51.依頼
◆
「で、どういう事か説明してくれる?」
「いや……俺に聞かれても……」
この場で何が起こったのか、状況確認を踏まえて【黄泉】とカイル、クレハも集めて話し合いの場を設けた。
そう、話し合いだ。
それなのに、俺だけ正座をさせられているのは納得できない!
自身の正当性を確かめ、不条理な状況に意見を述べようと白夜をみる。
「なに?」
今までに、見たことの無いような冷たい目をされた。
意見を述べようと、決めた心はあっさりと砕けた。
「ナニモナイデス…」
小声で無抵抗を示す以外この場での最善を見出だすことが出来なかった。
そんな空気を察してか、カイルが口を開く。
「とりあえず、全員無事でよかった!まさか、神が単身でいきなり乗り込んでくるとは予想外だったしな。しかも、滅多に表に出てこない"反神"が相手だったんだ、不幸中の幸いだと思うしかないな」
「"反神"って強いのか?」
カイルに質問を投げ掛ける。
「多分って回答になってしまうが、実際に"反神"が何かをしたって話しは聞いたことが無いんだ。それでも、神に名を列ねている以上それなりの力は持っている筈なんだが……」
『強いぞ』
【琥王】がカイルの話しに割って入る。
『俺様も不確かな部分が多いが、少なくとも他の神と対等に戦えるだけの力は持っている筈だ。じゃないと、"反神"としての……いや、余計な詮索を生むだけだな。とにかく、アイツが本気で仕掛けに来たんだとしたら、今ごろこの拠点は消えててもおかしくないさ』
そうなのか……
俺は、サリアの記憶があるだけで彼女がどんな性格なのか、どれ程強いのか、なにも分からない。
ただ、どうしても"軍神"や"美神"のように明確に敵意を持つことが出来ない。
考えてみれば、奴らのように直接危害を加えられた訳ではないのだから当然と言えば当然だ。
あんな事が有ったからって、決して下心がある訳じゃないぞ!
とはいえ、神がこの場に直接現れたのは事実だ。
あの時、【琥王】が警戒していたという事は本当に危ない状況になる可能性も有ったという事だ。
「今さらながら、何事もなくて良かったな……」
思わず本音が零れた。
「なにごともねぇ……」
白夜が怖い。
たしかに、悠長に神と話をしていたのだ。
責められても仕方は無い。
「すまん。俺の緊張感が足りなかったかもしれん……」
最初は、俺にも予測できない状況だったし、俺だけ特別怒られている事態にも納得出来なかった。
だが、白夜のこの怒りは俺にはもっと、しっかりして欲しいという気持ちの裏返しだと考えれば素直に反省できる気がした。
『真面目に反省してそうな所ですまんが、多分それズレてるぞ』
『本当にダメね』
【琥王】と【斬魔】に何故かダメだしを貰う。
『主様はダメダメなのじゃ!』
『私は主の味方です。少し考えれば、主も気付かれる筈なのでダメではありませんよ』
多分、何も分かってなさそうな【龍王】に笑われたのは釈然としない。
庇ってくれている【黄泉】の言葉が何だか痛い。
「ふんっ」
白夜の反応を見ると、あながち【琥王】達の言うことも正しいかもしれないが、これ以上俺には原因が思い付かなかった。
「まぁ、とりあえず極夜には考えて貰うとしてだ!」
どうやら、カイルにも分かっているらしい。
分かってないのは、俺と【龍王】だけらしい。
納得いかないが。
すごく、納得いかないが。
『主様、なにやら妾に失礼な事を考えていないかのぅ?』
「俺たちも、割れた障壁を直して終わりにするつもりは無かったが、こんな状況になった以上さらに手を加える必要があると判断した」
【龍王】を軽くスルーして、カイルが話を続ける。
「つい今しがた連絡があったんだが、"箱庭"の解析の目処がたったらしい。お前達にはそれを受け取りにいってもらいたい」
「"箱庭"?」
また、聞いたことがないモノが飛び出した。
「あぁ。"箱庭"は、"精霊の集い"が出来るより前から保管されていたモノだ。どうやって手に入れたのか、詳しい事は俺にも分からないんだ。空から降って来ただの、精霊からの贈り物だの、言い伝え程度の話しか分からない」
どうやら、カイルにも詳しく分かる代物ではないらしい。
「その"箱庭"が、障壁と何か関係が有るのか?」
「その点に関しては、私からお話させて頂きます」
カイルの一歩後ろに立っていたメイドさん。
クレハが口を開く。
頼んだ!とカイルはこの件について、クレハに丸投げを決めた様だ。
「"箱庭"が手に入った経緯は、先に説明が有ったように詳しくは分かっていません。しかし、精霊からの贈り物という可能性もあり詳しく調べておりました。その過程で、力を外に漏らさない性質が有る事が分かり、現在の障壁に利用し運用しておりました」
「なるほどな。つまり、今の障壁のもとになった……"箱庭"だっけ?それの解析が進んだから、障壁をより強く出来るってことか」
クレハは、俺の意見を肯定するように首を縦に振る。
「半分正解といった所でしょうか」
半分なのか。
「より強固な障壁を使用する。というのは正しいですが、今の障壁を強くするわけではありません。私でも、これ以上の説明は難しいので現地で説明を聞いてきてください。その方が分かりやすいと思います」
なんだか、イメージが上手く出来ない話だった。
とにかく、その"箱庭"を取りに行く依頼ということだ。
横目で白夜を見ると、まだ機嫌が悪そうに見える。
この依頼が終わるまでに、なんとか機嫌が良くならないかと考える。
しかし、そんな単純に解決もしないのだろうと思い直し、深いため息をついた。
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