目覚め3
ザリスと名乗る女性はイシリアスの手を取った
「少年。走れるか?」
「はい。」
唾を飲み込んだイシリアスはそう答えた。
今からこの部屋を出てあの怪物から逃げるんだ。
覚悟は出来てないがやるしかない。
やるんだ。そうだやるんだ。
「いいか。私に付いて来い。そしてこの手を必ず離すな。」
「はい。」
ザリスは腰に付けたまま無線機をオンにした。
「3…2…1…行くぞ。」
その声には相変わらず声色はなく、一定で抑揚がない。
「了解」
無線機の方から低い男の声がすると同時に2人は怪物が行った方の逆側へ走り出した。
一直線の廊下を怪物を背に全速力で走り抜ける。
その間も銃声が鳴り響く。
脳裏に蘇るあの異質な気配と異形。
眼の前を横切る確実に死を与える存在。
背筋が凍り付いたあの時間を思い出した。
するとイシリアスは無意識に振り返っていた。
ネオ・イシリアス(大丈夫だ。奴は追ってきていない。このまま走り切れば逃げ切れる。)
僅かな希望と安心を得て、再び前をゆっくりと向いた。
首を回転させ、それに従い頭が首に付いていく。
最後に瞳を前に向けた時、ザリスの背が眼の前で止まっていた。
「どうしたんですか?早く逃げ!」
言葉を最後まで出さなくても足を止めた理由が分かった。
鍛え上げられた背中と腕の間から見えた。
奴だ。あの化け物だ。
奴の前足の先端が廊下の先の曲がり角から見えている。
そうか銃撃と戦闘の音で足音が聞こえなかったんだ。
駄目だ。これは死ぬ。あと少しで気付かれて殺される。
ザリス「いいか少年。私の後ろに隠れていろ。私が殺られたら隙を見て走り抜けるんだ。」
奴の頭部が表れた。
行進を止めて、戦闘態勢になった。
奴は既にこちらに気付いているようだ。
化け物は大きな前足を振り上げて勢いよくザリスに振りかざした。
ズドンッ!
ザリスは両腕をクロスして重い一撃を受け止めた。
両足が地面にめり込んでいる。だが背中の筋肉が浮き上がるほど、力強く踏ん張っている。
「アハハッ!軽いなぁ!」
見栄だ。明らかに無理をしている
「お、おらぁ!!」
腕の筋肉が浮き上がり、前足を跳ね返した。
イシリアスは観葉植物に隠れてその様子を伺っていた。
ザリスは前足を跳ね返されてのけぞった怪物の頭部へ右ストレートを喰らわせた。
ドゴッ!
生身の人間のパンチの音ではなかった。
そのまま怪物は頭を壁にめり込ませた。
ザリス「はぁ!…はぁ!…はぁ…」
息がきれた。最大限の力を込めた一撃だったんだ。
たが、怪物はムクリと起き上がり、頭部を壁から取り出した。
ザリス「まずい!」
怪物の視線の先には貧弱そうな少年が居た。




