8.可憐な次女?2
テレビやネットでしか見た事のない痛ましい光景。
恐怖のあまり体が震えてしまう。
その震えを必死に止めようとするのに精一杯で体を動かせない。
動揺して言葉すら発せずにいる私に、
「アリシア様、プレセア様であれば彼女を救えると思います」
クラウドがそう告げた。
——プレセア・グラナード——
アリシアの妹で、三姉妹であるグラナード家の次女。
〈三姉妹の魔女と五人の騎士〉において、彼女たち三姉妹には使う魔法の種類にそれぞれ特徴を持たせていた。
攻撃魔法を専門とした三姉妹の長女、アリシア。
回復魔法に優れた次女、プレセア。
補助魔法を得意とする三女、ラステリア。
この世界が私が書いた物語の世界なのかはわからないけど、アリシアたちの能力が有効なら、重傷を負っている少女をプレセアが治せるかもしれない。
今、ここにはいないプレセア。
けれど、呼ぶ方法はある。
三姉妹が共通して使える高位の魔法、召喚魔法。
私が魔法でプレセアを召喚できるなら、プレセアが回復魔法を使える裏付けにもなるはず。
急がなきゃ。
早くしないと女の子の命が危ない。
私は目を閉じ、神経を集中させ、詠唱を口にした。
「血の繋がりを持つ親愛なる我が妹、プレセアに告げる——盟約により結ばれた汝の力を示す為——我が呼び声に応えよ—―」
私が考えて作った魔法の詠唱文。
魔法として意味を成すのなら、お願い、プレセアを私の元に——
詠唱を終えると、祈るように手を組んで強く願った。
すると、瞼の向こう側から強い光が私を照らした。
(う、ぐっ……)
目を閉じながら手で光を遮ると、私は片膝を落とした。
魔法を使ったせいか、急に体が重く感じる。
熱も出ている気がする。
体が凄くダルくて、気を失ってしまいそうなほどの睡魔に襲われた。
でも、こんな状況で眠ってなんていられない。
気を失っては駄目。
私は強烈な睡魔と眩しい光に抗いながら、ゆっくりと瞼を開けた。
目で光を捉えてから数秒後、光は徐々に収まっていく。
そして完全に光が消え去ると、そこには直径三メートルほどの大きさをした魔方陣の上に、一人の少女が立って……いなかった。
(ほ、ほぇ?)