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N.N.N.  作者: セカンド
14/18

襲撃

疲れる。どうしようもなくだるい。


ここは、オールトール中立国家から200キロメルトルほど離れたダンジョン迷いの森の中、俺はオールトール学園の生徒が集合していた場所から迷いの森へ入り、どんどん中心部から離れていた。


理由は、さっきからずっと自分の気配を殺そうともせず尾行を続けている奴のせいである。


こんな所で問題を起こされては、どうしもないと思いオールトール学園の生徒が戦闘している区域から後ろの誰かを離しているわけだ。


なんで俺がこんな目に逢わなければならないのだ。


昔から、こんな状況はよくある事だったが、やはりしんどい事この上ない。


森のはずれまで歩き、この辺りなら誰も来ないだろうとあたりをつけて立ち止まる。


ゆっくりと振り返ると尾行していた奴も5メルトルの間隔を空けて止まった。


姿は見えない。うっそうと繁った奇妙な形の植物が視界を限定しているせいだ。


「こんな所まで、御苦労なこった、そろそろ姿を見せてくれないか」


「・・・・・・本当だわ、この私が貴方のような下賤な輩のために、こんなところまで足を運ばなければならないなんて、屈辱だわ」


繁みから姿を現した少女はこの場に全くそぐわない黒いゴスロリのドレスに身を包んでいた。


漆黒の黒い髪を長く伸ばし、精巧な人形のように血の気ない顔、氷のように無機質で冷たい瞳。


歳は13~14くらいだろうか。


ナクスは確認するように、相手にカーソルを合わせる。


彼女の名前が表示される。


その色は赤。


レッドネームプレイヤー。


名前の色には様々な意味が存在する。


例えは一般人ならば白か黒て表示されるが、黄色などはNPCを現していたり、青色はヒーラーやプリ―ストなどの支援職を現していたりする。


赤色の意味はPK。


つまり、人を殺した経験のある者に付けられる証、一種の烙印だ。


もう一度俺は、相手の名前を確認する。


そこには、グラトニ―と表示されていた。


俺にとっては。正直この名前の方が驚きだった。


グラトニーというのは、正確には名前ではない、このゲームは元々キャラの真名を知られないようにするために自分の持っている称号などを自分の名前の代わりに表示したりできるようになっている。


グラトニ―という称号には、一つしか覚えがない。


考えうる限り最悪の展開だ。


「俺なんかに、レッドネームが一体何の用かな」


「最近こんな噂が流れているのよ、あの最強とまで謳われていたPK絶望の深淵が誰かにPKKされたってね、もちろんそれは噂にしかすぎない、だけどその戦いを見ていた者がいたのよ、彼は言ったわ、それは大地が轟き天が裂けるほどの戦いだった、勝ったのは白髪で黒衣のマルチウェポンだったとね」


「俺がそれだと?」


「私は、全国で旅をし続け、その条件に該当しそうなプレイヤーを探したわ、白髪で黒衣というだけでかなり条件は絞り込まれた、私はそいつらを殺して殺して殺し続けたわ、どれもみんなはずれ、大はずれよ!!私は疲れて

いた、それでこの学園に潜り込んでそれに該当する者がいなかったらもう諦めるつもりでいたのよ、でも私は見つけた貴方を見つけたわ、闘技場での戦いを見せてもらったわ、あれは素晴らしかった。あの遅延魔法は使用した術者が本当に出来る範囲でしか幻覚を見せることができないという制約がついているわ、その魔法の中で貴方はあの三人を相手に引けを取らなかったどころか互角以上に相手をしていた、私は騙されない、貴方にはもっと力がある、そうでしょう、ねぇ?」


こいつ・・・・・・俺を探し出すためだけに大勢の人間を殺してきたのか


「狂ってやがる」


「狂ってるですって、私たちにとってそれは褒め言葉だわ、さぁはじめましょう、貴方と私の殺戮ショ―を」


グラトニ―は虚空に手をかざし、不釣り合いなほど巨大な大鎌を取りだし軽々と右手で握った。


「私の愛しのグラトニ―で愛してあげる」


七つの大罪が暴食のグラトニ―。


触れた物全てを食らい尽くすといわれる、イリーガルウェポンの一つか。


「くっそ、やるしかねぇのか」


「フフ、楽しんでいってね、『暴食の輪舞』!!」


巨大な大鎌が、人間ではあり得ないようなスピードで振り下ろされる。


ナクスは、それを地面へ転がって避ける。


転がりながらナクスも自分の武器を取りだす、派手なエフェクトと共にずっしりとした重みが右手へと広がる。


歪な形をしたそれは、まるで生きているかのように脈動し、絶えず形状を変え続けている、辛うじて剣のような形状ではあるが、切っ先には口に牙、右手を覆っている本体には一つだけの目玉が狂ったように動きまわっている。


