風吹く草原へ
「全くっ!!どうしてっ!!こうなるんですか!!」
蘆屋堂に甲高い怒声が響いた。
絵に描いたようなクールビューティな小鳥遊が、キレていた。それはもう凄まじいの一言だ。普段大人しい人間だけは怒らせては駄目だ、という言葉は決して間違いではない。それが良く分かった。
「ほやさかい兄貴が上手い事してくれたやん?やで全然どもないやんかぁ♪なぁ、兄貴?」
「オゥ。我ながら完璧だったと思うけどな、もっとやっとく?静奈ちゃん」
「もう充分です!!」
軽い感じでケラケラ笑い、そんなやり取りをする二人。それをジト目で眺めながら小鳥遊ははぁ~、と長い溜息をついた。
「そんなにカリカリしてたら折角の美人さんが台無しやで?…おっ、今マキオンお前が喋ってる言葉上手く使えたんじゃね?」
「全然ちゃうやん。『やで』だけ使てもあっちの喋り方にならへんて。もっとこうやな…」
「…はぁ、もう勝手にやってて下さい…」
小鳥遊は蟀谷を押さえながらもう何度目かの頭痛薬を飲んだ。頭痛持ちの人は何度か目にした事があるがそれでも飲み過ぎだろう。少し心配になってしまう。
そんな小鳥遊を尻目に何だかどうでもいい会話を続ける真喜雄と彼が兄貴と呼ぶ竜胆多喜雄―――本当の名前はタキオンというそうだが、彼ら二人を眺めながら香織は檸檬の香りがする水を一口飲んだ。
二人とも、兄弟と言うだけあってそっくりな顔付きで、背格好も殆ど一緒。違いと言えば多喜雄の方が髪が長いくらい…あ、あと西の言葉かそうでないくらいか。
しかし、この二人のネーミングセンスって…。簡単な話本名から『ン』を抜いただけ、というなんとも言えない安直さ。そういえば、と愛流も独特なセンスをしていた事を思い出す。ただあの子の場合自分のセンスの無さを分かっていただけまだマシなのだが。
ともあれ、マスターから依頼された二人を見つける事には成功したのだ。これで何歩か愛流のいるという異世界に近付いた事になる。
だが、異世界への道を開くのに強力な魔術同士の衝突が必要との事だが、一体マスターはどうするつもりなのだろう。
確かに真喜雄のあの姿を見た後だ。マスターが使った物より遥かに強力な魔術をあの二人が使えるのは容易に想像できる。
しかし、言ってもここは都会のど真ん中。そんな事をすれば嫌でもとんでもない騒ぎになるだろう。いや、騒ぎどころではないはずだ。
マスターの考えがまだ把握出来ていない。
それは漠然とした不安。
きっと香織と同じく市山もそうなのだろう。何かを考えているのだろうか、さっきからずっと腕組みをしたまま窓の外を眺めている。
香織もまた視線を手元の手帳に戻し、状況を整理する事にする。
まず、これまでの流れだ。
あの日、魔方陣が突然現れ愛流が消えた。そして社の方針として愛流捜索が決定し、その場にいた私達がその任についた。
社長の手回しにより、私たちは小鳥遊とともに行動する事となり、その小鳥遊の紹介によりマスターこと蘆屋満武と接触。
彼に異世界と魔術について教わり、ついで異世界への道を開く為の鍵となる二人との接触の依頼。
そしてその二人たる真喜雄と多喜雄をここに連れてきた。
現状、こんな感じだ。
そう言えば、余りの展開の速さに有耶無耶になってはいたが、あの時真喜雄が気になる事を言っていた。
『…見つけた…やっと、やっとや!!見つけた!!…今、この時代に転生なされてたんか!!この雰囲気、この顔…間違いない…!!…マキオンは、マキオンはずっと待っておりました…姉さん…いや、宵闇の魔女・エル様…!!』
『知っているも何も!!俺と兄貴はガキん時にエル様の元で見習いをしてたんや!!エル様が魂のみこっちに移って転生する道を選ばれたから俺と兄貴はエル様を追っかけてこっちに来たってぇのに、ちくしょう、転生されたのに気付けなかった…』
