ナクスの場合
この世界トゥエンティエンスは4つの国に分かれている。
科学が発達した機械国イーグリアス。
魔法がこの世界で至上の力とする魔国ガンダリア。
普通の人間よりも身体能力が発達している極国レイハード。
そして、その三国の中央に位置する学園国家オールトール。
これは元々オンラインゲーム{トゥエンティ}にあった架空の国だったが、世界がトゥエンティと融合した時点でこの国は架空のものでは無くなり実在する国家として機能するようになった。
オンラインゲーム{トゥエンティ}にレベルアップというモノは存在しない。
このゲームは経験地というモノの代わりにSPというポイントをゲットすることができる。このSPを使って自身のステータスを上げていくのだ。
この設定はこの半ゲーム世界にもそのまま適用されている。
ステータス以外にspはスキルにも振ることが出来るようになっていてより高位のスキルを使うにはスキルのステータスアップをしなければいけない。
という、この世界で生きるものにとっては当たり前の授業内容をただ淡々と述べる教師にナクスは辟易していた。
このオールートール中央国立学校にナクスはいた。
入学してから一ヶ月が経つが今のところナクスが興味をそそられたのは実技の授業と魔科学に機械学という有様。
しかもそれもずっと昔から知っていることのおさらいのようなものだ。
こんな所に俺はなんでいるんだろうか・・・
「ナクス君、お昼ご一緒しませんか?」ナクスが感慨に耽っているとすぐ傍に
いた同じクラスのルイフェランス・トラインが誘ってきた。
人を引き寄せるような藍色の瞳 彫りが深く整った顔立ち 清潔そうな長く黒い髪、脚はほっそりとしていて長く出るところも出ていてスタイル抜群だ。
一言で言うならそう美少女である。
入学式から一ヶ月もたったところにいきなり転校してきたいかにも訳ありというナクスに積極的に話しかけてくる数少ない世話焼きの一人だ。
ちなみにナクスにあんまり人が近寄らないのは目つきが果てしなく悪いという理由もある。
「別にいいけど、ルイフェランスさんは弁当組みじゃなかったかな?」確かルイフェランスはいつも手作りの弁当を持ってきていたはずだ。
「実は・・・お弁当を少々多めに作ってしまいまして、私一人じゃ食べ切れそうもないので」なるほど、それで俺にお呼びがかかったと言うわけか。やけに大きい弁当箱を持ってきていたのにもそれで納得できる。
「でも、それなら他に人がいるじゃ・・・」いるじゃないかと言いかけたところでナクスは口をつぐんだ。なにせ目の前のルイフェランスのつぶらな瞳が潤んでいるのだ漢字の漢と書いて男と呼ばれる者になるならばここは決して断ってはいけないところだと嫌でもわかる、それに周りからの鋭い視線が痛い。
「わかった、それならご一緒させて頂きます」
「よろしい」
ルイフェランスの満面の笑顔にナクスは不覚にも見とれてしまった。
「ルイフェランスさんは確かガンダリア十貴族の内の第三位のトライン家の次女だったよね?」こっちの方向ということは中庭で食べるのかな?と思いながらナクスは何気なくたずねた。
普通ならガンダリアの貴族はガンダリア魔法育成学校に行くはずなのだがルイフェランスは多くの他国の人間と接する機会が必要だとうことでオールトール中央国立学校にきているらしい。
「はい、といっても貴族なんて、そんなに大層なものじゃないですよ」」
ルイフェランスの持ってきた弁当は確かに量が半端ではない程多かった。やけに多い?そんな可愛らしいもんじゃなかった。
なんせ普通の弁当箱が五段も重ねられているというスペシャルっぷり。
ナクスは最初に見たとき驚きで数秒ルイフェランスの顔をまじまじと見つめてしまったくらいだった。
これで少々って普段からどんだけ食べているのだろうか・・・
よくこれだけ食べてもそのスタイルを維持できるものだ。
半ゲームデータ化したとは言え基本的なことは元々の世界とそこまで変わってはいない。食べ過ぎれば太るし運動しなければ体は少しずつ衰える。そうゆう設定になっているのだ。
「そんなことはないんじゃないかな、先の三国大戦の時も大活躍だったって聞いてたけど」トリデイン防壁での防衛戦での事は俺も耳にしていた。
「確かにお父様達は先の戦で英雄と持て囃されましたが、戦争などで活躍しても
そんなの意味ないです。」
少し暗い顔で答えるルイフェランス。
あまり触れないほうがいい話題だったようだ。
「ナクスさんはオールトールの郊外で一人暮らしをしていらっしゃるんでしたっけ」
