みんな女の子だよ♡( ᵒ̴̶̷̥́ ⌑ ᵒ̴̶̷̣̥̀ )
下らないお話しですが、よろしくお願いします。
ここはどこだろう?
ふと目を覚ますと私は奇妙な部屋にいた。
あれ?
私は何故、こんな所に居るんだろう…。
(私は高校二年生…。)
(名前は八代彩夏…。)
(うん、名前と学年は覚えてる。)
それにしても、変な景色だなぁ、学校の美術の教科書に載ってるピカソの絵みたいな奇妙な光景だ。それでもってバカ広い、それに色々な所にドアがある。
(え?ここって、何かの部屋なの?)
何故か、私は、口に揚げパンをくわえながら、この奇妙な空間内で、正座したまま、呆然としているのである。多分、ここに来る前に、1回どこかで気絶してて、只今、徐々に覚醒中なのだ。
小学生の頃、鉄棒で頭を打って気絶した事があるから、このぼんやり感は、よく分かる。
「なんだろ、あれ…」
遠目に見ると、この部屋内には、私以外にも、誰か二人いるみたいだ。まだ、頭がぼんやりしているが、うっすら人影が二つ見える。
(んー誰だろ、この二人、片方は喪服みたいな服を着てるし。もう片方は、翼が生えてる…。)
「翼!!」
私は一気に目が覚めた!
「え、翼!?人に翼って生えるんだっけ!?」
やや遠くにいる銀髪の女性には、多数の翼が背中に邪魔くさいほど生えており、模様入りの真っ白な鎧付きのビキニをまとっている。まるで2次元から飛び出して来たかのような格好だ、自分の事を「大天使」と自称している。
この人達は重度の厨二病で、この格好はコスプレかと思ったが、それにしては翼がリアル過ぎるし、だいいち、その翼で、ちゃんと飛んでるし、こんな超常的な事って地味に説明がつかないので、私は困惑する。
もう1人の女性は、亜麻色の髪と大きな黒い眼と、真っ黒な服装にとんがり帽子をかぶり、地味な格好の割にボディラインがくっきりと浮かんでいる、やはり、2次元から飛び出して来たかのような風体だ、自分の事を「大魔女」と自称している。
うん、さりとて、なんで、こんな所に私はいるのだろう。
よくよく、思い出してみれば、あれは、学校から帰る途中の出来事だった。
その日、嬉しい出来事があった私は、行きつけのパン屋で、大好きな揚げパンを買って、その揚げパンをかじりながら、自転車で帰宅していると、向こうの空から、真っ黒な雲に、真っ白な雷がまとわりつきながら、こっちに向かって来て、私に全力でぶつかって来た。
そして、気がついたら、この部屋にいたという訳だ。
何を言っているか、わからないと思うかもしれないが、私も、自分で、ちょっと何言ってるか、わからない。
私は、どうして良いか、分からずに、正座をしたまま、揚げパンをくわえ、二人を眺めていると、壮絶な争いを繰り広げていた。
「汚らわしくも禍々しい大魔女め!我が剣によって光に変えてくれるぅ!」
「お黙り!神の端女が!光に変えるだと?やってみ?!」
「貴様ぁぁー!大断罪だ!!」
そこから長い戦闘に入ったものの、どういう訳だか決着がつかない。何故だか、お互いにえぐい攻撃を食らわしても全くノーダメージ…。
早い話がどんなに戦っても、全くの不毛なのだ。
…私はその時、ふと、オープンチャットの荒れ会話を思い出していた。
些細な事がきっかけで、集団の会話が、荒れに荒れて、その後、争ってるオプメン達が疲れ果てるまで、絶対に収まらないというあれだ、ちなみに私も何度か経験した事がある。
「ああ!これぇ!!お互いに負のエネルギーを、出し尽くさないと静まらないやつだ!!」
私の読み通り、不毛な争いに疲れた大天使と大魔女は戦闘を一旦休止した、もの凄く疲れた顔をしている。それにしても休止するまでに約2時間半…。
この人達、意外と賢くない人達だ。攻撃してもお互いにノーダージで終わるのは、争ってる途中から、わかりきっていたはずなのに、辞めないんだもん。
大魔女が私の方につかつか歩いて来て、私がくわえてる揚げパンの、口をつけていない部分だけ器用にちぎると、そのまま食べた。そして、食べながら話し出す。
「だめだね、大天使と大魔女の力が変な作用して、特異空間ができちまった。」
2時間半くわえたまま、食べなかった揚げパンを、半分取られた私は、大魔女に向けて呟いた。
「私の揚げパン…」
大魔女は、私など眼中に無いようだ。
「こりゃ出る為のルールを素直に守らないと、出られないよ、どうしたもんかねぇ」
え、私はスルーなの?
