクッションやソファよりも気持ちがいい。もうずっと包まれていたいくらいだ。
寝返りをうったりモフモフしたりしていると、ウサギが僕の頭をワシャワシャとなでた。僕の体が落ちないように抱きかかえながら動く。
「トモ、見てごらん」
促されて振り返ると、暗い空に地球が浮かんでいた。月見ならぬ、地球見だ。
「このままで見ててもいい?」
「もちろんさ」
ウサギのおなかソファに抱かれて、僕は欠けた地球を眺めた。青、緑、茶色など色の違いがあって、白い雲が流れていく。一面同じ色の月から見ると、地球は変わった星なんだな。僕は、ぼんやりそう思った。