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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編

生首

作者: RK

 悪逆非道の王様がいました。

 王様は人の生首を街の外壁に飾るのです。

 酷い臭いと惨たらしい光景に街の人は嘔吐し、次に義憤に駆られます。

 しかし、王城に行こうにも、門番がそれを許しません。

「王に直談判に行くのです。そこを通して下さい」

「それはできません。王は貴方達に割く時間は無いほど多忙です」

 街の人たちは納得しません。王は自分達から税金を巻き上げて暮らしている。働く必要もない人間が多忙なわけがない。更に言えば死んだ人間の首を壁に飾るのが王の仕事なのだろうか?

 王の評判は右肩下がり。王になる前は人のいいと評判だったのに。街の住人は口々にそう言う。酒の席では口を開けば王の不満。街中が王への不満でいっぱいでした。

 そして、とうとう街中の人が決起しました。

 悪逆非道の王を打倒すべく、鍬を、鉈を、包丁を持って城へと詰め掛けました。

「武装を解除しなさい!」

 門番や騎士達が制止の声を上げても誰も耳を傾けません。彼らは王の手先であり街の人を保護するわけではないのです。

 騎士たちの抵抗空しく、街の人々は王城へと侵入を果たします。

 無数の足音が、静かな王城に響き渡ります。いくら探しても王は見つからない。どうしてだろうか?もしや隠れたのだろうか?

 街の人たちは血眼になって探します。隠し通路は無いか、隠し部屋は無いか。壁を触り、床を触りを繰り返す。

 そうして見つけた部屋には一人の女の子が居ました。

 それは王の娘です。王の娘は街の人々に怯えて震えています。

 街の人々は我先にと手を伸ばしていきます。

 服を剥がれ、殴られ、犯され。王の娘は悪意によって汚されました。

 そして最後には首を切られ晒されます。

 街の者たちは王の悪逆非道を知らしめるために、王の愛する者の首を分かりやすい位置に飾りました。


 王は戦場に出ていました。

 周辺国家の魔の手が伸びないようにと殺した兵の首を街の外壁に晒していました。

 周辺国家からは情け容赦のない悪魔とさえ呼ばれていました。

 だが、それも愛する民を護る為。非情の刃となって獅子奮迅の戦いを見せていました。

 悪魔にでもならなければ、愛する民を護れない。

 残虐非道な行為は相手に士気を下げる効果がある。自軍の者には理由を言い聞かせていました。

 弱小国家が生き残るにはこれしか手は無いのだと。

 兵達の理解があるからこそできる手法。

 生き汚いと罵られようと、倫理がないのだろうと言われようが知ったことではなかった。

 死んでしまえば全てが無くなる。全てを失う。

 力のない者の知恵を笑う者は、力があるから笑えるのだから。

 だが、生首を晒すのは心が痛む。使者を愚弄する行為は精神を疲弊させる。

 定期的に首を交換する際に、古い首はしっかりと埋葬する。その際に黙とうを忘れない。彼らも必要だったから戦をしているのだと分かっているのだ。

 すべての作業が終わって街に入る。そこで王を出迎えたのは煙の上がる城と暴徒と化した街の人々だった。

 何が起きたのか、周りを見渡した時、王の視線にはあるものに釘つけになった。

 それは愛する娘の首。

 そうして王は静かに狂った。王だけではない。騎士達もだ。

 彼らは戦うことを放棄した。生きることを放棄した。

 どれだけ傷つけられようと笑う。首を切られても笑みを湛えたまま死ぬ。

 それを狂気と言わずしてなんなのだろうか?

 そうして王制は消え去った。

 街の人たちは首を卸して弔った。我が国の王が申し訳ないことをした。許してくれと。

 それから暫くして、街は周辺国家に襲われた。

 そこで初めて理解した。

 王は悪逆非道の王だったのではない。悪魔の王だったのではないと。

 自分たちを護る為に彼はあえて残虐な王を演じていたのだと。

 それを自分たちで踏みにじった。そして殺した。

 なんとも皮肉なことか。

 そうして街の人々は皆殺しになされた。

 生首を晒しものにされた。

 皮肉なことに。

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