『エル様の復活とあっちへの帰還や!!』
矢継ぎ早に告げられた彼の言葉。
この時代への転生、帰還。そして宵闇の魔女なる謎の呼び名と愛流への尊称。
如何せん情報が多すぎる。どういう事なのかさっぱり見えてこない。
言葉通り受け取るならば愛流は前世、異世界で生きていた。
そしてこちらの世界に魂のみが移動して、鎌柄愛流として転生をした。
復活と帰還。
つまりは偶然や他意による異世界転移ではなく、今回の件は転生した後再び異世界に戻る事を愛流自身が決めていた、という風に考えられる。
あの魔方陣は誰かが意図的に魔術を使った訳ではなく、前世の愛流自身が予め使っていたのだ。
俄に頭痛を感じた。魔術や異世界だけでも既にお腹がいっぱいなのに、ここに来て前世まで絡んできたのだ。最早オカルトなんて言葉は疾うの昔に裸足で逃げ出している。
「皆さん、お待たせしました。自慢の美味しい珈琲が入りましたよ」
暖かな湯気と芳ばしい香りを引き連れて、穏やかなマスターの声が頭を抱える香織に降り注いだ。
「お、蘆屋のおっちゃん♪めっちゃええ匂いやな!なぁ、兄貴?」
「オゥ。お前も珈琲の良さが分かったか。大人になったじゃねぇか」
「当たり前やん。俺は違いの分かる男やで?。あ、おっちゃん?ミルクと砂糖ぎょうさん置いといてや♪」
分かっていますよ、とマスターは真喜雄の前に珈琲と共に優に三杯分はあるであろうミルクと角砂糖が詰め込まれた瓶を並べた。
ドボドボと注がれるミルクと、次々に放り込まれる角砂糖。最早あれは珈琲ではなく珈琲風味の別の何かだ。一体どの辺が大人なのか。
軽く胸焼けを覚えつつ、香織も珈琲に口をつけた。
仄かなバニラの香りが鼻腔を擽る。自然と肩の力が抜けるのを感じた。
「少しはリラックス出来ましたかな?露草さん」
「ええ、マスター。前に戴いたものとはまた違いますね」
「よくお分かりになりましたね。今回のは今日に合わせた特別ブレンド。こだわり抜いた一品ですよ」
そう言ってマスターは微笑んだ。大人ってのはこういう人の事を言うんだよ、真喜雄くん。
「マスター。依頼通り二人を連れてきたけど、これから一体どうするんですか?」
ずっと黙っていた市川が、行き成り核心に迫った。
その顔は真剣そのもの。普段…いや、愛流の前では絶対見せない、男の顔。
「そうですね。ではそろそろですね。舞台は整いました。多喜雄くん、真喜雄くん。魔力の具合は如何ですかな?」
「ん?そやなぁ…こっちは魔力の回復遅いかんなぁ。ほんでも魔術はいつでもぶっ放せるで。兄貴は?」
「問題ねーぞ。最近は竜化も魔術もそんなに使ってねーからな。それどころか上級も加減しねーと駄目だがようやく使えるようになったぞ」
「マジで!?兄貴スゲーやん!!上級覚えてんや!!前会うた時は出来んかったやん!?」
「最近だ。ただエル様には及ばねーがな」
「エル様と比べんのはあかんて。エル様んあれは別次元や」
「ははっ。違ーねぇわ。無詠唱どころか術名まで省いて上級ぶっ放しまくったのには流石に見てるだけで肝が冷えたしな」
「あー、あん時やな!!まだ俺も兄貴もガキやったけど、あれは死ぬかと思うたわ」
周囲を置いてけぼりにして二人だけの会話が進む。上級という言葉の意味する所はやはり魔術の威力の話であろうか。
「二人とも、聞きたいんだけどさ。愛流ってそんなに凄いの?」
二人に聞いてみる。どうもいまいちピンとこない。
確かに愛流は優秀な子だ。ドジだけど仕事は早いし、切り替えも早い。何より人の気持ちに寄り添って物を考えられる。
だけど二人が言う『宵闇の魔女・エル』と愛流がどうしても結びつかない。
それはただ単純に魔女という言葉に違和感を覚えているだけなのか。それともあの優しい愛流がそんな破壊的な魔術を使う事に驚愕しているだけなのか。
