◆五日目◇
◆五日目◇
大男がレジを済ませ、退店して行く姿が監視カメラに映っていた。そのとき、一瞬だけセルフレジがある場所を、頭を動かして見ていた。
自動ドアの前で、スマートフォンを耳に当てるのが見えたのを最後に、男は店を出て行った。
店内の固定電話が鳴った。
重い気持ちを奮い立たせて電話に出た。
「はい、もしもし、ハローストアです」
男性の声だった。
「あ、持田さんですよね?箱、受け取ってくれました?」
老人の声ではなかった。中年男性のような声。聴いたことがある声だった。
必死に記憶を辿り、大男を接客した日を思い出した。こもったような声。
少しキーが高く、冷たい印象。
「失礼ですが、どういった箱でしょうか?」
持田は冷静を装っていたが、すぐにでも電話を切りたい気持ちで手が震えていた。
「分かりますよね?さっき老人が置いていった箱ですよ」
その言葉に戦慄した。なぜ、そのことをこの電話の相手は知っているのだろう……どう答えるべきか、言葉に詰まった。
すると、相手は話を続けた。
「私があの老人に、その箱を置いておくように指示したんですよ」
その発せられる言葉の一つ一つが、常軌を逸していた。
「あ、そうですか……少々お待ちください」
電話から一度離れようとしたが、男は話をお構いなしに続けた。
「いや、待たねーよ。なに仕切ってんですか。主導権はこっちにあるんですよ」
持田はもはやワケが分からなくなっていた。
手汗が受話器を湿らせた。
「……どういったご用件でしょうか?」
持田はなんとか声を絞り出して、相手の用件を聞くように努めた。
「箱、開けてくださいね。あ、もちろん、箱を開けないで宛先の警察に届けたとしても、何を警察に先に見られるか、おわかりでしょう?痴態を他人に見せるご趣味がおありなら、その限りではありませんが…… 。私もそこまでは分かりませんが、あなたの性癖次第ですね。あ、それと、私のフレンドが、あなたのご両親が元気にしている姿を、よく見かけるって言ってましたよ。では……」
ガチャリと電話は一方的に切られた。
持田は受話器を手にしたまま、しばらく動けないでいた。
両親を監視されている……。先日の両親の写真を思い出す。
人質に取られているようなものだった。
時間は遅いが、すぐに両親に電話をかけた。
夜遅くの電話に逆に心配されてしまった。
それ以上の心配をさせないように平静を装い、無難な会話で終えた。
生活に特におかしな点はないと言っていたので、電話の男が言っていたことの意味は、やはり両親の生活を監視し、人質としているという意味。
気を取り直し、箱を手に、夜勤に声をかけて仕事を終えた。
家までが遠くに感じた。
手にした箱は軽いが、ズシリと重く感じる。頭の中を整理しながら歩いた。
両親は絶対に守る。
犯人の目的は、きっと私に何かをさせたいのだ。
ポツリ、ポツリと小雨が降り出した。マンションまで小走りで帰った。
帰宅してすぐにお風呂に入り、雨と疲れを流した。
頭の中は箱と男の指示でいっぱいだった。
翌日、朝一で警察へ向かおうと決めたが、男の言葉が持田を追い詰めた。
箱の中身が強烈に気になり、頭から離れない。
もしも本当だったら……気持ちが極限に達した。
ついに持田は警察に行く前に箱の中身を確認しようと開けてしまった。
すると中から地図が出てきた。この町内の地図。
数箇所に赤くばつ印がされていた。
奇妙な地図が一枚。
印の場所へ行けと言われているようで、どうするべきか悩んだ。
朝を迎え、出勤後、この日は敢えて何も行動を起こさなかった。
すると、なぜか帰宅しても箱は置かれていなかった。
あの地図が示すばつ印の場所に、何かがあるのは明らかだった。帰宅後、ネットで周辺の地図の航空写真を検索して下見をした。
両親との幼少期の思い出が頭の中を駆け巡っていた。
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(全9話、完結まで予約投稿済みです)
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