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翌日。私は朝ごはんをしっかりと食べ、白狐様へのお祈りも済ませて、お弁当を持って職場へと向かった。

漆喰さんは車通勤で、もう先に出社している。


私は電車通勤だ。

勤務中の服装はオフィスカジュアル。

勤務地は難波からすぐ近くの日本橋、そこの日本橋商店街という場所にある。

学生の頃、アニメにハマって日本橋のアニメショップによく行っていたので、なんだか懐かしい気持ちになった。


電車で乗り換え一回。大体四十分ほどの道のりを電車に揺られながら、今日のタスクを考える。

不動産屋勤務ということで緊張したが、私の仕事はほとんど書類整理、メール、FAXの確認、スケジュールとアポイントの整理といった雑務だ。

実家でやっていた仕事とよく似た作業だったので、すぐに馴染むことができた。


その傍らで漆喰さんは、新着物件のチェックやチラシの確認、高級なお線香の香りが移った、封筒を他の不動産屋へ届けたり。


Webでの問い合わせへの電話・メール返信。

物件提案資料の作成、広告用の物件情報入力・更新など、多岐にわたる仕事を機械のようにこなしていた。


──そもそも。

この『漆喰不動産』は事故物件をメインに扱っているから、事務所への来客はほぼないと漆喰さんは言っていた。

どうやら、事故物件の紹介は綿密なメールでのやり取りが主で、『ナンバ・ニコニコ不動産』のように、知り合いの不動産屋に情報を置かせてもらっているパターンもあるらしい。


それでも物件と人の呼び水として、高級物件をいくつか取り扱っており、普通の物件対応も少なからずある。中々に忙しい職場だ。


「昨日は資料を作成したから、今日は入力メインかな」


作業も慣れてきた。今日も一日頑張ろうと、到着までしばしスマホを取り出して、友達の架紀たるきちゃんに近況を報告するのだった。



京都の街並みは条例があるから、そうそう景観は変わらない。

けれどもこの日本橋は、私が学生だった頃と比べて随分と様変わりしていた。

まだ朝だから人の気配はそれほどないが、西の秋葉原と称される日本橋の道沿いには、コンカフェやカードショップ、飲食店が多く出店していた。


私の学生時代にはカードショップなんてあまりなかったのに。あと、ガチャガチャの筐体が異様に増えたとも思った。

京都の静かな朝を見てきた私には、この日本橋は実に派手な街だなぁと感じた。

そんな街中を歩いて目指す場所は、すぐそこ。日本橋商店街だ。


ここは昔ながらの家電製品、電子部品に骨董品、レトロゲームなど、様々なジャンルの専門店が軒を連ねていた。

中にはカフェやバーなどの新しいお店もある。

閉じているシャッターにすら味があり、タイル調の通路が奥ゆかしい。


昭和的な商店街ならではのエモくてディープな雰囲気が、ここにはあった。


漆喰さんがここに事務所を持つと決めたのは、都会の喧騒を離れたかったかららしい。なんだか意外だ。


商店街の入り口はビルとビルの合間の小道のようで、見上げればトタン屋根に国旗のガーランドが飾られ、左右には味のある看板が並ぶ。


まるで秘密基地に迷い込んだような感覚になる。


そんな細い道の奥に──レトロな古民家カフェのような、ガラスの引き戸が愛らしい漆喰さんの事務所があった。

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