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47.神の円卓③



 円卓に六つの椅子が並んでいる。


 それは、神達の円卓。


 その席が同時に全て埋まるのは、"名無し(ネームレス)"がこの世界から消えた時以来である。


 ガハハハハハ!と、大きな声で笑う男。

 神の先鋒"軍神"アレスが、一番最初に口を開く。


「いやはや!まさか、これ程までに早くコチラにやってくるとはな!”美神”が帰ってきてから音沙汰が無いので、よもや死んだかと思っていたが!どうやら後始末には失敗したようだな!」


 神の寵愛”美神”アポロは、下卑た笑みを浮かべながら答える。


「クククッ。見解の相違ですねぇ。アナタと違って、私は最終的な勝利を見据えているのです。目先の結果だけを求めている訳では無いのですよ」


「ならば、我が出向いても問題は無いな?何時までも、じっとしているのは性に合わん!この腕の借りもいい加減返しておかねばなるまい!」


 "軍神"は、今にも飛び出しそうな勢いで語る。


「待ちなさい"軍神"。それも踏まえて議論するために、皆を集めたのです。それぞれの考えを聞いてからでも、遅くは無いのでは?」


 "軍神"を諫めたのは、落ち着いた声で語る女性。

 神の審判"裁神"テミスだった。


「先ずは、参謀としての意見を聞きたいのですが」


 "裁神"の目線は、気だるそうに席に座る少年。

 神の参謀"知神"クロノスに向けられる。


「僕としては、僕自身が楽が出来るならそれで良いんだけど……」


「貴方が動くかどうかはさておき、現状に対する意見を伺っているのですが?」


 "裁神"の声は静かだが、先程より数段強い圧を感じた。


「……状況としては、あまり芳しくないね。今"名無し"は"白滅"だけでなく、"蒼炎"と"黄昏"まで力を取り戻している。実際にどこまで戦えるのかは分からないけど、それでも十分に脅威だね。"軍神"が簡単に負けるとは思ってないけど、場合によっては【神器】があっても油断は出来ないと思うよ」


「わかりました。問題は、"名無し"がどこまで戦えるか分からないという事ですね。では"美神"、あなたの研究とやらの成果を見して頂く事は可能でしょうか?」


 "美神"の方を向き訪ねる。

 

 少し眉毛をつり上げ、オーバーリアクションで答える。


「私の研究は多岐にわたるのでねぇ。一体どの研究の事を仰っているのか……」


「私が知らないとでも?」


 有無を言わせない勢いで、"裁神"が言葉を遮る。

 "裁神"の前で嘘を吐く事の愚かさは、十分に知り得ていた。


「……まぁ、良いでしょう。美しい貴女に興味を持たれるのは悪い気分ではありませんしねぇ。正直に言って、まだ実際に使えるレベルと数は揃っていません。今の状態で使っても、ゴミの山が出来るだけですかねぇ」


「その程度では、"名無し"の力を推し量る事は出来ませんか……」


 "裁神"が考える素振りを見せる。


「やはり、我が行くのが妥当だと思うのだがな!それこそが、神の先鋒としての役目ではないか!」


「アナタは、戦いたいだけなのが丸分かりですよ。そうして隻腕になったのをお忘れですか?まったく、これだから脳筋は困りますねぇ」


「……そろそろ眠たいんだけど、僕戻ってもいいかな?」


「策を考えるのは、神の参謀である貴方の役目でも有るのですよ"知神"。少しは真面目に……」


 元々、神達は群れるものではない。

 端から、話し合いが普通にまとまる訳は無かった。


 自分の行いこそが正しいと思うモノ同士が、意思を揃えるのは容易なことではないのだから。


()()()


 混沌とした空気が流れ出した場に、低い声が響く。

 その声は、声量こそ他者に劣っていたが神達は同時に口を閉じる。


 彼の言葉に異を唱えるモノなど、この場には存在しない。

 


「"名無し"の現在の力が分かれば、それ相応の準備を行い、我らが"軍神"が遅れを取ることなどあり得ない。そうではないか?」


 "軍神"に向け言葉を掛ける。


「勿論だとも!」


 それに答え、簡潔に返答する。


「ふむ。では"知神"よ、【神の尖兵(レギオン)】を出しなさい。その将として、"軍神"の部下をつければ良い。それで、十分に皆の意を汲めると思うのだが。異論が有るものは?」


 神達は口を開かない。


 "主神"の言葉こそ、神の総意。

 異論が介在する余地など無いのだ。


 それが、神の総意"主神"ウラノスという存在なのだから。


「神に敗北や、不完全はあり得ない。各々が己の役割を全うし、素晴らしい結果を出すことを確信しておる」


 "主神"の言葉に神達は、己の意思を体現するように顔を伏せる。


「あーー。なんか綺麗にまとまりそうだけど、ボクの話は聞いて貰えないのかな?」


 ただ、一柱(ひとり)を除いて。


 声が発した方に、全員の視線が集まる。

 神の中で一番小柄な、翡翠色の瞳の少女がソコに居た。


「ふむ。決してソナタを無下に扱ったつもりはないのだが、何か意見が有るのかね?"反神"」


 "反神"に向けて、"主神"が声を掛ける。


「いやいや、意見だなんて大それたモノは無いよ。ただ、せっかく集まって皆の意見を聞く流れだったのに、ボクだけ何も話さずに終わってしまうのも寂しいなと思ってさ」


 気後れした様子もなく、返事をする。


「そうであったか。"名無し"が関わる議題だったのでな。何か思うところが有ったのでは、と勘ぐってしまった」


 言葉から圧力を感じる。


「それこそ、何を言ってるんだい?ボクが此処に座っている意味を、まさか忘れたんじゃないだろうね。それとも、呆けたのかい?神も呆けるとは知らなかったよ」


 圧を気にせず、"反神"は神を煽る。

 

 場の空気が重くなり、肌に突き刺さるような威圧感が、密度を増していく。


「不敬ですよ。"反神"」


 口を開いたのは、"裁神"だった。


 その声からしばらくして、"主神"から目を背け"反神"が肩をすくめる。


「はいはい。別に、喧嘩するつもりは無かったんだけどね。とりあえず、今回ボクの出番は無いみたいだね。ならいつも通り、好きにさせて貰うよ。それが自由の神であるボクだからね」


 一人席を立ち、その場を後にする。


 その振る舞いこそが、自由の神"反神"サリアなのだから。



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