相手は七つの大罪。


全力でいかなければ殺されるのはこちらだ。


「貴方、それは!そんな武器を使っているなんて・・・・・・正気なの!?」


寄生型の黒死剣ブラッディブラッド。


装備中絶えず寄生主のライフを削り続ける代わりに莫大な力を与えるイリーガルウェポンの一つ。


右手に寄生したブラッディブラッドによって激痛が走りゆっくりと自分のライフが削られていく。


最高で五分。


それ以上はもたない。


「最高だわ!最高よ貴方!」


グラトニ―の大鎌の振り下ろしを真正面から受け止める。


「これほどまでに私を興奮させてくれるれる相手は、プライド以来だわ!」


大鎌が常人では目で追うことのできない速度で連続して襲いかかる。


ナクスは、それを正確に全て剣でいなしていた。


そして、連続攻撃の隙間、ほんのわずかな一瞬に剣を振る。


ブラッディブラッド限定スキル『黒死蝶』


黒死剣から伸びた無数の触手が相手を切り裂き喰らうために伸びる。


グラトニーはそれを驚異的な反射神経で切り落とす。


だが、切り落とされた触手のいくつかが空中で飛び散り、グラトニーの体に付着し、彼女の衣服を切り裂き肌に吸いついた。


みるみるうちにグラトニーのHPが削られていく。


「キャアアアアアアアア、気持ち悪い!なあにこれ!!」


必死に振り払おうとするが、無駄だ。


「そいつらは、ちょっとやそっとのことじゃ獲物を逃しはしない」

「いやっいやぁいやぁあああああああああ」


半狂乱になって、グラトニーを振りまわすがナクスにはかすりもしない。


ナクスは、右手を思い切り振りかぶりグラトニーの小さな腕から彼女の武器であるグラトニーを吹き飛ばした。


衝撃で地面へ叩きつけられるグラトニー。


さっきまでの余裕は消え去り、体中を寄生虫に蹂躙され、ゴスロリのドレスは無残に破れ、綺麗に整っていた黒髪は土にまみれ、どうにか寄生虫を体から引きはがそうと躍起になっているが、体内に喰い込んだ蟲は、そう簡単には取り除くことはできない。


「イヤぁあああああああ止めて許してっ死にたくないぃ」


俺は、冷徹な目で地面をのたうちまわるグラトニーを見下ろした。


もはや、ここにいるのは七つの大罪ではなく、無力な少女にすぎない。


「死にたくないか?」


「なんでもするからっなんでもしますっ止めてぇえええええええ」


さっきまでPKとして名をはせていた者が自分の足元にすがりつくというシチュエーションは、ナクスの嗜虐心を大いに誘った。

「それじゃあ、もう二度とPKをしないと誓うか?」

俺の問いにコクコクと頷くグラトニー。

「お前はこれから普通の少女として暮らす」

これにも頷く。

「今日からお前は俺の奴隷として生きる、誓うか?」

少女は頷こうとして、ハッとしたかのような止める、そして俺を憎悪と殺意のこもった目で見上げる。

「誓えないのか・・・・・・残念だ」

俺は、その場から立ち去ろうとする。

「まっ・・・・・・まって誓う!誓うからっ!!」

涙を流し、懇願するグラトニー。

見るとHPは既に二割を切っている。

俺は自分でも残虐な笑みが浮かんでいるのが分かった。

システム画面を開きアイテム欄から黒い革製の首輪を取りだす。

その首輪をグラトニーの細い首に巻きつける。

「戻れブラッディブラッド」

ギリギリ四分。

装備を解除した右手は跡かたも無く消え去って手首からは骨と血まみれの肉が見えている。

もう少し粘られていたら俺が危なかったな。

グラトニーは激痛と心労で気を失っていた。

ナクスは消え去った右手を治療するために最高級ポーションと生命の粉塵を調合しながらヒールをかけ、その場に座り込んだ。

治療が終わり、グラトニーの傷を回復させたところで、どこかで実習終了の合図である鐘が鳴った音を聞いた。


ナクスさんいつから鬼畜キャラになったんだっけ

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