首切り姫
その後、息子と夫の頭蓋骨を持って街を出て、自分は死神だと自嘲気味に笑って、半分皮肉で大鎌を買って。もう、戻れないと、悟ってしまった。
一時は殺し屋として稼いでいたけれど、段々歯止めが効かなくなって来て、欲しい頭蓋骨を追い求めるようになって行った。本当に欲しいものは、違う筈なのに。
そんな時に、破壊神君と出会った。最初はいつものごとく頭蓋骨が欲しかった。でも、無理だった。
完全な敗北。自分の見ていた世界の小ささ。もう、殺されて、全て終われるんだろうと思っていた。なのに。
「お前、面白いな。それ、殺した奴らの一々そうやってるのか?俺はそのコレクションには入らねーけど、丁度仲間を探してたんだ。来るか?」
「仲間?そんな甘ったれた関係、私には要らない」
「折角助けてやろうってんのに、口だけは減らない奴だな。まー、俺もあくまで協力者が欲しいだけだ。殺した相手はどうして貰っても良い。だから、ちょっと協力してくんね?」
それが、魂を喰らう者の始まりだった。
私が頭蓋骨、しかも殺した全員分を集めているのには、私のこう言った心境も勿論あるけれど、もっと合理的な理由もある。
大抵の人は、この鎖、とりわけ夫のものを見ると怖気付く。別に私は破壊神君と違って、目に留まる全ての人を殺したくなる訳じゃない。好みのものかターゲット以外は手を出そうとも思わない。向こうが勝手に逃げてくれれば願ったり叶ったり、という訳だ。
そういう意味で、これを見ても何ともなかったちびちゃんも素養は十分だと思う。日光に当たれないのはネックだけれど。
「来たわよー」
と本拠地に顔を出せば、相変わらず破壊神君は私を睨む。
「何の用だ。昨日のが満足出来なかったか?」
怒気を孕んでいるようで、気遣ってくれるとは中々優しい。
「寧ろ、良かったわ。もしかして、自信なかった?皇帝サン?」
「は?違う。俺は当分自分のを取られるのはごめんって意味だ。勘違いするな。俺はお前より強い」
「そう。それは失礼」
なんて言い争っている間に、ちびちゃんはコーヒーを淹れてくれた。破壊神君は拾ったの一点張りだけれど、実際は良い所の出なのかもしれない。将来は使用人になる筈だったのだろう。
「メーワクだ。帰れ帰れ」
「えー。ケチねぇ」
「やかまいい。俺の家だぞ」
ちびちゃんは家事をしている。この人、生活に関する事はさっぱりなのかもしれない。
破壊神君に色々思うことはある。でも、私の息子に何処となく似ている気がする。