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1話 覚醒、そして出会い

 物語は始まります。


「……此処は?」



 彼が目を開けるとそこは木々が生い茂っていた。森の中だろう。記憶を探ってみるが何故此処に自分が居るのか分からない。それどころか、彼自身の記憶も、ユウスケという名前以外無かったのだ。



「俺はだれなんだ?」



 言語と少量の知識が記憶に残っているが、此処が何処か、自分が何者なのか理解出来ない。服装から探ろうにも簡単な黒色のTシャツに黒地の長ズボン、白いスニーカー。そして何故か竹刀が腰のベルトに上手に掛かっている。服装がカジュアルだが、竹刀の存在によって意味が分からなくなる。

 情報不足がユウスケの不安を募らせていく。居ても立っても居られなくなったユウスケは、森を探索する事にした。



「とりあえず、歩き回ろう! 此処に居て誰かが通り掛かる可能性の方が低いし」



 不安を減らす為に、声を出すのは有効だ。ユウスケは目に見えたモノをとりあえず声に出しながら、森の中で段違いに高い木を目指し、歩き始める。






 しばらく歩いてきたが、此処まで人間どころか動物自体確認出来ていないで居た。段違いに高い木も思った以上に遠く、まだまだ距離がありそうである。只でさえ挫けそうだったユウスケの精神がそろそろ悲鳴を上げそうな時、開けた空間に出た。空間は左右に木々が綺麗に伐採され、地面を舗装(と言っても、固める程度の)されている。どうやら、道に出られたようだ。



「よっし! 道があるって事は、人がここの近くに居るって事だ!」



 ユウスケはあくまでも良い方向に思考を巡らせる、恐怖を振り払う為。悪い方向にあえて巡らせて、慎重に行く事はユウスケの性格上不条理なのだ。それに不安から始まっているのだから、それを打開する為にプラス思考をするのは間違って居ないであろう。

 右方向の地面の方が雑草が少ない事から人通りが多いであろうと考えたユウスケは、そちらに進む事にした。





 暫く歩いていく内に、道がどんどん綺麗になっていく。人の気配は強くなっていくが、未だに動物を一切見ない。果たしてホントにこの道で合ってるのか。ずっと同じ心配ばかりが頭をよぎる。ここまで3回も同じ心配をしている。ちょっと可笑しくなり、声を出して笑ってしまった。

 歩いてる内に喋るのを忘れてたので、久しぶりに自分の声を聞いた。それだけで安心してしまう。



「やばいなー。コレはやばいなー。誰か出ないかなー?」



 そんなユウスケの呟きに答えてか、左側の木々が不自然に揺れ始めた。



「そこに誰か、居るの!?」



 ユウスケは他の存在に喜びを隠さず、声を上げた。冷静に考えれば、人間である可能性の方が少ないであろう。木々の中から出てくる可能性が高いのは、獣の類の方が多い事は明白であった。しかしユウスケにそんな冷静さは無かったし、もし冷静だったとしても、獣であろうとも他の存在が確認出来るってだけでも喜んだであろう。



「グゥウウルゥゥウウウウ」



 結果から言うと、出てきたのは獣の類であった。ユウスケの持ってる知識の中で一番近い生物はクマであろう。しかしクマとは違い、角が頭の先に生えている。ユウスケの知識が間違っているのか、それともこの生物が間違っているのかは判断出来ない。

 しかし、ユウスケはその角を知っていた。尤もユウスケの知っているソレはまったく別のモノだが……。



「ってその角、コロコロして掃除出来る例のアレじゃねぇか!!」



 そう、クマに似ているその生物の角はコロコロクリーナーであった。しかし、その用途は掃除では無いのだろう。よく見ると粘着シートにゴミは付いていない。その代わり、血であろう赤色の染みが滲んでいる。