人の揚げパン勝手に食べといて、何それ…。
「いや、揚げパン返してよ!」
かろうじて残っていた揚げパンの口をつけてない部分を、今度は大天使がちぎって食べた。
「…ぉおい!、何してんのっ!!」
私の叫びを無視して大天使は、大魔女に何か尋ねている。こいつらに人の心はない、文字通り、人でなしだ。
「特異空間ができただと!そんなもの無視してしまえ!ゴリ押しすれば『二人共』、脱出は出来るはずだ!」
「脳筋の堅物はコレだからいけない、特異空間ってのは力や魔力なんざ通用しないんだよ」
今、大天使「二人共」って言った!?
え、私は?私は頭数に入って無いの!?
二人共、私をぎゃん無視してる、いや無視してると言うより、視野にも入ってない感じだ、
え、なんなの???
二人共、人間を害したり、護ったりするのが、仕事だよね?これ、ある意味、職務放棄じゃないの??
大魔女は私を全然無視して、話を続けている。
「こうなってしまうと、この部屋から出れるのは、たったの一人なんだよ」
大天使は凄い驚いてる!
「なんだと!う、うあああ…ひぃぃぃぃ」
大魔女はニヤつきながら、話を続ける…て言うか大天使、取り乱しすぎでしょ…。
「一人が出るのに、あとの二人の同意がいるのさ」
大天使は半泣きで大魔女に質問する。
「まて!一人脱出したら残りの二人はどうなるのだ!やはり文字でも書けないようなグロい拷問的なことになるのか!?いやさ、この部屋で永遠に地獄の業火に焼かれ…etc…etc」
大魔女はため息混じりに言う。
「…いや、一人が出ると、同意した二人は共に、女用の髪留めになる」
大天使は目をぱちくりさせる。
「なんだろうな、微妙…な、呪いだな…」
大魔女は、つまらなさそうに返事をする。
「髪留めになって、持ち主の髪に留まって、人生を共有する事になるね、だから、二人の同意が必要なのさ、この特異空間は魔女の色合いが濃ゆいみたいだから、魔女寄りのルールが形成されたみたいだねぇ、魔女は髪が大事だから、髪に関する犠牲を強いるルールになったみたいだね」
いや、何その地味に嫌なルール…。
私、他人の髪留めとかに、なりたくないんだけど、ってあれ?、大天使は何故かノリノリだ。
「なるほどな、ならば話は早い!私は大天使だ!これから栄光ある聖務を貴様らに見せてやろう、そして私の髪留めになれ!天界では髪留めなぞ許されんが、こういう事情なら仕方あるまい!これを機に私も女子力を上げてやるわぁ!」
「ほざくんじゃあないよ!アバズレが!虫唾が走るねぇ、あたしこそ、あんたらに、引くほど、悪行を見せてやるよ!大天使の髪留めは素敵だろうねぇ!大天使の髪留めした大魔女って凄くない?!」
「アバ……貴様!!せめて銀色プリティと言えぇ!!」
また、戦闘で時間を浪費されては堪らない、私は、人でなし二人を止めに入った。
「やめてよ二人共!そして私の言い分を聞いてよ!」
人でなし二人は、言い争いを辞めて、無言でこっちに来るのだが、その様は、一通りの種目を終えて、ハーフタイムに入るスポーツ選手のようであり、嫌そうに、のそりのそりと歩いてきて、やれやれ仕方ないな、という感じで二人共、私の正面に、ドカッと座り込んで話してみろ、というのだ。
こいつら腹立つ…。
ともかく、私は必死で主張する。未成年の主張だ。
「あーあー、私はピチピチのJKでー、なんかー」
「くぁ…あ、はいはい、話し続けな」
大魔女アクビした、私はムカッときた。完全に人を馬鹿にした態度だ。
しかし、ここで屈する訳にはいかない。
「SNSとかやってフォロワーもいるよ(二人だけど)あと配信やっててねぇ好評だし(二人しか見てないけど)…」
取り留めの無さそうな私の話に、大魔女は痺れを切らしたらしい。いきなり大天使に無法な喧嘩を吹っかけた。
酒場で悪酔いしたおっさんか!あんた!