「うん、親父も母親もあの大戦で先に逝っちまったからね」
なんでもないような口調で語るナクスだが、それは嘘だからだ。
本当はもっと他に色々事情があるのだがこれがばれたらスパイ罪、身分偽証罪などその他諸々の罪で一生表にはでられなくなるだろう。
「すいません、嫌な事を思いださせてしまいましたね」
「いや、いいんだもう自分の中でとっくに整理をつけたことだからね」
申しわけなさそうにするルイフェランスを見て、ナクスは罪悪感が心の内を駆け巡るのを感じた。
「そんなことより、こんなにおいしい弁当を食べたのは初めてだよ俺はいつも家では自炊してるからそこそこのものは作れると自負してたけどルイフェランスさんは数段レベルが高いね」
「そ、そうでしょうか?お料理は私も大好きなので、そう言って貰えると嬉しいです」
これはお世辞でもなんでもない本当にルイフェランスの弁当は自分が作る料理よりも格段においしかったのだ。
ルイフェランスはさっきまでの暗い顔が嘘だったかのように満面の笑顔を浮かべている。
「やっぱりルイフェランスさんは笑顔のほうがいいよ」ナクスは思ったことをそのまま口にした。
その言葉にぼふっと顔が真っ赤になるルイフェランス。
それを見て今日も平和だなぁと本来の目的も忘れてのほほんとしていると校舎からもの凄い砂煙をあげてこっちへ向かってくる何かをナクスは視界の端で捉えた。
やれやれ、どうやら厄介ごとの種がおでましのようだ。
俺は軽い頭痛を覚えながら砂煙を上げている紅と蒼から飛んでくるだろう攻撃に備えた。
「紅龍円舞掌ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」「龍蒼」
まるで正反対の掛け声と共にロケットのように突き出された掌を左手で受け止め、もう一方の薙刀は受け止めた掌を軸に空中で回転し避ける。
「なんで避けるのよ!!」「臆病者」
言いたい放題いってくれる、だいたい薙刀は避けたがお前のパンチは受け止めただろうが。
「受け止めれたのなんて偶然よ!!」「それは必然」
「なんですって蒼龍!?」「ほんとの事を言っただけ」
「あんたの龍蒼だって避けられたじゃないの!」「それこそ偶然」
完全に俺は置いてけぼりだ。被害者こっちなのに・・・。
「あー分かった分かったお前ら姉妹喧嘩はやめろっての見苦しいぞ」
全くいい迷惑であるこちとらルイフェランスとののんびりとした昼の一時を満喫していたところなんだぞ。
その言葉に二人は「ふざけんな!このモノクロド変態野郎」「一遍死ね」と同時に反応を返してきた。
全く仲いいなお前ら。
というかモノクロは否定しないがド変態ってなんだド変態っていつから俺はそんな不名誉なレッテルを貼られてしまったんだ。いくら白髪に制服がん無視の黒衣を身にまとっているからといってモノクロと見なされるのも些か心外だが。
なんて半ば現実逃避をしかけていた俺だが、いつまでもこの凶暴な姉妹を前にじっとしているのは命取りだということぐらいは理解している。
なにせ、気性が荒いので有名なレイハードの極人だ。その中でも飛びぬけて武術に優れていると言われている。
あの四神一族の姉妹。四神紅陽[しがみこうよう]と四神蒼双[しがみそうそう]は今年の入学テストでレイハード部門の試験を同率トップでパスしてきたという話は有名だ。
オールトール学園に入学できるのは15歳からなので、この二人も15歳なのだろう。
二人は姉妹だからなのか分からないが顔がそっくりで、二人とも十代とは思えないどことなく鋭い印象があるが四神紅陽は燃えるような紅い髪を二つに結んでいて四神蒼双は綺麗な青い髪を短く切りそろえており、遠目からでもどっちがどっちなのかよくわかる、レイハード人だからなのかオールトール学園一年の地味な灰色の制服越しからでも分かるほど脚も手も長く理想的なバランスを誇っている、ただ胸は残念なことになっている。本当に残念なことだ。
ちなみに俺は試験自体をパスしている。なにせ裏口入学ですから。札束でちょっと頬を叩いてやれば一発なんだよハッハッハ。いや、もちろんそんなことはしていない。
「それで?お前らなんか用があってきたんじゃないのか?」
こいつらの暴力など挨拶みたいなもんだということは俺も一ヶ月で分かり始めていた。
だからといっても迷惑なことなんだが。
「あんた、あの噂を聞いた事ないかしら」と暴力姉。
「噂?」
なんか時間が空いて気づいたら書き方が変わってました・・・
これからはこんな感じになると思います