「あれー? もしかしたら、危ない感じかも……?」



 テンションが上がっていた為、気が付かなかったユウスケだが、危険な状態なのは間違いない。クマという生物は普段は臆病だが戦闘態勢に入っていると、とても獰猛な生き物である。そして、更には角があるのである。例え姿形がふざけていても、血の染みが危険な匂いを醸し出している。




「あれだ! とりあえず、話し合おう!」



「ぐるぅううううう……」



「俺を食っても美味しく無いよー!」



「ぐるぅうううう……」



「って、話し合える訳無いじゃねぇか!」



「!? ぐぁらぁああああ!!」



「っ! 危ない!」




 一人でボケてツッコミを入れて大変な所に、そのツッコミに驚いたクマもどきが襲い掛かる。どうやら、クマもどきは怯えていただけだったのだ。クマもどきはその角を突きたてながらユウスケに突っ込んでいく。それをユウスケはぎりぎりのタイミングで体ごと、左に飛びかわした。



「ツッコミに掛けて、突っ込んでくるとはこのクマお笑い好きか!?」



 ありえないとは思っていながらも、どうやらボケてしまうらしい。それも滑っている事に気が付いてるから性質が悪い。ユウスケが体勢を立て直したと同時に、クマも改めて戦闘体制に入った様だ。足に力が入っており、何時飛び出してくるか、恐怖を感じる。



「ここは……、」



 ユウスケはクマとにらめっこしながら、右手を竹刀に持って行く。



「戦略的撤退だぁああああ」



 竹刀に持っていっていた右手を大きく挙げ(意味は無い)、回れ右をして駆け出した。竹刀に触ってみたものの、剣を嗜んでた記憶なんて無いので生き残れそうな選択肢がソレだったのである。



「ぅお! 痛ぇえ!!」



 ユウスケは驚いた。完全に虚をついたというのに、クマの瞬発力は以上に素晴らしく後ろを向いたユウスケの背中を爪で引っかいたのである。クマと対峙している時に背中を向ける。これを危険じゃないと考えた自分をユウスケは馬鹿野郎と自傷した。



「あー、食べても美味しく無いよー」



 背中の傷が思った以上に痛く、悶えていたユウスケの前にのっそりとクマもどきが威圧する様に近付いてきた。それをみた彼は、効果が無いのを知りながらも命乞いをしてみる。



「あー、駄目! その爪しまって! グロい事になっちゃうから! あー、ですよねー。出来れば、誰かとお話してから死にたかったなー」



 クマもどきは何やら話しかけてくるユウスケという獲物の言葉を無視、あるいは命乞いを楽しみながら、その爪を振り上げる。余裕があれば角を使わないのかいと、突っ込んでいたユウスケだったが、最後までお笑いに走るだけの覚悟は無かったらしい。彼は最後に自分の肉片が飛び散るのを見たくなく、目を閉じた。





「……、あれ? って、どうゆう事!?」



 空気を裂く音が聞こえたので、ついにその凶暴な爪で肉片を散らされたと思っていたユウスケであったが、一向に痛みを感じない。不思議に思った彼が目を開き見た映像は、クマもどきが倒れた映像であった。



「……、矢? どここらこんな物が?」



 倒れたクマもどきをしっかり目を見開いて確認すると、角の下、恐らく眉間であろうその場所に矢が3本刺さっていた。クマもどきの位置と、その矢の角度から飛んできたであろう方向を大体で想像しながら、そっちを見てみる。



「あの……、大丈夫でしたでしょうか?」



 そこには弓を持った、知的生命体。人間、女性が居た。ユウスケは他人と出会った事に、ひとまず安堵を憶えたのである。




 1話まで見て頂いてありがとうございます。どうでしたでしょうか? ギャグが寒くは無かったでしょうか?


 この作品を通じて伏線、起伏を磨いていきたいと思っています。ギャグとシリアス。その2つで緩急をつけながら、盛り上がれる作品に出来る様、努力致します。



 誤字脱字感想等、ありましたら是非、教えて下さい。

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