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その画像には広いリビング。アイランドキッチン。広い部屋。綺麗なバスルーム。バルコニー。

どれもこれもモデルルームみたいな、ラグジュアリーな家の間取りの画像だった。


「拠点の場所は桜ノ宮。二十階の高級レジデンス。3LDK、リビング、洋室が三部屋。面積は七十平米ほど。都市ど真ん中の高層マンションより今は少し低めのレジデンスの方が人気だ。地震対策や高齢になったとき、環境が落ち着いたエリアの方が住みやすい。外観、内装、設備、いずれもタワマンに劣らない物件だよ」


さすが不動産。すらすらとポイントを抑えた説明は画像と合間って、非常に魅惑的に聞こえた。っていうか、こんな良い家が家賃タダって凄過ぎる。


「凄く素敵なお家ですけど。出て行くには期限があるとか、何かしらの制約があるのですか?」


「いや、別に。期限、制限を設けるつもりはない。俺は別に困らない」


ん? 困らないってどう言うことなんだろうと、聞こうとしたとき。横に置いてあったトートバッグに入っているスマホが震えた。


思わずそちらを見ると、ディスプレイには今日バイトを受けたホテルからのメッセージ受信だった。

ひょっとして、もう合否連絡が来たのかとソワっとした。

スマホから目線が外せないでいると漆喰さんが「俺のことは気にせず」と言ってくれた。

漆喰さんはそのまま珈琲に手を伸ばした。


すみませんと言ってから、いそいそとスマホの受信ボックスを開くと──。


『階様

このたびは当社のアルバイト募集にご応募いただき、誠にありがとうございました。

慎重に選考を進めて参りましたが、誠に残念ながら今回はご希望に添えない結果となりました』


──最後までスクロールしなくても、これは『お祈りメール』だと確信した。

最後まで文章を見ることなく、スマホをトートバッグに戻した。

そして俯く。漆喰さんと会話中だけども、深いため息と独り言が出てしまう。


「あぁ、面接落ちちゃった……」


最初から採用は望み薄だったのは分かっていた。お金の良さだけにつられていたし。やっぱりちゃんとした目的や夢がないと、採用されにくいのかな。

でも、こうも早くお祈りメールが来ると少しばかりへこんでしまう。


「今の連絡はひょっとして、面接の合否だったのかな?」


カチャリと音がした。きっと漆喰さんがカップをソーサーに置いたのだろう。


「はい。ちょっと無理めなのは分かっていたんですけどね」


苦笑して窓ガラスの向こう側の青空を見る。

やけに目に空の青が染みるのは気のせいだろう。まぁ、他のところもエントリーしているし。

地味に頑張るしかないなぁと、ゆっくりと前を向いた。


すると、漆喰さんがずいっと体を前に寄せていた。

距離が近くなっていて少しびっくりする。


「階さん」 


「は、はいっ」


「良かったら、俺のところで働かないか?」


「!」


「俺の事務所。一人でやって行くには、ちょっと手が回らなくなっていた。事務員が一人、欲しいと思っていたとろだ」


「で、でも」


それはさすがに怪しくないか。

家賃ただに、職の斡旋。

事故物件を扱っているし、ミステリアスなイケメン。なにか裏がありそな気がする。


「物件も職も探していたんだろ? 一石二鳥じゃないか」


「その通りなんですけど……うぅ」


だからこそ、これ以上は裏があると思ってしまうのだ。

あとイケメンに見つめられると言う、レアシチュにどこに目線をやっていいのかも戸惑う。

物件はともかく、さすがに事務員採用はすぐに返事は出来ない。

せめて少し考える時間が欲しいと言うべきだろうと、右往左往していた目を漆喰さんに定めて、口を開いた瞬間。


「給料は今落ちたところの金額、1.2倍を支払おう」


「詳しくお願いします」


──お金の誘惑に負けた魂が、漆喰さんの提案にやすやすと乗ってしまうのだった。


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