青いボトルの航海
レオナルドは車に乗って、シチリア島北部パレルモから北アフリカ大陸が見渡せる場所、マルサラにやってきた。
マルサラという街は紀元前から存在する。レオナルドはワインを堪能しにきた。
朝を優雅な時間にするためのコーヒー。ワインは対照的に比較的1日の終わりを優雅な時間にするためのものだ。
全く違う飲み物ではあるが、どちらも時間を優雅にするという点で共通点があり、レオナルドはお酒を普段から非常に気に入っている。
早速街を歩いているとお昼から楽しそうにお酒を飲み明かしているおじさんたちが目に入った。
レオナルド「ああ、早速お昼からワインを堪能してるじゃないか。」
レオナルドは喉の奥でゴクリとした。こちらの喉もすでにワインを欲しがっている。早く満たしてあげねば。夜なんて待てない。だって私は今休暇注なんだから。
レオナルド「ワイン一杯ください。」
店員さん「どのワインにする?」
レオナルド「何がおすすめですか?」
店員さん「あんた観光客かい?まずはマルサラワインを飲みな。」
レオナルド「マルサラワインか。お願いします。」
マルサラワインとは、白ワインを基調に、ブランデーなどを加えてアルコール度数を高めたものだ。
席に座って待つことにした。そうすると、隣のテーブルに座っていたおじさんたちから声をかけられた。
おじさん「やぁ、君は観光客なんだって?」
レオナルド「はい。休暇を活用して、こちらに遊びにきています。」
おじさん「そうなのか。楽しんでけよ。」
レオナルド「はい。ありがとうございます。」
おじさん「マルサラワインはうめーぞ。いろんな香りを楽しめる。木やキャラメル、スパイスやバニラ。まさに香りの宝庫だな。」
レオナルド「世界4大酒精強化ワインの一つですもんね。それぐらいは知っています。」
おじさん「そうだ。あんた、まだ食事してないだろ?食前にマラサラワインを飲むなら辛口がおすすめだぜ。」
レオナルド「そうですか。なら。」
レオナルドは大きな声で店員さんを呼んだ。
レオナルド「ヘーイ!」
店員さん「なんでしょうか?」
レオナルド「辛口のワインに変更してもらえますか?食前におすすめなのは辛口をお聞きしまして。」
店員さん「かしこまりました。」
レオナルドは楽しみで仕方なかった。観光地で昼間からワインを嗜むことができるのは至福のひとときとしか思えないからだ。
店員さん「どうぞ。辛口です。」
レオナルド「どうもありがとう。」
レオナルドは早速一口いただき、喉の感覚に衝撃が走った。さまざまな香りやアルコールが身体中を駆け巡った。
レオナルド「おいしい!!」
思わず声が大きくでてしまった。なんて美味しいワインなんだ。ティラミスに入っているとかは知っていたが、実際に飲んだのは初めてだった。
おじさん「そうだろ?マルサラワイン、特にこのワインはヴァージン・レゼルヴァで完成するまでに10年以上はかかる。完成する頃には待った甲斐が合あったと感じるほどの香りの豊かさやおいしさを感じることができるんだよ。あんたはこのワインに出会えたから幸せになるぞ。」
レオナルド「そこまで言うんですね。じゃ、本当に僕は幸せ者だ。」
レオナルドはマルサラワインを堪能しながら、おじさんたちとの会話を楽しんだ。これが旅の醍醐味。出会った人と日常話をして、自分が気づいていないことを聞くことで僕の好奇心は最高点に達する。人との出会いが楽しいのは、話すことで好奇心の山頂に到達することができるからだ。
レオナルド「チャーオ。」
レオナルドはおじさんたちと別れて、ティレニア海から北アフリカ最北端のチュニジア・チュニスが見渡せる場所までやってきた。
レオナルド「ここでコーヒーを飲もう。」
海岸の近くにあったカフェに訪れ、コーヒーをブルーボトルに入れてもらった。香りが豊かなエスプレッソと温かい牛乳をたくさん注いでもらい、ゆっくりと海を眺めながら飲むことにした。
レオナルド「あれがアフリカ大陸の最北端、チュニジアチュニスか。」
ヨーロッパ大陸から少し離れた場所に大きなアフリカ大陸が見えていることにレオナルドは驚いた。普段は特に意識することはない大陸間の距離に気付き、改めてヨーロッパとアフリカが近い場所にあることを再認識した。
レオナルド「いつか僕もアフリカに遊びに行ってみたいな。どんな暮らしをしているのか気になるね。」
レオナルドは海岸の堤防の上でコーヒーを飲んでいた。この日は日が沈むに掛けて風が強くなっていた。海の水は大きな波を立てていた。
レオナルドは日が沈んできたのもあり、本日宿泊予定のホテルに宿泊しようと立つことにした。
レオナルド「そろそろ帰ろうか。日も沈んだことだし。」
レオナルドが振り返ると突然一人の男性にぶつかった。海岸堤防のギリギリにいたために間一髪のところで海に落ちることはなかった。
男性「すまない!!怪我はないか!?」
レオナルド「大丈夫です!なんとか落ちずに済みました。」
レオナルドが男性にひっぱられて起き上がった。しかし、先ほどまで右手に持っていたブルーボトルがない。
レオナルド「し、しまった!ブルーボトルは!?」
男性も一緒になってスマホの灯りをつけ、周りを探した。海にも灯りをつけみてみたがどこにもないようだ。
レオナルド「きっと海の中だな。でも今日は波がかなり立っている。これは流されているに違いないな。」
男性「すまない。大事なボトルだったよな。」
レオナルド「いえいえ!家で製造しているボトルなので、またボトルを製造して利用する予定です。」
男性「そうか。お店の名前教えてくれ。またベネチアに行った時にお店によってボトルを買うよ。せっかく出会ったのだしね。」
レオナルド「本当ですか!?ぜひうちに寄ってください!サービスしますんで。」