「凄いなんてもんやあらへんで!!あの混沌期を破壊で終わらせたんやしな」
「オゥ…翼人族に獣人族や俺たち竜族どころか魔獣に至るまであらゆる魔族や精霊達をその支配下に置いていらっしゃったからな。万の大軍勢の頂点に君臨するあのお姿は今思い出してもシビれるわ」
「お、『そこにシビれる!あこがれるぅ!』てやつ!?」
ビッと音が鳴りそうな勢いで真喜雄が多喜雄を両手で指差した。ちょうど芸能人がやってたようなあんな感じのポーズで。この二人の会話は突然ネタに走ったりと兎に角忙しない。
「まぁそんなトコだ。それに…誰よりも優しくて、誰よりも失う事を嫌ってた」
「せやな。やさかい皆エル様についていっとった。やからはよ向こう行かんとあかんねん」
そして二人は急に真面目な顔付きになった。
誰よりも優しい。それは香織自身が知る愛流の本質。
何をそんなに違和感を覚えていたのか。
そう。愛流は愛流なのだ。それは転生前であろうが転生後であろうが変わらない事実。
きっと向こうでもその優しさで、自分の事は横に置いて周りの為に奔走してるだろう。
だから。
私が迎えに行かないと。
「では多喜雄くん。あの扉を開いてくれますかな?」
「オゥ、任せとけ。んじゃテメーら、ちょっと動くんじゃねーぞ」
多喜雄が椅子から立ち上がった。さっきまでの巫山戯ていた空気は一切纏わずに。
「数多に煌めく恵みの雫よ。育む枝葉の深緑よ。彼は望み、彼は願う。悠久の風を抱きし緑の賢者、蠢く大地の白き門。四方の精は祝福を与えん。…レイバノス・フィスベルテ・クルスニハ・ゼニオン・フェギレイ・セイスフェイ…」
低い、唸るような声と共にあの時見たものとは違う、緑の光に溢れた魔方陣が彼の足元を中心に広がる。
それは森の中にいるようでいて、闇の中にいるようでいて、光の中にいるような不思議な感覚。
「開け…。そして我らを導け…。エーテルコリドール…!!」
言葉を切ったその瞬間、緑の光が明滅する。余りの光の激しさに、思わず目を固く閉じる。
瞼を刺す光が収まるのを感じ、恐る恐る目を見開いたそこは。
白い部屋。
何処までも続く、何もない白い場所。
慌てて廻りを見廻すと、そこには蘆屋堂にいた面々の姿。少しだけ、ホッとする。
「…ここ、は?」
ついて出たのはその一言だけだった。あの小鳥遊ですら、驚愕の表情が顔にこびりついている。
「皆様、ようこそ。私の実験室へ。多喜雄くん、有難う御座いました」
にこやかに微笑むマスターに向かい、多喜雄がサムズアップで応える。
「久しぶりにやったけど、やっぱ精霊魔術は難しいわ。てか真喜雄、オメーも覚えろ」
「やなこった。あれはドリュアデスのねぇさん達の本領やん?エル様もこれだけはどうしても使えへん、て言うてたし」
「エル様は別だ。なん「ちょっと二人とも!!それにマスターも!!」」
延々と続く二人の会話に小鳥遊が割って入った。
「どういう事なのか説明して下さい!!竜胆の二人には散々振り回されましたが、マスターまで説明無しに!!」
「あぁ、申し訳ない。静奈さん。ええ、ではご説明させて頂きましょう」
それからマスターの口からこの場所について説明がなされた。
曰く、この場所は八百年程前、マスターの一族が魔術の研究と練習を行う為、真喜雄と多喜雄の助力を得て作った疑似空間との事。
曰く、普段マスター個人が出入りする分には魔術を使う必要が無いが、今回のように多人数で入室する場合は精霊魔術なるものを行使しなければいけなかったとの事。
曰く、その精霊魔術の使い手がこの世界において多喜雄以外に存在しなかった、との事。
そして二人は強大な力と魔力を持った竜族。強力な魔術を使うにはこれ以上の存在はこの世界側にはいない、というのが二人との接触をとった最大の理由であった。
