45.精霊の集い⑥
◆
刀身は蒼炎揺らめき、炎は紫電を纏っている。
バチバチと空気を震わせ、秘められた力を体現している。
ギャラリーの中には、自分に向けられている訳でもないのに後ずさる者までいる。
「……相変わらず凄まじいわね」
この力を目の当たりにして、逃げ出す者が居ないだけ"精霊の集い"の兵士は訓練されていると言えるだろう。
『恐らく、力の使い方は殆ど思い出してる筈だぞ。アイツ自身の力は、全て使える訳じゃないだろうが俺様達の力を使う分には問題ないだろう』
【琥王】は、当然だが落ち着いている。
"滅式"まで使えるなら、神が直接攻めてきたとしても一方的にやられる事はない筈だ。
「そうなの?それなら、言ってくれれば良かったのに……」
『俺様も確信が有った訳じゃないからな。"終式"の話しもしていた様だし、俺様達は直接教えてないからな。思い出したって考えるのが妥当だろ。今の【黄泉】の状態で"終式"なんて使ったら、間違いなく制御できないだろうしな。アイツが力をちゃんと認識して使えたら話しは別だが、それに記憶は関係ないしな』
「やっぱり、まだ何か私が知らないことも有るのね」
【琥王】の含みの有る言葉尻から感じる。
『これは、アイツも知らない事だ。いつか伝えるさ。その時が来たらな』
「そう。なら気長に待つしかないわね」
『そうだな……とりあえず、今はアイツがりゅうの使い方を思い出してて良かったな!お前の策も成功で良いんじゃないか?』
「そうね。【琥王】も【黄泉】も少し渋ってたけど、結果的には成功で良いかしら。私もここまで力を取り戻してるとは思わなかったけど」
私の考えた、ダリアに極夜を煽って貰って力を引き出す策は上手く行ったと思う。
これだけの力を見て、極夜に文句を付ける奴は居ないだろう。
『まぁ、結果的にはだがな。力の使い方を思い出しているだろうと思ってはいたが、もし思い出してない状態で、アイツがダリアにやられて大ケガなんてしたら、りゅうがキレて暴走したら終わりだからな』
ダリアにも、勿論【琥王】達にも極夜が起きる前に説明はしていた。
ダリアも、戦えない状態なら大ケガするような事はしない……筈だ。
「【琥王】も【龍王】も強いのは知ってるけど、【琥王】が居ても【龍王】が暴走したら止められないの?」
私が知るなかで、そんな事は一度も起こっていない。
"名前持ち"の暴走だ。
どこまでの被害がでるか、想像も出来ない。
『俺様も今のままだと無理だな。ま、りゅうの奴も久しぶりに力が使えて楽しそうだし心配ないだろ!』
気になる言い方だったが、今は戦いの結果に集中しよう。
さらに、極夜の力が高まる。
恐らく、アノ技を使うのだろう。
……使うのか?
十分力の差は示せた。
お互いに、深刻なケガを追わないように【龍王】にも、必要以上に極夜が力を使いそうになったら止めるように頼んではいたけど……
「【龍王】はちゃんと分かってるわよね?」
【琥王】に聞く。
あの威力の技だ、如何にダリアでも無事ですむ保証はない。
『おいおい、流石にりゅうでもその位は……』
『おぉぉぉぉ!楽しくなってきたのじゃぁぁ!』
心底楽しそうな【龍王】の声と、止まることの無い力の上昇。
『まぁ、そもそもだが。りゅうにアイツを引き留める役ってのが無理な話だったな』
あっさり手のひらを返す【琥王】。
視線を感じる。
ダリアと目が合ったが、どうして良いか分からず視線をそらす。
ダリアは強い。
極夜も、殺すようなことはしないだろうけど、ケガは免れない筈だ。
私の頼みで戦ってくれているダリアに、ケガなんてさせられる訳がない。
「【斬魔】。最悪、私たちが間に飛び込むわよ」
『しょうがない。でも、あなたが代わりにケガしたら意味がないから』
【斬魔】を付き合わせて悪いと思ったが、しっかりと協力してくれるのが有り難かった。
何時でも飛び出せるように注意しながら、戦いの行く末を見守る。
◆
力の使い方は思い出していたし、どんな技が使えるかも頭の中には入っていたが、どの程度の威力が有るかまではハッキリと分からなかった。
両手に持った、【双龍】から大きな力を感じる。
その力は、今も増し続けている。
ダリアは強い。
俺も全力で放つつもりはないが、上手く加減が出来るか自信がない。
ダリアは、引くことなく攻撃を受ける構えを取っている。
本当に受けきることが出来るか疑問だが、白夜を化け物呼ばわりは許せない。
俺も、初めて戦った時に言って怒らせてしまったけど自分で自分を許せない。
いつか、謝らなきゃなと思う。
今は、ダリアを倒すことに集中しよう。
「蒼き炎は、紫電の花を身に纏う」
【双龍】の力が限界まで高まる。
「《蒼炎……》」
技を放つ直前に、
パキッ
と何かが割れるような音が響く。
何かは分からなかったが、今はどうでも良い。
「そこまでだぁぁっ!」
その音に負けない位の大きな声が響く。
俺もダリアも急な大声に、声のした方を見る。
声の主は、カイルだった。
慌ただしくカイルが、クレハに指示を出している。
「盛り上がってた所悪いが、問題発生だ」
表情と口調から、尋常じゃない事態が起きたのだと思った。
ダリアと顔を見合わせて、戦闘態勢を解く。
「一体、何が起きたんだよ」
カイルに問いかける。
「"名無し"の力に、障壁が耐えられなかったみたいだ。すぐに、張り直すがマズイな……」
「壊したのは申し訳ないけど……どうなるんだ?」
俺は事態の深刻さに、まるで気付いていなかった。
窓ガラスを一枚割ったくらいの感覚だった。
「すぐに、誤魔化すようにクレハが動いてるから場所までは特定されていないと思うが」
場所の特定で察しが付いてきた。
俺の力が外に漏れたのだ。
つまり、
「神達に、"名無し"がこっちの世界に来ていることがバレた可能性が高い」
故郷に帰ってきて、いきなりピンチって訳だ。
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神達は、当然の如くその力を察知した。
反応はそれぞれであったが。
"軍神"は、ガハハハハッと大きく笑い声を上げ
"美神"は、クククッと静かに下卑た笑みを浮かべ
"知神"は、面倒そうな表情で溜め息を吐き
"反神"は、口許に僅かな笑みを浮かべ天を仰ぎ
"裁神"は、目を閉じ顔を伏せ
"主神"は、顎に手を当て一点を見据えていた
神達はそれぞれの思惑を胸に、ただ行動する。
共通点は、その思惑の中心が"名無し"であるという事だ。
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