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魔女の異世界戦国奇譚  作者: 浅月
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挑発


「宵闇の…魔女か?」


「そうだよ。私はエル。宵闇の魔女・エル」


 グラムハルトとの距離少し手前で止まった私は、にっこりと笑いそう答えた。


 風尽は、まだ構えない。


 グラムハルトの魔力の高まりを感じる。


 獣人族は元来、魔術には疎い。でも魔族ゆえに魔力は持つ。


 じゃあその魔力は何処に使っているのか。


 身体強化。この一点なんだ。


 例えばラティスちゃんはその魔力の大半を脚力に使っている。


 だから尋常じゃないくらいに脚が速い。


 グラムハルトは恐らくバランスよく身体強化をするタイプ。


 きっとそれぞれタイプがあって、グラムハルトのやり方なんて極々ありふれているのだろう。


 だけどグラムハルトには普通の獣人とは違う所がある。


 それは魔力の総量。


 他の獣人に比べて高い魔力を持っているんだ。


 だから渦雷刃なんて魔霊神器を扱える。扱えてしまうんだ。


 獣人族どころじゃない。どんな魔族でも本当はあんなもの使える訳がない。使えちゃいけない。


 あれはアイツが使ってた物だ。


 厳重に封印をした筈なのにそれが解けているのが腑に落ちないけど。


 でも、これはあの時壊さなかった私の責任でもある。


 だからアウベルスの代表としてグラムハルトと闘うのとは別に、私個人としても闘う理由があるんだ。


「ふ…ふははははっ!!現れてくれたか!!宵闇の魔女よ。…よくぞ予の魔術兵団を潰してくれた!!よくぞ予の覇道を邪魔してくれた!!」


 表情こそ笑っていても、誰が見ても分かるくらいグラムハルトは怒っていた。


 そう、彼は今怒っている。だけどまだだ。


 まだ理性が残っている。


 だから。




 これからが本番。




「だがそんな事はどうでも良い!!我が覇道の邪魔をしようと関係ない!!我が覇道は終わらない!!宵闇の魔女諸共貴様らを狩り尽くし、これまで通り歩を進めるまで」


 グラムハルトが初めて剣技の型らしい構えをとった。まるで今にも襲いかかかろうとする野獣のような、独特の構え。


 ピッタリと、渦雷刃の切っ先を私に向ける。


「死ね、魔女よ」


 グラムハルトが飛んだ。刃を大きく振り被り、重力の力を借りた一撃で私を一刀両断する為に。


 だけどね。そんな怒りに任せた攻撃なんて私には通用しないよ。


 私の周囲に風が集まる。風は勢いよく渦巻いて、計六本の竜巻を作り出す。


 そう。トゥラちゃんが使ったのと同じ魔術だ。


 竜巻に阻まれて、グラムハルトは元いた場所まで吹き飛ばされる。


 見る見る内にその表情が抑えていた怒りに染まる。意図的な私の攻撃に彼の自尊心は深く傷付いたみたい。その証拠にもうグラムハルトは平常心を保てていない。


 完成だ。


 私はグラムハルトとの距離を一気に詰め、風尽の石突で鳩尾を一突きにした。


「ぐっ」


 ギリギリのタイミングで左に避けたグラムハルト。


 だけど私は風尽の柄を横に薙いで、彼の脇を打ち据えた。


 痛みにグラムハルトは顔を歪ませる。


「舐め…るなぁ!!」


 吹き飛ばされかけるも強化された両足で踏ん張り、何とか耐えた様子。


 そのまま片脚を軸にして回転し、横薙ぎに渦雷刃を振るってきた。


 ギィィィイン!!


 空いた掌に展開した防御魔術レジスト・ウォールで渦雷刃を受け止めた。


 バチバチと音を立てて激しい火花が飛び散る。


 なおも魔力を込めて白龍を刃に纏わせようとする。


 このまま押し切るつもりみたい。


 だけど私はそのままの姿勢でピクリともしない。


 重さなんて全然感じていない。


 端から見たら、きっと異様な光景。


 だけど、全然重くないんだ。


 攻撃も、言葉も。


「無駄だよ、グラムハルト」


 にっこりと、また笑った。


 本当は、こんなやり方は好きじゃない。


 だけど、私は宵闇の魔女。


 皆の、姫なんだ。


 ここは戦国。乱世の世界。


 強い人が、強い国が上に立つ。


 強さが、正義。


 だけどね。


 この人はやり過ぎた。


 覇道?そんなもの、私は知らない。


 だからね、グラムハルト。


アウベルスには勝てない!!」


 瞬時に展開される魔方陣。


 現れるのは無数の雷鎚の槍。


 穂先がグラムハルトを捕らえる。


「行け…!!」


 私の言葉に反応し、槍が弾丸のように飛び出した。


「ぐっ…ぐおぉぉああああ!!」


 至近距離からの攻撃に、彼の絶叫が辺りに響いた。


 激しい閃光に明滅する戦場。


 光は中々収まらない。


 絶叫だけが辺りを支配する。


 そして、唐突に静寂が訪れた。


 閃光が収まったそこには両膝をつき口から白煙を上げる、白目を剥いたグラムハルト。


 覇王なんて言葉がとても当て嵌まらない無残な姿。


「………っ、はぁ!!はぁ!!はぁ!!」


 でも流石に渦雷尽を扱うだけはある。気絶していたのはほんの数秒だった。


「ゆ、許さん…!!許さんぞ…!!許さんぞぉぉぉおあぁぁぁあああ!!」



 

 覇王を名乗る獣の咆哮が辺りに響いた。



 

 


 


 

 

 

いつもありがとうございます。最新話更新です。


祝、3週連続投稿(笑)


エルさん煽りまくり、暴れまくり。エルさんちょっと辛そうですが書いてる本人は割とノリノリでした(笑)


いよいよ獣人編も佳境です。後何話でいける事やら。どうかお付き合い頂ければ幸いです。


これからも宜しくお願い致します。

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