睡魔が有るうちはまだ廃人じゃない。
その日の夜。
「えーと…明日のプリントを作ろうかな…。いやでも、まだまだ中間テストの範囲、全然終わって無いし。宿題だって残ってるしな…まぁ良いか一緒にやっちゃおう」
午後9時ごろ、自室で勉強していたのだが…。
「ん~、どうしてもここの問題が分からないんだよな…魔工学…か、父さんに聞いてみようかな。でも今忙しそうにしてるしな…」
父さんは今『新型マギア』の改良に時間もお金もつぎ込んでいる。
そんな時に問題が分からないからと言って、聞きに行くのも…。
「父さんじゃなくても、他の人に聞いたら分かるかな…」
僕は研究室を遠目から見る。
しかし、すでにみんな帰っており、今いるのは父さんだけ。
「今日の父さん…まだ晩御飯も食べてないんだよな。あまり根を詰めすぎるのも…体に悪いと思うけど」
僕はお握りを作り、お茶と一緒に研究室へと持って行く。
あわよくば、魔工学の問題を教えてもらえるかもしれない、そう思ったのだ。
研究室の強化ガラスをノックし。
中に入る。
「ハンスか、どうした?」
――父さん…相当やつれてるな…何をそんなに根を詰めているのだろうか…。
「父さんまだ晩御飯食べてなかったでじょ、夜食にでもと思って、おにぎりとお茶を持ってきたんだ」
「ああ、ありがとう…そう言えばお腹が空いていたことを今思い出したよ」
――おなかを空いていたことを忘れるって…。どれだけ集中してたんだよ、本当にこんな生活が続いたらいつか倒れるぞ。
「お、梅干か…良いね、目が覚めるよ。こっちは昆布かな、父さんの好物じゃないか、ほんとにありがとうハンスのお陰で、もう少し頑張れそうだよ」
「そう…良かったよ」
――いえ…言うんだ…ここの問題を教えて欲しいって…。
「ん?どうした、何かあるのか?」
「えっと…その、ここの問題を教えて欲しくて…魔工学の問題なんだけど」
「なんだ、父さんの専門じゃないか、そんな事なら早く言いなさい」
「いや…父さん忙しそうだったから…」
「問題の一門や二問大した時間じゃないよ、それに息子の為なんだから当たり前だろ」
「はは…そうなんだ」
「さ、早く見せなさい」
僕は父さんに、魔工学の基礎の基礎を利用した応用問題だと思われる、問題を見せた。
「ここの問題なんだけど…この回路…複雑でよくわからなくて…」
「フムフム…ここは、こうして…こっちはこう…ここに直列させて…ここに…あ!」
「え!何!何なの!」
父さんは行き成り大きな声を上げた、家の外に響いたんじゃないかと思うほどに大きな声をだ。
目の前にいた僕は勿論の事、耳の奥の奥…脳にまでその声が響き、頭がくらくらする。
「思いついた…思いついたよ!ハンス!そうだったんだ!」
「え…何が…全く理解できないんだけど…」
「この問題を見て気づいた…今やってる新マギアの改良に応用できるかもしれない!」
「そ、そうなんだ…。それは良かったね…」
「ああ…これで何とかなりそうだよ」
――こうなったら最後…睡魔が強制的に父さんを寝かせない限り作業し続けるだろう。でも、問題が分かってよかった。これで何とか魔工学は乗り越えられそうだぞ。
僕は研究室から出て、自室に戻る。
時刻は午後10時。
「あともうちょっと頑張ろう…あともうちょっと…」
午後11時…
「あともうちょっと…あともうちょっと…」
午前2時…
「あともうちょっと…て!もう2時!どうなってるんだよ。さっきまで午後10時だったじゃないか!」
僕も父さんの息子だからだろうか…集中しすぎてしまうところがある。
「やばいぞ…。今から寝ても…5時にあの2人が起こしに来る…そんなこと言ってる場合じゃない、早く寝ないと!」
今やっていた勉強を中断し、ベッドに潜り込む。
「寝る寝る寝る…‥‥…」
何とか眠ろうとするも…先ほどまで勉強していた為か、なかなか寝付けない。
だが…目をつむっていると次第に眠気が襲ってきた。
――よかった…。僕の睡魔はまだ健在みたいだ…
睡魔が居なくなった場合、廃人まっしぐらだ。
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