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僕が行った月の話  作者: 坂本啓
謎の光
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プロローグ

 僕は、月を見ていた。

 右上が暗い半月が、だんだん東の空高くのぼっていく。


 眠れなかった。

 今日も「変わってる」って言われた。

 先生は、すごくめんどくさそうな声で言った。

「そんなこと言うの、あなたが初めてだわ」

 あきれた顔、ってのはああいうのを言うんだろう。

「そんな意見もってるの、あなただけだから」

 僕はその時、納得いかない顔をしたんだと思う。先生の目が、僕をにらむのが分かった。

「自分の勝手な意見を押し通そうとするのは、わがままです! みんな、そんなこと考えてないから! あなたがおかしなことばっかり言うから、話し合いが終わらないでしょう!? みんな迷惑なの!!」


 いつものことなんだ。

 僕は問題児童ってやつらしい。

「クラスの和を乱す」って通知表に書いてあった。

 協調性の評価は最低だった。

 親が何回か呼び出されたみたいだけど、僕がこんな風に育った原因の人たちだから、毎回先生とケンカして帰ってくる。


「きちんと自分の意見を話しなさい」

「人の意見も聞きなさい」

「話し合って決まったことは、自分の意見と違っても取り組みなさい」


 うちの教育って、間違ってるのかな?

「聞いてもらえなくても、意見を発表したのは偉いよ」

 いつもそう言ってほめてくれる両親も、学校では迷惑なんだろうか。


「みんなが言ってるから、で流してばっかりいると、自分のことを自分で決められない大人になっちゃうよ」

 おこづかいの金額や部屋の片づけ方、外食で入る店や家の引っ越しについてまで「あなたにかかわることだから」と必ず僕の意見を聞いてくれる両親が、僕は大好きだ。


 意見が通らないことだって多い。子供だから、お金がかかることは特に自由にはならないし、わがままを押し通したら後で自分が困ることだって分かってるんだ。


 でも学校では、意見を言うだけで「わがまま」なんだってさ。

「みんなで意見を言いましょう」って言うのに、僕の意見はいらないらしいんだ。

 言うだけで迷惑らしいんだ。



「でも、黙ってるのも辛いしな……学校、行きたくないな……」


「行きたくなければ、行かなくてもいいよ学校くらい」

 うちの両親は、きっとそう言う。

 でも、問題児童が不登校児童になるだけで、僕の意見が正しいのか間違ってるのか、そこは何も解決しないじゃないか。

 うち以外に、僕の意見を聞いてくれるところは、本当にないんだろうか。


 僕は、そんなに変わってるんだろうか。




「……あれ?」

 月の欠けた部分に、一つの明るい点が浮かんだ。

「星……なわけないよな」

 理科で習った。あの暗い部分は、太陽の光が当たってないだけで、本当に欠けてるわけじゃない。星は月よりずっと遠くにあるんだから、暗い部分より手前、つまり月より地球側にあるわけがないんだ。


 点は、まったく動かない。

 人工衛星でも、UFOでもないみたいだ。

 僕の口から、自然に言葉が流れ出た。


「そこにいるのは、誰?」



 言い終わると同時に、光の点が一瞬で視界全部に広がり、まぶしさで僕は反射的に目をつぶった。

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