語るもそこそこに
決行したのは、多分十五。
その頃の俺は、息苦しく生きていた。
常識に縛られても尚抜け出そうと足掻く本心。
表面上でしか取り繕えない現実。人のご機嫌取りでしか無かった。
現実と理想の狭間で揺れて、苦しくて。時には、自分を齧って傷だらけになった。
何処に矛先を向ければいいのか分からず、ただ心を歪ませて何とか立っていた。
矛先を自分に向ければ、心臓が締め付けられる様だった。
その矛先を他人に向けて、攻撃して仕舞えば、こんなに楽になるなんて知らなかった。
俺は、真っ赤なフローリングと両親だったものを見て思った。
禁じられていた事だったが、人間を初めて喰った時、今まで食べさせられていた食事が食べる食事に変わった。驚くほど、美味しかった。
「この程度の事でしかねーよ」
「この程度、ねぇ」
やけに含みを持たせながら、首切り姫は俺を見る。
「うっせえ」
俺はそんなのに構わず電話を掛ける。相手は直ぐに出た。
『今起こってる戦争は、熊の国東地区。強盗事件が猫の国海岸付近の街で発生。通り魔は鼠の国で三箇所「もういいぜ」
『そうか』
「ああ。ありがとよっ。愛してるぜ」
『……また下らん事を……』
そこで電話は切れた。
「熊の方に行ってくるか。お前はどうする」
「私?まぁ、熊の国の皆様はがっしりしてるから、あの骨格も悪く無いし。ついて行こうかしら」
こいつの判断基準は、頭蓋骨だけだ。
俺も食事がしたいだけだし、ある意味同じか。
「チビ、頼んだぜ」
チビが頷くと、俺たちは走り出した。
「ルーちゃん(極夜鳥)は?」
「最近はメイドの仕事やってるってよ。欲しいものがあるんだと」
「へぇ〜てっきり辞めたのかと」
なんて無駄口を叩いていたら、もう着いた。準備運動にもならない距離だったな。
全員俺たちの妖気を感じると、顔を真っ青にして腰を抜かした。首切り姫はもう標的探しに消えたが。
「お前らは、喰われる立場を弁えてる様だな」
まぁ、こんな奴ら喰っても腹の足しにもならねぇ。目指すは、どっちかのリーダー。
と思っていたが、背後から切り掛かってくる物騒な奴がいた。
「俺のプレッシャーの中動けるのは褒めてやる。だが」
俺は水でそいつを包んだ。
「そんなの、ガキのチャンバラ遊びに毛が生えた様なもんだ」
溺死させた奴は美味くない。次だ次。
他の奴も同じ様に倒し、もうリーダー。ちゃんとしてて欲しいんだが。
「よう。案外いいじゃん、お前」
俺が近づいても動揺しない。
なんかすごい筋肉だな。楽しませてくれよ。