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魔女の異世界戦国奇譚  作者: 浅月
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晴天の雷鳴


「ゼラハムさん、これで良かったんだね」


「ええ、魔女陛下。間違いなく奴はこう動くでしょう」


 ガリウス城内の一角、簡素な机が置かれた小さな部屋で私、トキワくん、ゼラハムさんの三人は軍議を続けていた。


 これで良かった。そう、さっきバルドスさん達を交えての軍議の内容。私達アウベルス内で考えていた軍議とはちょっとだけ内容が違うんだ。


「嘘は言っておらんしな、姫。そう気負うな」


 トキワくんの言葉にそうだね、と答える。


 実際、今の段階では私たちの入城は気付かれていない。でも打って出ない事できっとグラムハルトはすぐに気付く。当然、私の魔術を警戒しているだろうし、すぐに魔術兵団は使わないだろう。


 だからゼラハムさんは考えた。グラムハルトは自ら軍の最前線に立つ、て。


 グラムハルトの魔霊神器、渦雷刃は私の昔の記憶の中にもある強力な代物。よくあれを獣人族の身で扱えるものだな、て思う。


 グラムハルトの目的は私と戦う事。私を誘い出す為あえて最前線に出て渦雷刃で大暴れをするはずだ。


 だけどここで私は出ない。


 うぅん、それだと語弊がある。


 グラムハルトはトキワくんに任せて私は先に背後の魔術兵団を対処する。


 だから、嘘は言っていない。


 なんでこんな回りくどい事したのか。


 それは一つは私がグラムハルトの相手をしている間に魔術兵団を使わせない為。


 そしてもう一つは城内の士気を保つ為。


 彼らにとってグラムハルトは恐怖の対象。いきなりグラムハルトが出てくる、て伝えたらきっと皆萎縮しちゃう。


 だからそこまで読んでる事は伏せて戦の流れの概要だけを伝えたんだ。


「このようにこちらが動くと奴は必ず怒りを顕にする。怒りは冷静な判断を失わさせる。それが狙い目。そうだろう、ゼラハム公」


「うむ。さすればもう全てが整う」


 三人が囲む卓上の地図が完成するんだ。











「…驚いたな。宵闇の魔女が出てくるとおもってみれば現れたのは三下か。ハーネストといったか。片田舎の亡国の小倅如きが何用だ」


「言ってくれるな。三下かどうかは刃を交えて判断すればよかろう」


 トキワは言葉を発したその直後、姿を消した。


 いや、違う。消えたと思わせる程の速度でグラムハルトとの距離を詰めたのだ。


 二刀による袈裟斬りがグラムハルトに襲いかかる。それはまるで獲物を捕まえんとする禽鳥きんちょうの如く。


 しかしグラムハルトもまた、その一撃を僅かに上げた片腕の動きだけで受け止める。次いでそのまま弾き返し、空いたトキワの無防備な腹目掛けて踏み付けるような蹴りを繰り出した。


 だがグラムハルトの足がトキワに届こうとするその刹那、彼は上体を仰け反りそれをするりと躱す。空を踏むグラムハルトの足をそのまま倒れ込み回転跳びの要領で蹴り上げた。


 バランスを崩すグラムハルト。当然、トキワはその好機を逃さない。後方に下がった距離を一気に詰め、今度は烏一文字を横薙ぎに繰り出す。





         ギィィィン…!!





 


 ぶつかり合う刃と刃。擦る刀身同士から火花が花開く。


 黒と白が混ざる魔力が、蒼白の魔力の奔流が、互いを食い合うように激突する。


「判断出来たか?グラムハルト」


 つるぎの向こうでニヤリと嗤い、トキワが問うた。挑発を多分に含んだ、不敵な態度。


「…図に…乗るなぁ!!」


 覇王が吼えた。その瞬間、渦雷刃が一際激しく白龍を帯びた。


 熱を帯び、膨張する周囲の空気。烏一文字を押し返し、渦雷刃を天空に掲げる。すると刃に纏わりつく白龍が天へと飛翔した。


「降雷・龍鱗爆招来…!!」


 グラムハルトが掲げた剣を大地に突き立てた。


 天空に鎮座した白龍が、動きに合わせトキワめがけて急降下を始める。


 白龍の周囲は灼熱と化していた。地面が近づくにつれグラムハルトが率いていたウィアヘルム兵は魔力の少ない者から次々にその身を焼かれ消滅してゆく。


 味方すら巻き込む無差別な殺意。


 だが、トキワは動かなかった。


 動けない訳では無い。動く必要が無いのだ。


「…来い…!!」


 トキワが嗤った。


 白龍の顎が大地に食い付く。周囲が白一色に支配される。






            静寂。






 

 トキワは立っていた。周囲の地面は醜く抉れ、残痕の煙が幾筋も立ち昇る。


 だがトキワは立っていた。白龍の顎が到達する以前の姿のまま、だ。


 二刀の刃すら構えもしていない、堂々たる姿。


「姫の魔術はこんなものではなかったさ」


 そう。トキワは以前主君たる宵闇の魔女の雷撃をその身に受けていた。


 雷鳴の歯牙。あの時トキワは死を悟った。それ程迄に恐ろしく、そして激しい伝説の魔女の魔術に相応しい一撃。


 実際にはグラムハルトの一撃もまた、覇王の名に相応しき威力であった。


 だが、それは所詮覇王の一撃。最早トキワには届きはしない。


「俺達は真の王たる姫の剣。そうだろう?トゥランヌス!!」


「うむ。トキワ殿!!覇王の軍勢?ぬるいわ!!」


 上空より現れるは純白の巨馬。轟音を立て降り立った魔獣の王の金色の一角が魔力を帯びて激しく光る。


「風は舞い、剣と血が嗤う刻の最果て。果て無き空に願うは悠久の快楽。来る筈のその時に我は願う。大地に根ざす者皆刮目せん」


 トゥランヌスの言霊が魔方陣を形成する。重苦しい声色に空気が震える。


「来い…、ウィンド・ロンド…!!」


 トゥランヌスの周囲を囲むように数本の巨大な竜巻が発生し、そしてそれが無軌道に暴れ出し前線に立つウィアヘルム兵を次々に食い荒らした。


 暴風が収まる頃、そこに立つのはトキワ、トゥランヌス、そしてグラムハルトのみ。


「どうだ。愚かにも覇王を名乗る愚者よ。この世に真の王は我らが主君、宵闇の魔女・エル様のみ。その証拠に」


 トゥランヌスが頭を垂れた。それはグラムハルトに対してではない。


「もう、魔術兵団は無力化したよ。ここからは私の番。いくよ、グラムハルト!!」


 栗色の髪を風に遊ばせ、異国の衣もまた風に揺れる。

 

 手に持つ大鎌が陽光に白く煌めいた。


 微笑みさえ称え、ゆったりと背後より近づく華奢な姿。


 それは紛れもなく。





 

 宵闇の魔女・エル。


 

 



 


 


 

いつも有難う御座います。最新話更新です。


今回は何時もよりスパンかなり短めで投稿できました。


魔術の言霊考えるのやっぱり楽しいですね。いい歳して中二病爆発です(笑)


トキワさん強くなりました。意図的に同じようにしましたがでもこれ思いつき。基本思いつきで細かい所は構成されてます。なので彼らに振り回される。矛盾?どうか許してください(笑)


少しでも楽しんで頂けたら幸いに思います。


これからも宜しくお願い致します。


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