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僕が行った月の話  作者: 坂本啓
往復
10/24

探究の始まり

 目が覚めると、ベッドの中だった。自主的に帰ってきた覚えはないので、きっとウサギのおなかに抱かれたまま眠ったのだろう。

 外はもう明るい。今日は図書室で月の図鑑を読もう。いろいろ調べてみたいことがある。僕は机の引き出しから新しいノートを一冊取り出し、ランドセルに入れた。




 放課後の図書室には、いつも十人から十五人はいる。そのうち八人は、ほぼ毎日来ている常連メンバーだ。

 推理小説や文学全集を端から端まで制覇していく人もいるし、棚の前を歩きながらその日の気分で選んでいく人もいる。ここで宿題を済ませて、さらに勉強している六年生もいる。

 本のページをめくる音、鉛筆の音、たまに人が歩く音、ひそひそ声。僕はこの空気が好きだ。


 今日は当番ではないので貸し出しカウンターには座らず、棚に近い席を確保した。さっそく「月の図鑑」を手に取る。表紙をめくったところに載っている月面の写真は、僕が二回行った月の風景そのままだ。


「1,737.4㎞×2×3.14=」

 ノートの一ページ目。僕は月の半径を二倍して円周率をかけ、一周の距離を出そうとしていた。算数は得意だ。ていねいに筆算する。

「10,910.872㎞……か」

 地球は一周約四万キロメートルと習ったから、 四分の一周よりちょっと長いくらいだ。

 僕は立ち上がり、窓際にある地球儀を回してみた。西側でヨーロッパの端、東側でアメリカの西海岸あたりだろうと見当をつける。

「うーん……案外遠いな……」

 飛行機ならすぐ行ける距離かもしれないけど、残念ながら僕は徒歩だ。一万キロメートルにしたって、二十日間で歩くなら一日五百キロメートル。月面一周探検は無理そうだ。


 続いて、月の満ち欠けを調べる。一昨日の半月は「下弦かげんの月」というらしい。太陽と地球と月の位置関係と見え方の図は理科の資料集にも載ってたけど、それ以上詳しくは知らなかった。月が昇ってくる時間も、気にしたことはなかった。知らなかったことを知るのは楽しいから、僕は調べ学習が好きなんだ。


 

「あー!カレンダーに書いてあったのって、これかあ!」

 新月のところに「さく」の字を見つけ、僕はようやく疑問がとけた。お父さんに聞いたときに「旧暦一日ついたち、って意味だよ」と言われて分かった気になってたけど、よく考えたら旧暦がよく分かってなくて、なんとなくそのままにしてしまっていた。

 僕はまた立ち上がり、今度は入口近くにあるカレンダーを見に行った。今日は九月十八日、木曜日。旧暦八月二十五日。次の新月は二十四日、旧暦九月一日。やっと納得できた。


「閉館十分前です。本を借りる人は、カウンターに来てください」

 当番の声かけに、何人かがカウンターに向かう。うちの学校では、図鑑類は借り出しできないことになっている。僕は急いで席に戻り、旧暦について分かったことをノートに書き込んだ。

 

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