41.精霊の集い②
「出来るだけ良い部屋を用意したつもりだが、満足して貰えたかな?」
大柄な男が、俺達に声を掛ける。
「えっと……なんか気を使わせてしまったようで、ありがとうございます」
とりあえず当たり障りの無い対応をしたが、誰なんだという視線を白夜に送る。
「彼が、"精霊の集い"のリーダー。カイルよ」
「カイル・イースターだ!よろしくな!こっちは、俺の付き人」
カイルが、隣のメイドさんに目をやる。
「クレハです。カイルの付き人をさせて頂いています」
スカートの裾を持ち御辞儀をするクレハ。
華奢な印象を受けたが、弱い様には到底見えない。
鋭い視線と存在感がソレを物語っていた。
「無茶な頼みをしたが、助かったよ。えーっと……」
「白夜で良いわ。完全じゃないけど、ある程度の記憶は戻ってる」
「そうかい!なら、白夜の嬢ちゃんに依頼した訳も聞いてるよな?」
俺は、無言で頷く。
「ここ数年の状況は、良くない方にばかり進んでる。神を信仰する人間が増える事が悪いとは思ってないんだが、過激派の連中を押さえ込むのが難しくなってきてる」
カイルの話しは、白夜から聞いていた話しと同じだった。
過激派の狂信者と、神に対する牽制として力を貸して欲しいという事だった。
特別俺に何かを求める訳ではないが、俺が此方に着いているというのを一度アピールしておく必要も有ると。
「簡単に言えば、定期的に俺達を攻撃してくる奴らを一度撃退して欲しい。"名無し"が居るとなれば、奴らも慎重に為らざるを得ないだろう」
カイルの話を聞いて、俺の考えを伝える。
「俺は、記憶を全て取り戻してる訳じゃないです。白夜に頼まれたし、誰かの力に為れるなら協力はしようと思うけど、人間を無闇に殺すつもりはないし力になれるか保証は出来ません?それでも良いなら協力します」
カイルとクレハは、お互いに顔を見合わせる。
「あー。堅苦しい言葉は苦手でね。友達感覚で話してくれ!俺もそうする」
俺としても、四六時中ずっと敬語は疲れるので助かる。
「その上でだが、特別俺達も相手を殺したい訳じゃない。神を信仰する者、精霊を信仰する者、人間を信仰する者、何を信じるかなんて自由だろ?その均衡をとって自由に暮らしたいってのが俺達、"精霊の集い"の目的さ!武力で押さえ込むってのは好みじゃ無いが、理想を語るだけの能無しになるつもりもない」
カイルの言葉から強い意思を感じた。
「俺達が信仰している精霊様は、大きな力を持っている。その気になれば、独力で神達と対等以上に戦う事も出来るだろう。だが、そうしない。自分達が自由に、世界のありのままの姿を見守っている。その姿に、思想に、俺は心酔しちまってるのさ!」
『そんな立派なモンでもないけどな』
今まで黙っていた【琥王】が口を開く。
「直接お会いするのは初めてだな!"白滅の牙"殿と"蒼炎の爪"殿、それに"黄昏の理"殿!ご助力感謝する!」
『妾達は、主様と共に在るだけじゃ!』
『そうですね。主が協力するならそれに従うだけです。我々に感謝は必要ありません』
【龍王】と【黄泉】がそれに続く。
「そうか!では、この感謝は全て"名無し"殿に」
改めて俺に頭を下げるカイルとそれに続くクレハ。
「いやいや!俺も力になれるか分からないし、その"殿"ってのもむず痒いから止めてくれ!俺の事は、極夜で良いよ」
分かった!と笑って答えるカイルは悪い奴では無いと思った。
「オイ!"名無し"が起きたって聞いたぞ、カイル!話をするときは、アタシも呼べって言っただろ!?」
突然大きな声で一人の、これぞ冒険者!といった格好をした女が割って入ってくる。
「おぉ!すまんな、ダリア!お前が居ると、面倒な事になりそうだったからな!」
ダリアと呼ばれた女は、見るからに不機嫌になる。
「当たり前だろ!そもそも、アタシはこんな奴に頼るのは反対だって言ってるだろ!」
どうやら俺は、ダリアには歓迎されてないようだ。
「大体、こいつが本当に"名無し"だって確証もないじゃないか!」
「"白滅の牙"殿達を連れている時点で、疑いようが無いだろう!」
カイルが間に入るが、ダリアの勢いは止まらない。
「仮に本物だったとして、記憶がまだ完璧に戻って無いみたいじゃないか。この状態で、本当に"神の軍勢"への牽制になるのか怪しいもんだね!戦力になるか怪しい奴を引き込んで、わざわざ新たな火種を生むようなマネ……」
「おい!そのくらいにしとけ!」
カイルの大きな声で、不満そうに口を閉じるダリア。
まだまだ、言い足りないらしい。
「いや、彼女の言うことも分かるよ。俺自身、どこまで力になれるか分からないってのはさっき話した通りだし」
「ハッ!自分で言ってりゃ世話無いね」
「それでも、力になりたいと思ってるのは事実だ。アンタ達も、白夜の力にもだ。他の神の事は良く知らないが、"美神"と"軍神"には借りを返すつもりだ」
まっすぐと、ダリアを見つめ答える。
「どうしたら認めてくれるんだ?」
「そこまで言うなら、私が見定めてやるよ。カイル。訓練場を借りるよ」
呆れた様子で、勝手にしろと答えるカイル。
着いてこいよ。
そう言うダリアの後に続いて歩いていく。
俺も遊びで来たつもりは無い。
俺の覚悟を見せてやる。
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