「ここは疑似空間とはいえ大地の気脈も問題無く通っています。ここならば、どんなに強力な魔術を行使しても問題御座いません」
成る程。確かにこんな何処まで続いているか分からない様な何も無い場所なら、騒ぎや被害を気にする事無く魔術を扱える。
「昔、ドイツの化学者が実験中偶然時空の揺らぎを観測したそうです。極わずかの間、研究室の卓上の空間に拳大の穴が開いた、と。その穴の向こう側には草原が見えた、と」
マスターが続ける。
「驚いた化学者は同様の実験を繰り返した。しかし、観測出来たのは僅か二回。学会どころか世界を揺るがす発見には違いないがついぞ証明する事は叶わず、論文は封印された。そしてある時その化学者は日本に訪れました。そして先々代と偶然出会った」
ちょっと待って。なんだか嫌な予感がする。
「先々代とその化学者は意気投合し、彼をこの部屋に案内しました。多喜雄くんと真喜雄くんにも同席して頂いたそうです」
「オゥ。そう言えばそんな事があったか」
「あん時もおんなし様に向こうへの穴開いたかいな?確かあのおっちゃんの名前は…」
「ストーップっ!!それ以上は言っちゃ駄目な気がする!!」
慌てて香織は制止をかけた。きっと色々と駄目だろう。頭の中に浮かびかけたあの人のシルエットを香織は頭を振って掻き消した。
「まぁ、あの方の事はこの辺でいいでしょう。とにかく先々代とその化学者はこの部屋で次元の揺らぎの開き方を確立させた。それを今から行います。真喜雄くん、多喜男くん。では」
「オゥ…やるか、真喜雄」
「せやな。やっとエル様に会える」
そう言って二人は間隔をとって向かい合った。
真剣な表情。二人とも、ハッとする程目付きが鋭くなる。
空気が変わる。
…ちょっと待って。
マスターは威力の高い魔術のぶつかりあいと言っていた。それってつまり…。
「っ、ちょっと!!二人ともまさか…!?」
「英雄に謳う讃美の鬨、大気の水は震えを止める。遍く夜を統べし凍てつく乙女。澄んだ無垢なる結晶を捧げん。穿くは異形、屠るは外道、夢魔の叫びに今応えん」
「黒鉄の古城、血色の黄昏。その光、大気に傷を、大地に灼熱の祝福を。目覚めは終焉、沸き立つ奔流、熱波の悪夢、業火の演舞。灰燼の園に咲くは夢幻」
香織の静止は届かなかった。同時に二人は左手の指先で空中に何かを描いた後、マスターが見せた魔術よりも長い言葉を話した。
マスターが以前教えてくれた。これは魔術を使う為の言霊というものだ。
空中に切った印で大地の気脈という存在にアクセスし、魔力を乗せた言霊で魔方陣を描きそれによって大地の気脈を吸い上げ、魔術を具現化する。
その為の言霊。
言霊の詠唱は魔術の質を高める。高度な魔術ほど威力に比例して言霊は長くなる。
中にはそれを身体に刻み付けて詠唱を破棄する者もいるという。そう、無詠唱は高等技術という事になる。
きっとこの二人だってやろうと思えば出来るのだろう。それを敢えてせず、正式な方法で言霊を詠唱した。
と、いう事はだ。
真喜雄の掲げた掌に青い光の魔方陣が、多喜雄に橙色は魔方陣がそれぞれ現れる。
「クリスタル・ゲイボルグ!!」
「トワイライト・ゲージ!!」
魔方陣から現れる透き通る氷塊の槍と無数に現れる炎の揺らめき。
その相反する二つの魔術がぶつかり合う。氷塊の槍がぶつかった瞬間千を超える針になり、少しだけ後退した後更に速度を増してお互いの中心点に飛翔する。
対する無数の炎は氷の針を包み込む様に互いが繋がりあい、やがて炎の檻を形成し収縮してゆく。
凄まじい衝撃波と熱波を孕んだ水蒸気が瀑布のように辺りを蹂躙してゆく。これが威力の高い魔術のぶつかり合い!!こんなもの、外では絶対出来はしない!!
