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僕が行った月の話  作者: 坂本啓
往復
8/24

再び、月へ

 カメラのフラッシュみたいに短く強い光を、まぶた越しに感じた。目を開ける前に深呼吸しようとしたけど、やり方がわからない。心臓がキュッとなる。

 僕は、ほぼ確実な予感に押されるように、まぶたを開いた。


「トモ、よく来たね!」


 昨日と同じ、五十センチメートルほどの距離にウサギの顔があった。白くて大きい、毛がフカフカのウサギが、僕の目の前に立っている。


 ……夢じゃなかった。

 僕は、月に来たんだ。




「来ないかもしれないと思ってたよ」


 ウサギが、鼻をヒクヒク動かしながら言った。

「なんで?」


「だって、夢だと思ってたろ?」


 そりゃそうだろう。こんなこと、疑わないほうがおかしい。月を見ていたら月に立っていて、しゃべるウサギと会ったなんて。


「二日目に来ない人が多いんだよねー。夢だとしか思わないから、試してもみないんだ」


 しょんぼりした様子で、ウサギは耳をなでる。毛づくろいかと思ってたけど、どうやら癖のようだ。

「じゃあ、僕以外にも来た人はいるんだね?」

 自分は特別なのかと思っていたので、実は少しだけがっかりした。でも、僕は二日目にも来た。来てよかった。

 ウサギは僕の問いかけには答えず、ただまっすぐこちらを見つめている。


 ウサギは、ただ立っている。どうやら、僕が何かするのを待っているらしい。

 僕はとりあえず、少しだけジャンプしてみた。六倍跳び上がれるかと思ってたけど、せいぜい三倍くらいに感じた。強く踏み切ろうとしても、力が入らないというか伝わらない。落ちるのは跳び上がるときよりゆっくりだ。プールの中よりは、少しましかな。

 しばらくビヨーンビヨーン跳んで、息が切れないので我に返った。ピタリと着地して止まるのも案外難しく、よろけながら踏ん張ってようやく止まった。


「どんな感じだった?」


「想像と違った」

 もっと超人みたく動けると思ってた。


「まあ、何でもやってみないと分かんないことあるよね」


 ウサギは目を細めて楽しそうに笑った、と思う。なんだか表情が分かるようになってきた。

「ねえ、月に来る人っていっぱいいるの?」

 自分は、どれくらい特別なんだろう。僕は、それが知りたかった。


「今日の質問は、それでいいかい?」


「え?」


「答えられるのは、一個だけだよ」




――「質問があれば、何個聞いてもいい。ただし、答えるのは一日一個に限る」――




 そうだった、危ないところだった。

 今日は、どうしても聞かなきゃいけないことがあるんだ。

「変更していい?」


「もちろん。トモが『これに答えて』って言うまで、聞くだけなら何個でも」


「じゃあ、この質問に答えて」

 僕は深呼吸、できないかわりに胸の真ん中に手のひらを当てた。心臓は、間違いなく動いていた。

「僕は、あと何回ここに来られる?」



 





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