狂ってるのはどっち?
親、友人、先生。自分を取り巻く全てのものが、
―気持ち悪かった。
「人でなし」
今の俺を象徴する言葉は、多分これだ。
でも、俺からしてみればそっちの方が狂っている。
「―そう思わないか?」
俺は、目の前のチビに尋ねる。
チビは首を傾げただけ。俺も期待してねぇよ。別に。
「あら。考え事なんて、珍しいじゃない」
と頼んでもないのに黒いドレスを来た女が話しかけてくる。
「チビで遊んでただけだ」
女はクスリと笑う。
「相変わらずね。折角、会いに来てあげたのに」
別に俺はお前に会いたくもねぇ。
と言いたいが、女が俺の首元を見つめている。やめておこう。
俺たちは仲間という程確かな関係がある訳じゃ無い。だから、別に互いを守ることもないし、なんなら敵になる事だってある。
ただただ、己の欲望を満たすだけの組織。それが魂を喰らう者。
今俺が認知しているメンバーは、俺とチビ、目の前の女(首切り姫)、でっかい鳥(極夜鳥)、千里眼の奴……ぐらいだ。
その他は関わりはあっても一緒に行動はしない。
「考え事って言っても、いっつも思ってる事だけどな」
常識で互いを縛り合い、傷つけあう。本当に馬鹿馬鹿しい。
「まぁ、私は貴方が何を考えていても、頭蓋骨を貰えれば構わないのだけれど」
と言ってくる首切り姫も、常識なんかじゃ測れない。測ろうとする奴らの方が間違っていると、俺は思うんだが。
「ハッ、そう易々とくれてやる程俺も親切じゃねーよ」
「じゃあ、今晩は?」
こいつ、寝込みを襲う気だ。
「そんなに俺のが欲しいのかよお前は」
「勿論。綺麗な頭。ご両親に愛された証ね」
こいつ、俺がどんな事して来たか分かって言ってるからタチが悪い。
「あーそうですか。別に愛されててもなくても俺には関係無かった話だ」
そうだ。もう、俺の両親なんていない。
「喰っちまったからな」
首切り姫は何故か微笑んだ。
「そう。相変わらずね。ちびちゃんに昔話でもしてあげたら?」
「お前が聞きたいだけだろ……」
首切り姫はチビの髪に触れた。
「あら、私は別に?」
「お前はなんでそんなに回りくどいんだ。観覧車ぐらい回ってるぞ」
「意味わかんない例え」
「やかましい」
本当に、こんな奴を助けた自分を殴ってやりたい。
別に大した動機でもない。俺が両親を喰ったのは。
ただ、勝手に産んで育てて教育させた癖に偉そうにしてたのが癪に触っただけだ。
自分や自分と他人との関係を大事にする母。他人と自分だけで生きてけば良かったのに。
父も同じ。
本当に、嫌いだっただけだ。