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42.精霊の集い③


 ダリアについて行くと、下に続く階段を降りていった。

 どうやら、地下に続いているようだ。


 階段の長さから考えて、そこそこ深いと思う。

 目の前に少し大きめの扉が現れる。

 目的の訓練場とやらに着いたようだ。


 ダリアが扉を開ける。


 そこには、地下とは思えないほど広い空間が広がっていた。


 訓練所というだけあって、中には数十人が戦闘訓練をおこなっている様だ。


 そこには、見慣れたモノもあった。


「あれって……」


 白夜の方を見る。


「そうね。貴方も随分お世話になった"残滓"よ」


 人同士で戦っている場合も在れば、黒い人のようなモノと戦っている者もいる。


「大丈夫なのかよ?"軍神"はアレの気配に気付いて、俺達を襲ってきたんだろ?こっちの世界には他の神もいるのに……」


「その点は心配ない!」


 後ろからカイルの声が聞こえた。


「この地下施設は、"精霊の集い"の出来た当初から作られ、幼精の力を借りて強固な結界を張っている!気配の遮断はもちろん、いざという時のシェルターの役割も担っている!」


 なるほどな。

 つまり、ここなら俺と戦っても情報が洩れる心配は無いってことか。


「おい!"名無し"モドキ!アタシも暇じゃないんだ。とっとと始めるぞ」


 モドキって……


 まぁ、認めてないなら別に良いけど……


 "名無し"という言葉に、訓練場に居た全員が動きを止める。


 興味、疑い、色々な感情が混じった視線が俺に集まる。


 ダリアが訓練場の中央に歩いていく。

 自然とその回りが空き、ギャラリーが回りを取り囲む様に集まる。


 ここまで注目されると、逆に戦いづらいんだが……


 何が始まるのか理解した人間が、木製の剣を俺とダリアに持ってくる。


 これなら、お互い大きな怪我はしなくて済みそうだ。

 打たれたら、かなり痛そうだけど。


「いらん」


 ダリアが、木製の剣の受け取りを拒否する。


「アタシは自分の剣で戦う。モドキもそうしな」


 腰に携えた剣を引き抜き、ダリアが俺に突きつける。


「良いのかよ?怪我じゃ済まなくなるぞ」


 ダリアが弱くないのは分かる。

 それでも、人間だ。


 自意識過剰って訳じゃ無いが、まともな戦いになるとは思えなかった。


「油断しない方が良いわよ。戦闘経験とセンスは今の貴方じゃ足元にも及ばないわ」


 白夜が俺に告げる。

 それを聞いて、気を引き締める。

 自分の甘さを戒める。


 俺の力を認めさせなければならない状況で、油断してやられましたじゃ言い訳にもならない。


『はい!はい!』


 小さな手を挙げ、自己主張する【龍王】を横目に【琥王】に目をやる。


『俺様はパスだ。まだ完全に力も戻ってないし、やる気が在る奴にやらせとけ』


『妾元気!面白そう!』


元気すぎて、やりすぎないか少し不安なんだが……


「いくぞ、りゅう!」


 【龍王】が、俺の腰に日本刀の状態になって収まる。


 回りのギャラリーがざわつく。

 まだ、驚く程の力は出してはいない筈だが。


 鞘から刀身を引き抜き構える。


「ダリアは"精霊の集い"の中でも二番目に強い剣士よ。さっきも言ったけど、油断しないように。それにダリアは……」


 白夜の言葉を途中で遮る。


「強いのは分かってるよ。それ以上、手の内を聞いたら対等じゃ無くなる。それで勝っても、俺も納得できない」


 白夜に感謝しながら、助言を断る。


「いいわ。そこまで言うなら、キッチリ勝ちなさい」


 腕を組み、これ以上口は出さないと言った風に立つ白夜。


「ハッ!殊勝な考えだね!負けた時の言い訳にするんじゃないよ!」


 ダリアが攻撃の姿勢を取る。

 威圧感が増していく。


 言い訳をするつもりはない。

 無いけど、直近で戦った人間はユーイだったが……


 ユーイより強くないか?


 それに、ダリアが纏っているのは……



 一瞬、視界からダリアが消える。

 反射的に【龍王】を構える。


 ガキンッ


 金属同士がぶつかる鈍い音が響く。


「アタシの初撃を止めたかい。思ったより楽しめそうだね」


 偶然構えた場所に攻撃が来ただけだ、お世辞にも防いだとは言えない。


 鍔迫り合いの格好で押し合う。


「その纏ってる力は……幼精のモノじゃないのか?」


「おや、分かるかい?まさか、幼精の力を使えるのが自分だけなんて思ってないだろうね?まぁ、アンタみたいに"名前持ち(ネームド)"ってわけじゃないけどね」


 剣を振り払い、後方に距離を取るダリア。


「嘗めてるのか、余裕なのか知らないけど、全力で来な!」


 さらにダリアの力は増していく。


『ふむ。それなりに力は纏っておるようじゃな!あれなら、多少痛い思いをしても大丈夫じゃろ。なにより、頑丈そうじゃし!』


 【龍王】の言葉を聞いて、俺もさらに力を込める。


「長引かせても面倒だな……決めるぞ。りゅう」


 刀身を鞘に収め、技を放つ体制を取る。


「峰打ちだ。纏う力を弱めるなよ」


 ダリアに忠告を入れる。


『《紫電》!』

「《一閃》!」


 一瞬の内に交差し、攻撃を打ち込む。



 筈だった。


 ガキンッ


 手には痺れが残っている。

 後方に倒れている筈のダリアを見る。


「マジかよ……」


 そこには、剣を構えおそらく俺の攻撃を受け流したダリアが立っていた。


「なかなか良い攻撃じゃないか!だけど、この程度じゃ物足りないね」


『主様が本調子の速度じゃないとはいえ、受けきるとはのう。なかなかに面白い!楽しくなってきたのじゃ!』


 一人でテンションアゲアゲの【龍王】。

 俺は、動揺を隠せないでいた。


 確かにスピードは、ユーイに放った時より落ちていたと思う。

 それでも、普通の人間が反応出来る速度は越えていた筈だ。

 現に、回りのギャラリー達は何が起こったか分かっていなかった。


「アタシは"閃光"とも打ち合った事があるんだよ!あんまり嘗めないで貰いたいね」


 "閃光"とやらが何かは分からないが、このままじゃ平行線か。


「さて、お互い準備運動もこんなものだろ!そろそろ、本気で行こうかね!」


 ダリアが言い放った言葉が、虚勢の類いでないことは纏う力がさらに増していくことで分かった。


「幼精達!力を貸しな!」


 そういうと、ダリアの左手に力が集中していく。

 その力は徐々に形を変え、一本の剣となって彼女の手に収まり、二本の剣を携えていた。


「"幼精の剣(マテリアルソード)"」


 前言撤回。


 このままじゃ、分が悪い。



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