「もういい…!どうやら、あたしとあんたで、心のヘシ折りあいをやって、強引に同意させるしかないみたいだね」
「いいだろう、望むところだ、千年でも二千年でも、とことんやってやる!」
こいつら、なんてこと言うの!?私の迷惑を何とも思って無いの??え、千年、二千年って何??馬鹿なの!?
こいつらに巻き込まれるのが嫌で私は無心に叫んだ。
「いやぁああー!無理ぃぃ、私、寿命とかで死ぬぅ、千年とか無理ぃぃぃ」
これで、少しは、この人でなし二人も、私の事情を(主に寿命)理解してくれるかなと、期待したが、こいつら、私の叫びを、びっくりするぐらいナチュラルに無視して、また、変な戦闘を始めようとしていた。
私は堪らず、本音を吐き散らかした。この心情は既読無視され続けて、ついに、ついに我慢が出来なくなって、直接LINE通話する時の状況によく似ている。
「お願い!私をここから出して、私!ピュア恋してるのよ!なんかこう、このままの関係がずっと続けばいいなぁって、そんな恋してるのよ!」
大天使と大魔女の動きが止まった。何故か関心を持っているみたいだ?え何故?まあいい、これは続けるべきだと私は直感した!
「その人といると、ふわふわするの!見るだけで幸せになれるの!(LINE交換はまだだけど)明日もあの空間に居たいの!だから帰してよ!!」
人でなし二人が私の眼前で質問してくる。正直、目つきが怖い…。目をキラキラさせて、顔を赤らめているのが、余計怖い。
大魔女が尋常ではない反応をしている。
「ぴ…ピュア恋だと…もはや私の年齢じゃ味わえない、(五百歳)甘い、甘あ〜い、至福の果実じゃないか、ああ、あの素晴らしい愛をもう一度。ジェム二ー(初恋の相手)私はいつだって貴方を見ていたあぁぁー!」
キモ!
大天使も、変な反応をしてる。
「むうぅ…私に至っては、生まれた時から天界の無骨な大幹部だったからなぁ、い、いいな、た、体感してみたいなぁ、妬ましいなぁああ、天使は恋愛とか出来ないからもう少しで、天界に謀反起こそうとか考えてたぐらいだからなあぁぁぁ」
「(うわ…妬むとか最低だ。あんた、天の守護者だよね?
自分が何を口走ったか、わかってるの??
え、神への反逆考えてたの??)」
私の主張を聞いてから、人でなし二人は、私から少し離れた所に移動し、こそこそ、話をしている。いや、もう、人生設計、百年のレベルで、熱論を交わしてる。
ぽつりぽつりと、聞きたくもない会話が断片的に聞こえて来るのが辛い。
「……だからあの娘をとことん利用して我らがキュンキュンするのだ、何故これが分からん!??」
大天使の声だ…。
「……相手はいたいけな乙女だよ?デリケートなんだ!考えてあげないと…」
大魔女の声だ…。
…大天使がクズで大魔女が良い人に思えてきた。
1時間経った辺りで、人でなし二人は、すっかり合意したのか、お互い握手を交わして、満面の笑顔でこっちを見てる。
うん。いちいち不快だこの人達…。
私が不快感に苛まれていると、大魔女が遠慮気味に言ってきた。
「まあ、その、なんだ、すまんが、あんたがこの部屋を無事に出る方法はこれしかない、あんたが先に部屋を出な」
ぬけぬけと大天使が言う
「私の使命は人間の加護と守護、行くがいい、人の子よ」
私が無数にあるドアのノブに手をかけると、二人共、光と共に髪留めになり、私の髪に装着された…。
髪留め要らないな、と思いつつ、私は、この嫌な部屋をでた。
部屋の外に出てみると、部屋に入った時と同じ場所に出た、近くに私の自転車が倒れている。
空を見上げると真っ青な青空だ。
「あー解放感ー」
私は青空を仰ぎ見ながら、体を伸ばして、心の中で呟いた。
…
この話…
SNSに投稿しても…
誰も信じないだろうなぁ…
そして、倒れてる自分の自転車を起こして、それに乗ると、私は、黙って家路についた。
こんなお話しでした。
読んでいただきありがとうございました。