1.貴重な時間
パチリと目を覚ます。
悲しくて辛くて眠れないと思っていたのに、いつの間にかぐっすりと寝落ちしていた。
寝ている間にも泣いてたみたい。
目の下がヒリヒリする。
私は起き上がると、勢いよくベッドから降りて、背筋を伸ばして床の上に立った。
そして——
ピシャン!!
両手で左右からほっぺたを強く叩いて気合を入れた。
前世の事で悩むのは終わり!
ここは国に敵とみなされた未知の世界で、守らなきゃいけない子供たちと仲間がいる。
そして私は仲間を束ねるリーダー。
一番しっかりしていなくちゃいけない存在。
過去に囚われちゃダメ。
今を頑張って生きなきゃ!
「よし!」
と気合に気合を上乗せしたところで気付いた。
この世界に来て、自分が『三人の魔女と五人の騎士』のアリシアだと知った時、リーダらしくアリシアとして振る舞うって決めていた。
上品で社交的、リーダーシップのある頼れる女性で、自信に溢れているのが三姉妹の長女アリシア。
だけど、
「私、全然アリシアらしい言動取ってない!」
最初こそ、アリシアらしく見えるように努力してたけど、それっぽくやってた気がするけど、途中から全く気にしてなかった。普通に忘れてた。
立ち振る舞いは間違いなく素の琴坂真白。
アリシア度ゼロ、純度一〇〇パーセント真白だった……。
これは、やばいのでは?
中身は完全に陰キャJK。
変に思われてる? アリシアじゃないと思われてる?
でも、そういう意味ではプレセアも変だし、なんならプレセアの方がプレセアらしくないし……。
「う~ん」
私は考えた。悩んだ。
そして答えを導き出した。
「このままで、いいよね? プレセアもクラウドも普通に接してくれてるし、特に不都合もない。今更変に気取ったら、それはそれで不自然。うん、自分らしくありのままで行こう」
若干強引に納得させた。
せっかく入れた気合がちょっと抜けちゃった。
†
大きなベッドの上で目覚めてから五分くらい過ぎた。
まだ外は暗い。
明るくなってきたら部屋を出てプレセアたちの様子を見に行こうと思っていたら、
「グッド、イブニィ~ング、お姉様」
プレセアが勢いよくドアを開けて入って来た。
「おはよう、プレセア……ん? あれ? イブニング?」
すでに視界に入ってるけど、念を入れて窓を見る。
うん、確実に暗い。
「もしかして私、丸一日寝てた?」
「もしかしなくても、ぐっすりと一日中寝てたわよ」
「うぉ……」
てっきり夜明け前だと思ってたのに、一周して夜に突入してた。
「ごめんなさい。寝坊し過ぎたわ」
前世の平日なら学校も企業も大体終わってる時間帯。
自分で言っておいてなんだけど、果たして寝坊という言葉は適しているのだろうか?
「謝る必要なんてないじゃない。いつ起きるかなんて決めてなっかんたんだし」
「それはそうだけど……」
いや、そうじゃないでしょ。
この何もわからい未知の世界で寝たい時に寝て、起きたい時に起きるのは緊張感がなさすぎる。
「これからは起きる時間を決めましょう。状況次第になるだろうけど、とりあえず普段の起床時間と就寝時間を決めるわ」
「了解、何時にする?」
「就寝時間は十一時で、起床時間は……六時だとちょっと早いわよね? かといって七時だと遅い気もするし……」
ここは慎重に決めないと。
基本的に毎朝起きる時間、寝ている時の朝は一分でも貴重だ。
私は悩みに悩み、プレセアの顔色を見ながら決めた。
六時と七時の間を取って~、
「起床時間は六時三十五分で」




