青い空から降る音色
思い付いた事を書き出した小さな作です。
小さなピアノの形のオルゴールは、長い間『オルゴール記念ハウス』に展示されている。
透明なケースから人々に見えるように入れられており、形の愛らしさから見る目を楽しませていた。
『品』の一言で云えば間違いはないのだか、オルゴールには魂が宿っている。
創られた時には既に魂が存在しており、生まれた感覚が在ったのだ。
作成してくれた人物がこの世を旅立った日、オルゴールはネジを巻いてもいないのに自ら音色を奏でた。
オルゴールは作成した孫娘に送られた物で、自身の産みの親がいなくなった事は、家族伝いに聞いた。
産みの親が天に召された夜、オルゴールは贈る音色として曲を流した。
『素敵な曲をありがとう。
これからもその曲を人々に聞かせて欲しい』
『♪♪♪♪♪♪♪♪……』
オルゴールはピアノの音色で精一杯言葉を贈った。
作成してくれた人の姿が空の向こうへ消えた後もずっと、ずっと音色は流れていた。
長い年月を経て、展示されているオルゴールはその日を感じとる。
今度は自身が空の向こうへ旅立つ日だという事を。
『♪♪♪♪♪♪♪♪♪……』
いつもより心を込めて音色を奏でたオルゴールを、館内にいる人たちは驚いて見つめた。
人の手が触れてもいないのに、突然鳴り出したオルゴール。
何故か怖さではなく、切なさが伝わり始めた。
『迎えに来たよ』
『♪♪♪♪♪♪……』
音色は少しずつ上へと上がり、やがて館内から出ていき……そして空の向こう側から聞こえ始めた。
美しい音色は暫く鳴り響き、空を不思議な音色で染めた。
宜しければ御意見を頂ければ報われます。