マイペースすぎる
リーダーは俺の水の塊を避けた。これを避けたって事は、第一段階はクリアだな。
リーダーの攻撃を避けると、水を固めて大きな針にし、飛ばした。
針はリーダーの腹に潜り込んで行き、貫通した。
辺りが血に染まった。リーダーは力尽きたようだ。
敵討ちのつもりか百人ほど走ってきたが、興味はない。発生させた渦潮に巻き込んでやった。渦潮が赤く染まったら、ようやく食事だ。
俺は丁度生首を抱えた首切り姫を見かけた。
「終わったか」
「勿論。形が綺麗そうだし、角の形も好みのがあって良かった。私は自分の家に帰るわ」
首切り姫は俺の返事を待たずに瞬間移動で消えた。相変わらず、身勝手なやつだ。
俺はそのまま帰ったが、部屋の中には死体が転がっていた。
「また来たのか。最近多いな」
死体だが、血は一滴も残されていない。
血抜きの死体に興味はない。後で俺の技で消しておこう。
「チビ、食事は済んだか」
チビの役目はここを守る事だ。なんか俺らを倒そうとする奴らが後を絶たない。ここに侵入される事も珍しくない。
チビの特殊能力は吸血鬼だ。チビだがそこいらの人間は右手一本で事足りる。だから俺は侵入者から家を守るためにチビを利用するし、チビは血を得られる。
「その死体、貰っても良いですか」
勝手に入って来た鳥が何か言っている。侵入者以外もノックされたりインターホンを鳴らされたりしない。お陰でドアとインターホンのボタンは元気そうだ。
「勝手にしとけ。俺にとっちゃただのゴミだ」
「では」
鳥は人の姿になった。こいつが極夜鳥だ。人の姿になるだけじゃなく、サイズも変えられるらしい。最大になると一つの街を覆って暗闇にしてしまえる事が名前の由来らしい。
「貰って行きますね」
極夜鳥はテキパキと死体を不透明な袋に入れていく。
「用事が済んだら帰れ」
しかし、勝手にポットに水を入れて湯を沸かし始めた。
「嫌ですよ。滅多に来れないんですから」
頼んでも無いのにコップを三つ出し、棚を漁り始めた。
「お、割とコーヒー飲んでるんですね。チビさんにはココアでしょうか。お優しい事で」
人の私生活に土足で踏み入る奴に、褒められたとて全く嬉しくない。
あっという間にコーヒーとココアをいれてしまった。
俺は悔しいが飲む。無駄にする訳には行かない。
「ふぅ。洗っといて下さい。もう帰るので」
マイペースすぎる。こうやって勝手にコーヒーだけ飲んでいくのを、月に一度されているこちら側の気にもなって欲しい所だ。全く、面倒な奴らだ。