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3話 世界変遷と記憶と

 ヒロインの名前はクレラ。シスターです。彼女の所属する宗教についてはオリジナルで、本編にて小出しする予定。十字架が宗教の目印。ピンクの髪はナチュラルカラー。この世界の人々は多種多様の髪が自然で、よく似合っています。

 太陽であろう恒星が沈むか、沈まないかという時間帯に修道院に到着した。修道院は森の中で見つけた道の先にあり、その大きさは驚く程大きくなかったが、よく知っている教会よりは大きい。

 聞くことには、何でも孤児院も一緒にあり、その為大きめだそうだ。クレラはその子供達の為のおやつを買いに出掛けた時に、ユウスケが襲われているのを発見し助けてくれたらしい。



「さて、改めてお話をお聞きしますね?」



 他のシスターは今、子供達とご飯を食べているそうだ。客室で迎え合せにユウスケとクレラが座る形。クレラがユウスケにお茶を出してから、そう切り出した。




「ユウスケさんは、記憶喪失なんですよね?」



「はい、多分。ユウスケって名前と、少しの知識しか記憶に無いので……」




 彼女はメモを取りながら、質問を重ねて行く。




「バンソーコーは知ってるけど、バンソコーは知らない。」



「はい……」




 彼女はその後も色々な質問を繰り返した。それはモノの名前であったり、生物の名前であったり。その様子が手馴れてる事から、もしや記憶喪失について何か心当たりがあるのかも知れない。



 考えれば、バンソコーを知らないと言った時から、天然だった発言が比較的真面目になっていた気がする。それに幾らシスターだからと言って、いきなりお悩みがあるのですか? とは聞かないのでは無いだろうか。




「……うーん、やっぱり」



「何か、分かったのですか!?」




 やはり、彼女は何か思い当たる節があるようだ。幾つか質問をした後に暫く時間を起き、思わせぶりな口調で呟く。ユウスケはそれに飛びつくように反応する。クレラはその余りの勢いに、のけぞりながらも話始める。




「ユウスケさんは、恐らく3年前の世界変遷までの常識だけ憶えているんだと思います」



「3年前の世界変遷?」



「はい。3年前、世界は変わりました。それも、劇的な勢いで……」




 3年前。世界は人間同士で、醜い争いを各地で起こしていた。しかし北より突然現れた魔物によって、人々は結束してその魔物に対抗する事になる。それ程までに魔物の力は大きく、更に数も多かった。



 魔物の力は強大で、人間達は徐々にその支配する土地を狭めていった。しかし、ぎりぎり3年前のある日、ある道具が開発された。それは不思議な力、魔法の様な力で奇跡を起こす道具。その道具で人間は、魔物に再度対抗出来る様になったのである。




「人間同士の争いが無くなったものの、人類共通の敵が現れた年。日常生活にも画期的な進歩を与える不思議な道具が出来た年。それが、3年前なのです。そして、それを人は世界変遷と呼ぶことにしたのです」



「ふむふむ? つまり、コロクマっていうのが魔物で、バンソコーっていうのが不思議な道具なんですか?」



「はい、その通りです」




 成程、分かった様な分からなかった様な……。ともかく、ユウスケは自分が3年前の知識だけを持ってる状態なのか。……、あれ?




「あれ、でも? 3年前の知識以外が無くなる、記憶喪失なんかあるんですかね?」



「そうですね。考えられるのは魔物によって家族を殺されてしまい、そのショックから魔物が現れる前、3年前の知識以外を記憶の奥底に封じ込めた。とかが考えられる事ですね」




 このシスターさん。殺されたとか、時折過激になる気がする。でも確かにその可能性はありえる。そしたら、俺は記憶を取り戻しても結局独りなのではないか?



 そんな不安と共に、そういう記憶喪失は何か大きなショックを受ければ、記憶が戻るというのは知識に残っていた。ただ、戻る可能性は低いのではないだろうか。そんな不安を頭の中で巡らせているユウスケ。




「実はもう1つ、可能性はあります。噂話になってしまうのですが」



「噂ですか?」




 噂話程度のこの話をするべきでは無いと思っていたが、自分の記憶が戻るのは難しい上、取り戻してもユウスケは独りなのでは無いか? そんな彼を哀れみ、せめての希望をっと、その話をする。




「はい。実は、ユウスケさんと同じ様な症状の患者さんが沢山、王都に居るそうなのです」



「え? 3年前の知識だけの人ですか!?」



「えぇ、そうなのです。詳しくは分からないのですが、なんでも記憶を刈り取る魔物が居るとか居ないとか。更には、その魔物の骨で頭を叩く事で記憶が戻るらしいのです。噂なので、信憑性が薄いのですが……」



「治る当てがあるんですか!? しかし、魔物についての知識が全然無いので、分からないのですが、人の記憶だけを奪う魔物なんて居るんですか?」




「……、有り得ない。そう私は思います。魔物というのは本能的に人を襲う習性があるらしいので、殺さないというのは……」



「そう、ですか」




 本当ならば、ここで嘘でも有り得るっと言ってあげるのが、良いのだろう。しかし、彼女はここで嘘を言ったら彼の為にならないと思い、厳しい言葉で返してしまったのである。



ユウスケはその言葉を聞くと、当たり前だが落ち込む。あぁ、結局落ち込ませてしまうのだから、やっぱりこの話はしなければ良かったと彼女も落ち込む。クレラは正直者で嘘が吐けないので、この手の過ちを何度もしていたのである。




「あぁ、そうでした! 私、近々王都に用事があったんですよ。一緒に行きませんか? 私一人で向かうには危険な所もありますし」




 クレラは居ても立っても居られなくなり、そんな嘘を吐いてしまう。王都に用事は確かにあったが、それは何時でも良く、言ってしまえば3年後でも別に構わなかった。それに、クレラは魔獣とも人間とも交戦経験豊富で、むしろユウスケが居た方が邪魔であった。



 クレラの嘘はユウスケから見てもバレバレで、声は上擦っているし、視線は彷徨っている。王都に行けばその魔物関連について分かるし、又は他の可能性についても分かるかも知れない。人が集まる場所はそれだけの情報量があるのだから。




「はい、お供させて頂きます!」



「では、お願いします」



 ユウスケは元気に答え、クレラは優しく返事をする。それから、ユウスケはクレラとご飯を共にし、一部屋貸して頂きつつ、その部屋で眠るのであった。色々大変な目にあって疲れてた上に、クレラの醸し出す安心感のお陰か、ベッドに入るとすぐに眠りに付いたのであった。



 3話まで閲覧して頂きありがとうございます。ヒロインのイメージは天然で優しいイメージなんですが、少し天然が過ぎて、酷い子になっていないと良いなぁ。

 という訳で次話は前半は修道院での話を中心に、後半は王都に向かう旅路を少し書く予定です。


 誤字脱字感想等、ありましたらご連絡下さい。宜しかったら、4話もご覧下さいませ!

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