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48.サリア



「じゃあ、話の続きを聞いてもいいか?」


 温泉から出て、自室に戻り【琥王】に声をかける。

 服は、カイルが準備してくれたコチラの世界の物に着替えた。

 こちらの世界の一般的な服装らしい。


 何時までも前の服を着たままでは、良くも悪くも目立ちすぎると思ていたので丁度良かった。

 いつか必要になるかもしれないと思い、着ていた服は大事に備え付けの備え付けのタンスの奥にしまった。


 白夜達は、まだ戻ってきていないようだったので都合も良かった。


『緑の髪の女についてだったな』


 真剣な表情と口調でしゃべってはいるが、首に回してかけたタオルがどこか気が抜けているように感じる。


『俺が話す前に、まずお前がその女について思い出したことを言ってみろ。夢で見た事でも何でも良い』


 【琥王】に言われて考える。


 俺が分かっているのは、白夜の記憶を思い出した時に同時に見た、幼い緑色の髪をした女の子と森の中を歩いている、それだけの光景だった。


 歩いてた場所は……


「そういえば、白滅の森って【琥王】と関係あるのか?」


『あぁ、俺様が元々居た場所だな。それも見たのか?』


「緑の髪の女の子が言ってたから、関係有るのかなって思ってたんだだけど……やっぱりそうなのか」


 【琥王】は表情を変えずに答える。


『隠す必要も無いことだけどな。俺とお前が契約した場所でもあるんだが……』


 正直そう言われても、まったく心当たりが無かった。

 今までの経験上、頭痛と共に何かをうっすらと思い出しそうだったが、その気配も無い。


『今は本題から逸れる。その話は、次の機会があればだな。そのうち勝手に思い出すかも知れない』


 俺としても、気になっていたのは緑の髪の女の子の事だった。

 おそらく、俺の記憶に深く関わっている少女の事が分かれば、記憶を取り戻す切っ掛けになるだろうと思う。


「あっ」


『どうしたよ?』


 もう一つ、緑の髪の女の子が出てきた記憶が有ったことを思い出す。


 それは、二人で楽しげに歩いていた暖かい気持ちになる記憶とは掛け離れていたし、見た目も少し違っていたから今まで忘れていた。


 今思えば、少女が成長した姿だったのだろう。

 俺が成長しているのだから、少女が成長するのも当然だ。


「"軍神"と戦った後に、白夜がサリアって名前を言ったよな?あの時、頭に出てきた子と同一人物なのか?」


 【琥王】が僅かに顔をしかめた。


『そういえば、そうだったな』


「あの時……白夜の前では何となく言わない方が良いと思ったんだけど、俺とそのサリアって子が向かい合って立ってたんだ。その時は、随分と険しい顔をしていたと思う」


『……そうか。お前が考えている通り、その女がサリアだ』


 【琥王】が答える。


 初めて名前を聞いたときに、どこか懐かしく感じたのは小さな頃からの知り合いだったからなのだろう。

 森で楽しそうに会話をする程度には、仲が良かった筈だ。


 その後に、対立するように向かい合っていたのが何故かは分からないが……


「そのサリアは、どこにいるんだ?ソイツは俺の事を昔から知ってるんだよな?それこそ【琥王】と出会う前から」


『まぁ、そういう事になるな』


 やはり、どこか歯切れが悪い。


「俺に言えない事なら無理に聞かないけど……これも俺の記憶が戻れば、自然と思い出す事なんだろうし」


『いや……すまん。大丈夫だ』


 一呼吸おいて、【琥王】がサリアについて語る。


『先に言っておくが俺様が知ってるサリアの情報は、お前と契約してから向こうに行くまでのモノだけだぞ』


 俺と一緒に向こうに行ったのだから、それ以降の情報は無くて当然だ。


 白夜なら、何か知っているかも知れないが……


『以前のお前から聞いた話しも交えてだが、サリアはお前が物心付いたときから一緒だったみたいだな。俺様と契約した時には、お前達は姉弟みたいな関係だったと思う』


 どうやら、俺とサリアとは幼馴染みの様な関係だったみたいだ。

 実際に姉弟って事は無いだろうが……


『何処に行くにしても、サリアとお前は一緒だった。俺様の元に来たときも二人一緒だったな。お前が、一人で森を出るまでは大きな問題は無かったと思う』


「何で俺は、森を出たんだ?」


『お前には、俺様達の声が聞こえてたみたいでな。実際に俺様の所に来たときも、声が聞こえたから来たと言っていた。実際に俺様がお前を呼んでいたわけじゃないんだが、繋がりのある魂同士が共鳴したんじゃないかと俺様は考えているんだけどな』


 その後、俺は声が聞こえるがままに旅をして【龍王】と【黄泉】の二人に出会い契約に至ったという事らしい。


「なるほどなー」


 他人事のような返事が出てしまった。

 自分の事なのだが、どこか実感が持てずにいた為だ。


「でも、どうして一人で俺は旅に出たんだ?記憶の中ではサリアと一緒に旅をする様な話をしていた気がするんだけど……」


 確か、俺が思い出した光景の中ではそんな話をしていた筈だ。

 まぁ、無理に着いてくる必要も無かったのかも知れないが。


『アイツの力は特別だったからな。森から離れる事ができなかったんだ。俺様がお前と契約して、外に出てしまったのが原因の一つでもあるけどな』


「ちょっと待ってくれ!話が理解できなくなってきたんんだけど特別な力ってのは、サリアも俺みたいに幼精と契約でもしてたのか?」


 【琥王】が少し間を空けて、ゆっくりと口を開いた。


『サリアは、()()()


 余計に頭が混乱してきた。

 俺は人間……だよな?


 その俺と、姉弟も同然だったサリアが幼精?


 頭の中がごちゃごちゃしてきたのが表情に出たのか、【琥王】が口を開く。


 だが、聞こえてきた声はまったく別の声だった。



「ボクの話をしてくれているのかい?なんだか、照れ臭いじゃないか」



 いつからソコにいたのか。


 俺と【琥王】の前に、緑色の髪に翡翠色の眼をした女が一人立っていた。


 記憶に有る姿とは違ったが、すぐに分かった。


 

 彼女がサリアだと。



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