16.勉強になった
捕らえられていた子供たちは六人。
男の子が四人に、女の子が二人……。
逃げられないように鉄格子の檻の中に閉じ込められている。
こんな所に子供たちを……許せない!
「てい! てい!」
私は地面に伸びている盗賊たちを引き摺り起こして再度投げ飛ばした。
そして檻の鍵を探そう……としたんだけど、檻に鍵穴がない事に気付いてやめた。
入り口である扉は出られないように溶接で固定されている。
鉄かぁ……いけるかな?
私は鉄格子の棒を左右の手で一本ずつ掴み、
「ふんぬ!」
外側に向けてひん曲げた。
うん、いけた。人が通れる隙間が出来た。
片手で人を野球ボールみたいに投げられるくらいだから鉄格子もイケちゃう気がしたんだよね。
「もう大丈夫よ。安心して」
と子供たちに言ったものの、子供たちは脅えながら震えている。
檻から出ようとしないどころか、更に奥へ隅へと移動しだした。
状況が状況なだけに最初から脅えてる感じはしたけど、私が来てからの方が怖がっているような、そうじゃないような……。
まだ周囲に動ける盗賊がいるのかと思い、振り返ってみたけど誰もいない。
「どうしたの?」
心配して檻の中に入って近付くと、子供たちは、おしくらまんじゅうをするように互いの身を寄せ合った。
出来るだけ私から離れたがっているように見える。
え? もしかして私? と冷静に考えてみる。
子供たちにとって怖い盗賊を片手で投げ飛ばし、鉄格子を素手でひん曲げる長身の女。
うん、怖い。かなり怖い。
子供たちからしたら、私は山姥に見えていてもおかしくない。
※山姥(やまうば、やまんば)奥山に棲む老女の怪
『凄い!』とか、『かっこいい!』とか、『美人!』って言われる流れだと思っていた自分が恥ずかしい。
なるほど。私の小説にはなかった展開だ。
こういうパターンもあるのね。
勉強になったわ。
†
「ちょっと力が強いだけで私は優しいお姉さんよ。マリアちゃんに頼まれてあなた達を助けに来たの。だから安心して。全然脅えなくてもいいのよ」
「……ほ、本当に?」
「本当よ」
「ほ、本当の本当に?」
「本当の本当の本当よ。もう一つおまけに本当よ」
自分の語彙力の無さを痛感しながら、子供たちを説得すること十五分。
盗賊を投げ始めてから、ここに来るまでに使った倍の時間をかけて、何とか子供たちを助けに来た強くて綺麗なアリシアお姉さんという事をわかってもらった。
「それじゃあ、こんな所にいつまでもいないで早く帰りましょ。マリアちゃんが待ってるわ」
「「はい!」」
「「うん!」」
元気よく返事をする子供たち。
私を子供たちを連れて洞窟を出た。
洞窟の外にはクラウドと、クラウドに殴られて顔がボコボコになった盗賊たちが積み重なって山が出来ていた。
ぐったりしていて動かないけど、呼吸はしてる。
死んではいないみたいね。
とりあえず盗賊たちの事は後にして、まずは子供たちを村に………あ!
しまった。帰りの事を考えてなかった。