縛り付けているもの
自由になった筈の今でも、胸が締め付けられているような、鎖で縛られている様な感覚がある時がある。
後ろめたさか、トラウマか。
今は、そんな事どうだっていい。
なんて言えたら良かった。
「あらあら。今日は随分と大人しいわね」
心臓の痛みに耐えていた俺を、わざわざからかいにくる首切り姫はなんの為に存在しているのだろうか。
「うっさい」
「今なら、チャンスかしら」
こうやって虎視眈々と俺の首を狙うので、気を休める事も出来ない。極夜鳥の方がマシだな。
そんな首切り姫を、チビはグイグイと押して外に追い出した。
おかげで、ちょっと和らいだ……か?
駄目だ。このまま座ってても何にもならない。洗濯物畳むか。立ち上がる時も胸を張ると痛いので猫背になる。
「はぁ……」
チビが突然俺を引っ張ってベッドまで連れて来た。休めって事か?
「今日は洗濯物も掃除も食器洗いも」
チビは俺の口を枕で塞いだ。そして、去っていった。
思えば、チビだけが助けた代わりに恩返ししようとする正常な思考回路を持っているのかもしれない。
それに比べてあいつらは……。余計に痛くなりそうだ。やめておこう。
まぁ、チビも助けてなかったら死んでただろうし。
チビは話さない。だから知らない。
でも、あいつが酷い目にあっていたのは確かだ。
あれは確か俺がアルマジロの国に乗り込んだ時だったな。なんか俺が王を潰したせいで今は鼠の国の一部になってるらしいけど。王子はいたのに、継がなかったんだな。
別に俺は王が欲しくて行っただけだったが、偶然見つけた地下室にチビはいた。
事情なんて知らない。あるのは、こいつが手足を拘束され、妖気封じの首輪を付けられ、血まみれになっていたと言う事実だけだ。
傷はムチの跡だった。別に助けなくて良かったのに、あいつの目はまだ澄んでいて、真っ直ぐに俺を見つめているのが気に食わなかった。
俺だったら、あんな表情してられない。
ぼんやりとそんな事を考えていたら、チビがスープを持って来た。
「大丈夫だ。自分で、起きれる」
寝たら治ることも多いが、たまにそのままな時がある。とりあえず、これ飲んだら寝るか。
チビはスープを飲ませなくても大丈夫だと判断したらしく、ベッドに乗って頭を撫でて来た。
「大丈夫だ」
チビはやめない。
俺がスープを飲み終わると片付けに行ったが、寝ようとするとぬいぐるみを突っ込んで来た。
思えば、俺が弱っている姿はチビとあいつにしか見せてない気がする。
でも、今はどうでもいい。