吹きすさぶ熱風に両腕で顔を守る…が風が来ない?それどころか全く熱くない!?頭の中がハテナマークでいっぱいの香織は周りを見渡す。同様の表情を浮かべる市山と小鳥遊。それとは対照的に一切の動揺を見せないマスター。
「あぁ、皆さん、心配御座いませんよ。多喜雄くんが前もって防御魔術をかけておいてくれていますからね」
見れば青い八角形の壁が香織達と真喜雄達の間に浮遊し、衝撃波と熱風を逸らしてくれていた。
「「「そう言う事は先に言って下さい!!」」」
「失礼しました。ですが、そろそろですよ?」
軽くいなされてしまう。が、マスターの言葉に一同は再び二人の中心点を凝視する。
そこにあるのは青と赤が凝縮された荒れ狂う光の渦。
普通、青と赤が混ざると紫になる所をそうはならず、ただただ二つの光が暴れながら一つになろうとしている。
一同が固唾を呑みながら見守る中、遂にその時は訪れる。
光の渦のその中心点、そこに現れる小さな揺らぎ。そして徐々にそれは大きくなり、向こう側の景色が露わになってゆく。
丁度大人の頭程の穴の向こう。そこから見える草原。
繋がった。
「兄貴!!」
「オゥ…!!」
二人が叫ぶ。叫ぶと同時に二人はすでに穴の両脇に移っていた。両腕が爪と鱗を備えた竜のそれに変わっている。
「「…うぅぅぅぅぉぉおおおぉぉぉぉおあああ!!」」
怒声に似た二人の唸り声。いや、咆哮と言うのが正解なのだろう。声だけで白い空間が震える。両方の竜の腕で二人が両脇から引っ張り拡げてゆく。時折スパークの様な青白い光が走り、穴の規模が広がってゆく。
「「がぁぁぁぁあ!!」」
穴が、完全に開いた。規模にして、大人が頭を屈めれば通れるサイズの穴。
あの向こうが、異世界。
「はぁ…はぁ…、さ、早よ行くで。いつまでも維持はでけへん」
「オゥ…。抑えててやっから姉ちゃん達、早く通れ…。俺と真喜雄は最後に通る」
二人に急かされるまま、香織は穴を潜った。
吹き抜ける、風。
何処までも広がる草原。
時折聴こえる鳥の声。
行った事はないが、モンゴルの大草原によく似たそんな光景。
自分達の世界と何ら変わらない。
だけど、どこか違う。
言葉には出来ない何かの気配。例えるなら、そう。これまでに目にした魔術の雰囲気。それを肌にうっすら感じる。
これが。ここが異世界。
「無事、全員通れたな」
背後から多喜雄の声がした。振り向くと、そこには蘆屋にいた面々。そして、今し方通った穴。既にそれは拳大まで収縮していた。
穴が完全に閉じる。
そう、辿り着いたのだ。愛流のいる場所に。やっと。
「え~と、あのさ」
市山が口を開いた。そう、少しだけ困った顔をしながら。
「来たのは良いけど、これ…どうすんの?何も準備してないし、会社に報告は…出来ないな」
あ。
香織の思考が急激に廻り巡る。目に映るのは大草原。それ以外は…何も無い。そう。荷物すら、だ。
「「あ゛ぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
香織と、小鳥遊の悲痛な叫びが草原に木霊した。
大変長々とお待たせしました。いつも有難う御座います。
真喜雄と多喜雄の会話は楽しく書けました。二人は一応イメージキャラがいます。それ通りになってるのか…まぁ、イメージと言う事で(笑)
とうとう香織さん御一行様異世界到着です。さてどう動いてくれるか。そしてエルさん達の戦はどうなるか。
これからもどうぞ宜しくお願い致します。




