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N.N.N.  作者: セカンド
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異変

「一つ質問なんだけど、いいかしら」

ナクスは、頷く。

「結局私は貴方のことをなんて呼べばいいのかしら」

「そんなものどうとでも呼んでくれて構わないが、アイナの好きなように」

ナクスの自宅からオールトール学園へと向かう途中の通学路には、まだ誰の姿も見えない。

オールトール特有の四角い住宅が数メルトル間隔で点在している。

ナクスの家からオールトール学園は、オールトール街を一本の中央道路で繋がっている。

命中=視力のステータスさえ高ければ燦然とそびえる学園の建物が確認できるだろう。

「それじゃあ・・・・・・ご主人様とかマスターとか呼んだ方がいいのかしら、私一応奴隷なんでしょ」

アイナの言葉に足がもつれそうになり立ち止まる。

「お前は何をいってるんだ!?」

アイナの何を考えているのか分からない無表情が俺に向けられる。

「何かおかしいこといったかしら」

内心の動揺を隠すように俺は必死だった。

「当たり前だろ、ご主人様なんてまずい、まずすぎる」

「そうかしら」

「そうに決まってる」

「じゃあお兄ちゃんとか」

アイナはニヤニヤと笑いながら俺に問う。

「だだだだっだめに決まってんだろうがっ」

「どう呼べばいいのよ・・・・・・」

アイナは俺の隣を歩きながら、たちまち不機嫌そうになる。

「ナクスでいいだろ」

「つまんない」

すかさず突っ込まれる。

相変わらず何を考えているのか分からない顔でこちらへじっと見つめる。

俺のほうが背が高いので自然見上げる形になっている。

段々とめんどくさくなってくる。

「それ以外で頼む・・・・・・」

「わかった」

ぷいっと前を向き、そのまま歩いていってしまう。

いつの間にか校門の前で来ていた俺達はそのまま学園内へと入る。

ちょうど登校してくる生徒が少ない朝早くにきているので、オールトールの装飾華美な校門の周りは静かな空気に包まれていた。

校門をくぐり、すぐ傍に立っていた掲示板に目を通す。

ギルドの勧誘、モンスター討伐依頼、学園での噂、PKの情報やレアモンスターの出現場所など様々だ。

PKの情報に一通り目を通し、特に七つの大罪に関する書き込みがなかったので安堵する。

これから本格的に七つの大罪狙われることになるだろう。

アイナのこともある。

学園にまで手を出すことはないと思うが、警戒するにこしたことはない。

「何をじっと見ているの」

「ほれ、掲示板のPK欄」

「なるほどね、私に関することは見つかったかしら」

「特にはないな」

「そんなにすぐに七つの大罪を動かないと思うわ」

「その根拠は?」

「七つの大罪を中心にしたギルド『ギルティ』は別に構成員が七人しかいないわけではないわ、一人一人が自分直属の部下をもっていて一枚岩というわけでもないのよ、派閥争いも絶えないし大きくなりすぎるというのも考えものね」

「組織というものは、いつもそうだな」

俺が答えると、アイナは黙り込み、静寂が流れた。

掲示板を後にし校舎の中へと入る。微細な違和感を感じる。朝の学園はこんなにも静かだったろうか。

改めて辺りを見回すが人っ子一人いない。

いくら俺達が朝早くに学園を訪れたからといっても、静かすぎる。

「ナクスっ上!」

上階から気配。そして破壊音。

俺はアイナを抱えて廊下から玄関へと跳躍。一瞬遅れて上階の天井が破壊され、何かが姿を現す。

「モンスター!?」

俺は驚嘆の声をあげる。

戦闘外区域(ノンエンカウントエリア)であるはずの学園にモンスターが現れるというのは通常ではありえない。

あまりにも静かすぎる街、誰もいない学園、そしてこのモンスターどう考えても尋常ではない。

たった一日で何が起こったというのか。

全長5メルトルはあろうかという蜘蛛のような形状をしたモンスターは、こちらへと跳躍。

空中で目の一つからフォトンレーザーを放つ。

俺とアイナは左右へと回避。空中へと手をかざし武器を取りだす。

アイナはグラトニーを構え黒々とした蜘蛛へ振りかざす。

俺は、全長2メルトル半はある大太刀(八咫烏)を装備。

刀技系階位一位スキル『真空牙剣』を発動。大太刀が神速で袈裟斬りに振り下ろされ目に見えるほどの空気の刃を生み出す。

蜘蛛型のモンスターは、アイナのグラトニーを6本あるうちの2本の足で防ぎ、練成系階位二位のスキル『迎豪壁』を発動。

空間に歪みを作り出し真空の刃を掻き消す。

俺は、デュレイスペルとして詠唱しておいた魔法系階位三位スキル『激曝慧陣』を発動。

蜘蛛型のモンスターの周りに幾層にも描かれた魔方陣が出現。

一斉に槍型の魔法砲弾が形成、合計20もの魔方陣から一斉に放たれる。

魔法砲弾が蜘蛛型モンスターの体を貫通、硬い筋肉で装甲された皮膚を強引に引き裂き、腕を引きちぎり無数の目を切断した。

肉塊へと変わり果てた蜘蛛型モンスターはその場に崩れ落ちる。

オーバーキルをしたことによるドロップ品が勝手に俺のアイテム欄へと加えられた。

「街でモンスターに出会うなんて、何かのアトラクションか」

「そんなアトラクションがあったら私は、その立案者を殺してるところだわ」

「同感」

俺は、グラトニーを構えなおすアイナを確認する。

予想通り、ダンジョンで見る時と同じように攻撃可能カーソルの黄色マークが出現した。

「どうやら、学園内全体が一種のダンジョンとなっているようだ」

「やはりPKごときに平穏な日常は送れないってことかしら」

アイナは悲しそうに原型を留めていない蜘蛛型のモンスターを見た。

俺は、何も言葉が出なかった。

掛ける言葉が無かったわけではない。ただ今俺が何をいってもそれは陳腐な同情の言葉にしかならない。

今はこの異変を解決するほうが先決だ。

「敵が何体いるのか分からない、できるだけ固まって行動したほうがよさそうだ」

フォトンレーザーと魔法スキルでただの横穴となった玄関から校舎へと戻る。


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