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40.精霊の集い①


「……今、何て言ったの?」


 詩道……いや、白夜が俺を見る。


 俺自身も混乱している。

 なぜ、詩道に向かって白夜と言ったのか。


 寝起きで頭が混乱していたのかもと思ったが、俺の頭は詩道を白夜と認識している。


 俺は夢を見ていた筈だった。

 起きたら忘れてしまうような、普通の夢だと思っていた。

 だが、その光景が記憶として頭の中に残っている。


 夢の中の光景が全部、俺の記憶なのか……?

 詩道が白夜だとしたら、緑の髪の少女はいったい……

 混乱した頭で考えていると、両肩を急に掴まれる。


「今、何て言ったの!?」


 白夜が俺の肩を持って身体を揺らす。

 痛いくらいの力だ。


 顔は今にも泣きそうな表情で、訴え掛けている。


「いや……白夜って……言いました」


 なぜか敬語になってしまう。

 女の子に、こんな近くで泣きそうな顔で近寄られたことなんて人生で無かった……筈だ。


「……そう」


 少し落ち着いたようで、俺から少し離れる白夜。


『記憶が戻ったのか?』


 【琥王】が真面目な顔と声で聞いてくる。


「戻ったというか、夢を見たというか……」


 今見ていた夢の内容を話す。


 緑髪の少女の事は後で【琥王】に聞いてみようと思い、白夜との事だけ話した。


『ふむ。大体事実と一致してるな』


『はい』


『なのじゃ』


 夢の中では、【琥王】達は居なかったと思ったが本当は俺の中に居たらしい。


 まだ、俺の記憶の一部しか思い出せてないということだ。

 しかし、あれが俺の記憶だとしたら不可解な点が一つ有った。


「夢の中の俺は、姿が大して変わって無い気がしたけど白夜だけ成長してるのは何でだ?」


 そう、白夜が成長したのは分かる。

 出会ってから、俺が直ぐに居なくなって十年こっちで一人で過ごして成長したなら大体その位だろう。


 俺が()()()()()()のは変だ。


『それは、私の力の影響ですね』


 【黄泉】が答える。


『私の力は……簡単に言えば時間に干渉しています。正確には少し違うのですが、私と契約してから主の肉体的な時間は止まっています。もともと、時間の流れ自体少し特殊だったと思われますが』


 いま、しれっと凄いこと言わなかったか?


『白夜様と主が出会った際に、力の制御がうまく出来ていなかったので、私が主の命で力を貸していました。その後、主が転移される際に力の繋がりを切った為に離れていた期間、十年は通常の成長が起こったと思われます。これは、推測の域を出ませんが』


ここまで来て、今までの常識が通用するとは思っていなかったが……


「なんか、俺って結構変な感じなのか?自分では普通の人間だと思ってたけど……」


『違います!主は特別な存在で…』


『気持ちは分かるが、そこまでにしとけ』


 何かを言いかけた【黄泉】を【琥王】が制する。


 申し訳有りません。と答える【黄泉】は何処か歯痒そうだった。

 その理由も、俺の記憶が戻れば分かるのだろうか。


「でも、少しずつお前達との思い出が戻ってきてるみたいで良かったよ」


 それに、自分の中の力も少し変化している気がする。


『これは俺様の予想だが、異世界に転移する前にお前自身が何か仕掛けをしたのかもしれないな。もう一度帰ってくることが有れば、必要になると考えてな。偶然の可能性も有るけどな』


 【琥王】でも知らない事があるんだな。


「少し取り乱してごめんなさい。とりあえず、目が覚めたのなら会いに行きましょう。"精霊の集い"のリーダーに」


 すっかり頭から離れていたが、会わなきゃいけない人がいるんだった。

 貴女は悪くないわ。悪いのはアイツ。と白夜の横で【斬魔】が言っているのは、聞こえない振りをしておく。


「行くわよ……極夜」


 少し戸惑いながら俺を白夜が呼ぶ。

 正直、天草克也として生きてきた俺は少し違和感を感じるが、嫌な気持ちには為れなかった。


「おう!」


 今は、違和感を飲み込む事にする。


 部屋を出て階段を下る。

 思ったより大きな建物だったようだ。

 ゲームとかアニメで良くみる宿屋って感じだ。


 いくつもテーブルが並んでいて、その一つに体格の良い男が一人座っていた。横にはメイド服を着た女性が一人控えている。


 なんか、異世界っぽいなと他人事のように思った。


「おう!"名無し"様のお目覚めか!待ってたぜ」


 見た目通りの声と口調で喋る男。

 黙って頭を下げるメイドの女性。


 この後にちょっとした?いざこざが起きるとは、俺は思いもしなかった。



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