勉強のできない2人
「あ~、もうテストか…嫌だな~試合に出たくない…」
「そうですよね…中間テスト、私も嫌です…」
「私も中間テスト嫌っす…」
――え…何、いきなりコハルさんとシトラさんが現れたんだけど…それに会話がかみ合っていないのだが…。
「えっと…2人ともどうしてここに…?」
「いやぁ~ちょっとハンス君にお願いしたいことがあったから、話しかけようと思ったんだけど。シトラさんも一緒の事をお願いしたいって言うから…」
「そうっす…コハルさんと同じことをハンス君にお願いしたいっす!」
――なんだろう…すごく嫌な予感がする…。
「お願い!私たちに勉強を教えて!!」
「お願いっす!!」
2人は両掌を顔の前で合わせ拝むようにしてお願いしてくる。
「えっと…なぜ僕…お世辞にも頭がいい方ではないと思うんだけど…」
「ハンス君のお父さん、大学の教授なんでしょ!分からないところがあったら教えてくれるかなって…あ、勿論ハンス君が頭悪いとか思ってないよ」
「そうっす!ハンス君が分からなくてもお父さんに聞けば大体答えが分かるって思ってないっす!」
――ダメだ…この2人、勉強を父さんに丸投げしようとしてる…。
「えっと…父さん、忙しいから勉強見てくれないと思うよ…」
「そうっすか…でも!ハンス君は私たちより頭いいっすよね!絶対!」
「うん!そうだよ、絶対私たちより頭いいって!」
2人は顔を見合わせ、自分の頭の悪さを主張する。
「えっと…じゃあ、一番最近の小テスト…数学のテスト何点だったの?」
これを聞いた僕の頭はバカだった…そのまま断っておけば良いものを興味本位で聞いてしまったのだ。
「私的には頑張った方だよほら、10点。初めて2桁取れたんだから」
「うわ、凄いっす。コハルさん!私なんて5点っすよ!」
――そんな馬鹿な…僕でも70点は取れたぞ…どうしてこの学園に入れたんだ…いや…僕が言うのも何だけど。
「…はぁ…分かった…僕のできる範囲でなら…」
「ほんとっすか!やっぱりハンス君は優しいっす!」
「ほんと、ありがとう!ハンス君!もう私どうしたら良いか分からなくって!」
そう言って、2人は他の教科の小テストを見せてきた。
「は…は…は…は………」
――何で全部1桁なんだよ!どうしてそうなるの、選択式の小テストもあったのに、選択式の小テストでも1桁って…寝てたの…ねえ、寝てたって言って欲しいんだけど。
「えっと…小テスト中…眠すぎて寝てたってことは…」
「何言ってるんすか!私は何事にも全力で取り組んでるっす!」
「そうだよ!手を抜くなんて、私のお父さんが知ったら何回竹刀で叩かれるか」
――まぁ…2人の性格上そうですよね…。どうしよう…この2人の点数を上げる自身が僕には無いんだけど。
「じゃあ…放課後は図書館で勉強と言う事で…」
「いや、放課後は試合の練習をしたいのでぱすっす!」
「私も同じく!」
――何でそこで笑顔を見せる…普通勉強の方に力をだね…。
僕は甘いのだろうか…それとも唯々、2人に良いように使われているだけなのか…。
放課後…
今、学園の図書室にて第1回中間テストの勉強の真っ最中にも拘らず、テストで出そうな部分をまとめたプリントを作成している。
「これはこれで…僕の勉強になっていいかもな…えっと、旧マギア一号『ギガントマギア』と…」
――今の所、魔法歴史のプリントを作成中、残りあと魔法学に…魔工学…数学…外国語…国語…範囲がとんでもなく広いからな…たとえこのプリントをやったとしても、2人…ちゃんと単位取れるんだろうか…。
「あれ?こんな所で会うなんて、ハンス君だよね?」
「え…あ!せ、生徒会長。こんにちは…どうして僕の名前を…それに中等部学園内の図書室になぜ…」
「いやぁね、僕の友達が中等部の単位をまだ残してるやつが居て…仕方なく教えてあげようと思ったんだけど…。あいつ逃げやがったな…それに、君は先生の間では有名だからね。マギアを使わないなんて、大分変った子だって有名だよ」
「は…はあ、そうですか…」
生徒会長は机に手を置き苦笑を浮かべ、小さくため息をついた後、椅子を引き僕の隣に座った。
「ちょうどいい、勉強見てあげるよ。勉強を教えるために全部の範囲を終わらせてきたから時間が余ってるんだ」
「全部の範囲って…まだあと今日合わせて14日あるのに…」
「あとの時間は魔法学演習Ⅴの練習に使う予定だよ。僕のマギア…結構面倒な性質してるからね。あ、君なら知ってるかドンカ―さんの息子だしね」
「まぁ…何となくわ…」
生徒会長は僕の机を見るや否や、目を丸くする。
「今時紙に書くなんて珍しいね。それに…テストに出やすい所をちゃんと抑えてる。よく勉強してるじゃないか。僕の友達とは大違いだよ…」
「いえ…単位を落とすのはちょっと後々大変だと思うので…」
「うん、偉い偉い。1年の時にさぼったらずっと引きずるからね、その点に関しては素晴らしいと思うよ」
「その点に関しては…ですか?」
「うん、だってそのプリント…ハンス君に必要のない物でしょ。わざわざ自分の時間を使って誰かにしてあげる時間なんて無いでしょ、凄くもったいよ。どうせ、勉強が苦手なクラスメートにお願いされたんでしょ。僕もそうだったな~、1年の時勉強が出来た僕は、よくクラスメートにしつこく質問されたもんだよ…。ちゃんと分からない所ならまだしも…調べたら分かる所を聞きに来るのはもうちょっと僕の事を考えて欲しかったかなって思うよね‥‥」
――なんだろう…この人、いい人なのか捻くれてるのかよく分からないな…。
「えっと…別にこれは僕の勉強をまとめてるだけなので…特に誰かに見せようとは思ってませんけど…」
「嘘だね…君のノートとプリントの文字…綺麗さが全然違う。それは誰かに見せようと作っている物だ…」――ドヤァ
――す…鋭い…最後の決め顔はウザイ…。
「でも、自分の頭を整理するにはいいかもね。あ、ここ間違ってるよ」
「あ、ホントだ…ありがとうございます」
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