星になる。
初めまして! どこぞの悪鬼です。
本日は「星になる。」を開いてくださり、誠にありがとうございます‼
この作品は冬の童話祭2025に参加した作品ですので、子供っぽい視点と表現に特に意識しました。
小さい子供になったつもりで読んでくだされば幸いです!
「ねえねえ。ママ、おじいちゃんはどこに行ったの?」
ぼくは今日も、ママに聞く。
おじいちゃんは、どこかに行ってしまった。
そのたびにママは答える。
「おじいちゃんはね、お星さまになってママたちのことを見ていてくれているんだよ」
そう答えられるたびに、ぼくはいつも疑問に思っていた。
おじいちゃんはぼくを見つけられるのに、どうしてぼくはおじいちゃんを見つけられないのだろう……?
「ほら、もう夜だから。おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
時計を見たらもう8時。
夜遅くまで起きていたらおばけが出ちゃう。
ぼくは布団にくるまった。でもどうしてだろう……? まったく寝付けなかったんだ。
ぼくは大きくなったらどうなるんだろう?
小学校に行って、中学校に行く。
そして高校に行って、大学に行く。
好きな人と結婚して、子供をつくって、そしておじいちゃんになる。
それで……? そしたら、ぼくも星になっちゃうのかな……?
大好きなみんなを置いて行って皆に姿を見られないで、一人、みんなのことを見守る存在になるのかな。
ぼくにはおじいちゃんの気持ちがわからない。一人で見ていて寂しくないのかな。
星となって空で見守っていて、悲しくないのかな……?
そう思いながら、ぼくは暗い部屋の中で羊を数えた。
その日、ぼくは不思議な夢を見た。
もうここにおじいちゃんはいないはずなのに、おじいちゃんと会ったんだ。
周りにはたくさんの星が輝いていて、宇宙みたいだった。
「おじいちゃん!」
「おぉ……久しぶりだねぇ」
おじいちゃんはいつもと変わらずにぼくの頭をなでてくれる。
それがとっても温かくって、ぼくはとっても大好きだ。
「ねえ、おじいちゃん」
「どうしたんだい?」
おじいちゃんはいつも、ニコニコ笑顔で答えてくれる。
「どうしておじいちゃんは、お星さまになったの? ひとりで寂しくなーい?」
上を見ると、おじいちゃんのニコニコ笑顔があった。
「全然、寂しくなんてないさ。だって、みんなのことをいつでも見ることができるんだから。タロウが頑張っていることも、大きくなっても、いつでもずっと見ることができるからね」
おじいちゃんはガッハッハ、と笑う。
ぼくはそんなおじいちゃんも大好きだった。
「本当に……?」
「本当だよ。いつかタロウも星になるんだ。そのときになったら、わかると思うよ」
おじいちゃんはずっとなでてくれていた手をぼくの頭から離す。
そして、おじいちゃんは星がたくさん輝いている方に歩き出した。
「おじいちゃん……!」
「大丈夫、またいつか会うさ。そのときまでタロウのことを見ているよ。立派な旦那さんになるんだぞ」
「おじいちゃん‼」
「ほら、泣かないの……」
これが、おじいちゃんの最後の笑顔だった。
朝が来る。
おばけがいないし、パパやママがいるから、この時間が一番大好きだ。
最後に一回だけ、聞いてみた。
「おじいちゃんはどこに行っちゃったの?」
やっぱり、答えは変わらない。
「おじいちゃんはね、お星さまになってママたちのことを見ていてくれているんだよ」
パパもママもぼくも、そして君も、いつかは星になる。
でもね、星になることも、悪いことだけじゃないと思うんだ。
だって星になったら、みんなの様子をずっと見ることができるから。
星になることに怖がらないで。
――星になったって楽しいことはあるんだから。