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34.旅立つ前に④


「ねぇ、【龍王】。私はコチラの世界に来て良かったのかしら」


 【龍王】に問いかける。


『むぅ。妾の事はりゅうちゃんと呼べと言っておるじゃろう』


 ほっぺを膨らませ、見るからに不満だと意思表示をしている。


「ご、ごめんね。りゅうちゃん」


 それで良いのじゃ!とすぐに笑顔に戻る。


『さて、お主がコチラの世界に来ても良かったか……とういう事じゃな!結論から言うと妾には分からないのじゃ』


 まぁ、予想通りの返答だった。


『そもそも、それは妾が決めることではないのじゃ!お主は、自分で間違っていたと思っておるのか?』


 分からない。


 アイツが居るかもしれないという情報に、気付いたら飛び付いていた。

 もちろん、10年の準備期間の間に何も考えなかった訳ではないが……


 会えば例え記憶を無くしていても、全てを思い出して、また一緒に居ることが出来る。

 そんな都合の良い妄想もした。


 どんな気持ちで私が過ごしてきたか、文句を言って困らせてやる。

 あたふたして、困る所を想像したら少し気が紛れた。


 だが、現実は違った。


 アイツはこの世界で笑っていた。

 楽しそうに見えた。


 やっぱり私なんて、要らなかったんじゃないかと考えると胸が苦しくなった。

 そうして、依頼(オーダー)にすがった。


 人間を、世界を救うために、神への対抗手段としてアイツが必要だと自分に言い聞かせた。


 そして、私が来たことにより記憶を少しずつ取り戻し、力も取り戻した。

 でも、これがアイツが望んだ事だったのか。


 私には分からない。

 分かる筈がない。


 急に一人で、コチラの世界に来た理由も知らない私には……


「何が正解で、何が間違いか分からないわ」


 そう答えるしかなかった。


『ふむ。ならば聞き方を変えるのじゃ。お主は自分でコチラに来ることを望み、選択したのでは無いのか?それとも"精霊の集い"とやらに無理矢理送り込まれたのか?』


「違うわ。私が自分で決めてきたのよ。それだけは、心に誓えるわ」


 真っ直ぐ、【龍王】の眼を見て答える。

 それを見て、【龍王】はニカッと笑う。


『ならば良し!自分で決めて進んだ道なのじゃ!そこに間違いなど有るのか?』


 【龍王】の言葉に力が籠る。


『そんなことは、無いのじゃ!自分の決めた道に悩み、後悔することもあるじゃろう。だが、その選択が間違いなど、自分の望んだ未来が不正解など、断じて有り得ないのじゃ!』


 あぁ。


 そうだ。

 アイツも。その仲間も。

 私を肯定してくれる。否定ばかりされてきた私を肯定してくれる。

 だから暖かく、居心地が良くて、絶対に無くしたくない場所だったんだ。


 それを取り戻したくて、私はココに居る。

 この気持ちが間違いだなんて、自分自身にも言わせちゃダメだ。


「ありがとう。何だか、スッキリしたかもしれないわ」


 自然と笑みがこぼれた。


『うむ!さすが妾!おねえちゃんは、伊達じゃ無いのじゃ!』


 エッヘンと胸を張る【龍王】。


『しかし、主様の後ろを付いて回るだけのはな垂れが立派に成長したものじゃな』


 そう語る【龍王】の表情は、幼女には似つかわしくないモノだった。


「今の言葉、お姉ちゃんって言うよりお婆ちゃんみたいよ?」


 なに!?っと驚きアワアワする姿は見た目通りだなと思い、笑ってしまった。


 おまたせ。と小さな手で焼き菓子を持って帰ってきた【斬魔】も、あたふたする【龍王】と笑っている私を見て首を傾げていた。


『ざんちゃん!妾、おねえちゃんじゃよな?じゃよな!?』


『えっ?あ……うん。………え?』


 困惑する【斬魔】に、すがり付きながら【龍王】が同意を求める。


「【斬魔】も座って食べましょ。少し休んだら、すぐに移動しそうだし」


 そうね。と私の横にちょこんっと【斬魔】が座り、忘れていたのじゃ!とその横に座り満足そうにお菓子を頬張る【龍王】。


 アイツがコチラの世界に残るかどうかは、私には分からない。


 それでも、私は自分で決めた道を進もう。

 その事を自分の心に刻み付けた。



「いやぁー、偶然だな!プライベートで生徒と話す機会は中々無いからなぁ」


 そう言いながら、先生が缶コーヒーを俺に渡す。


「ありがとうございます……財布を家に忘れてきたみたいで……」


 お礼を言って受けとる。


「別に構わないさ。生徒にコーヒーを奢る位の甲斐性はあるつもりだ!それに、今にも死にそうな顔をした生徒をほったらかしに出来ないだろ」


 そんなに酷い顔をしていたのかと、自分でも驚く。


「どうした?詩道と喧嘩でもしたのか?」

 ブッと口に含んだコーヒーを吹き出してしまう。


「なんでアイツが出てくるんですか!?」


「なんだ?違うのか?他の生徒とまともに話さない詩道が、お前とは仲が良さそうだと聞いてたし、二人して学校を休んだりしてたから、てっきり付き合ってるもんだと思ってたぞ!」


「違いますよ……たまたまです。ていうか、先生が勝手に生徒をズル休みだって決めつけないで下さいよ…」


 俺が最近休んでたのは、色々あって熱を出して寝込んだからだ。

 ズル休みでは無い。


 昨日は休んで遊園地に行ったけど、目的が有ったしズル休みにはカウントされない筈だ!多分。


「じゃあ何が有ったんだ?生徒の悩みを聞くのも先生の仕事だ。無理にとは言わないが、なんでも言ってみろ」


 担任とはいえ、そこまで仲が良いのかと言われたらそんなことは無い。

 現に、俺は担任としか認識していないし名前も覚えちゃいなかった。


 でも、そんな距離感だからこそ話しやすかったのかもしれない。

 ファンタジーではなく、現実世界に生きる普通の人間に話したくなった。


 話そうと思った理由は、多分それだけの事だったと思う。



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